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instigator  作者: アベラルト
2/5

社会

人が雪の中歩く、残酷で卑怯な人間たちが町中に溢れかえっている自分の罪に気付かずに




しかしその町中に自分の罪に気づけたものがいる、彼らは今まで気づいていなかっただけなのかもしれないし、それかもしくは気づいていたがそれは別に悪くないと思っているのかもしれない、あるいは気づくことに気づくことさえも否定しているのかも知れない




どれが真意かはわからないが必ず人間の罪は心の奥底にある、隠したり、封印したり、あるいは消してしまおうとする、そしてある人間は自分で融和することなく受け入れることもなく

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私の名前は最上信治、ある企業の広報課の課長をしていたものだ、課長といってもハタから見たら普通のサラリーマンなわけだ


毎朝6:00に起きて、妻の朝食を食べに行く、妻の作る料理はいつもバリエーションに富んでて飽きが来ないし美味しい、あとから娘と息子が起きて4人と一緒に食べるのだ、この団らんが私たち家族の習慣だった


その後歯を磨いて、スーツを来て、持ち物を確認して、子供たちといつも同じ時間に出る、同じ時間の電車に乗り、大体8:30くらいにタイムカードをきって会社に出社する、色々な業務や新商品のために知恵を絞ったりと大変なこともあるがやりがいがあってこの仕事は好きだった



今年の夏に入る前のある日、そんなに難しい仕事ではないが上から大量の雑務がやってきて三日以内に終わらせてほしいとのことで流石に一人ではやりきれないので課の部下たちと一緒にやることにした


最上「みんな今日上からちょっと仕事が沢山来た、三日以内に終わらせてほしいとのことなので分担してやりたい、各々の仕事があると思うけどどうかみんなも手伝ってほしい」


広報課のみんな「わかりました」


適当に書類を分割してと


最上「では、相沢君はこれを、鈴木君はこの箇所を…………」


広報課のみんな快く引き受けてくれた、仕事も出来るし早いし気のいい人が多い私も気が楽でとてもいい課だ、しかし例外もいる


最上「あと、ああ、浦垣、浦垣くんはこれを」


浦垣「は、はい」


彼は浦垣悠太、同僚からはトロ垣と呼ばれている、彼は国立大学出らしいが入社して一年半になるのにまだ仕事になれていないのか、スピードも遅いし、ミスも多い、影も薄く、居ても雰囲気を悪くするような彼を私はずっと辞めてくれないかと思っていた



この前だってある会議で使う書類のコピーを頼んでいたのに会議当日になってコピーしてなかったのだ、これには流石に怒り


浦垣「すいません‼️すいません‼️」


最上「君‼️本当に国立大学出なのかね‼️?なんでこんな単純なことを忘れるんだ‼️全くこれだから最近のゆとり世代は‼️」


浦垣「すいません‼️次からは気を付けますので‼️」


最上「全く‼️下がりたまえ‼️自分の業務でもしてろ‼️」


と、1ヶ月に一回ぐらいの頻度で彼のミスに対し怒鳴り散らしているのだ、この事にも課内の部下たちも慣れてしまいクスクスと笑うのだ


しかし、やる気はあるらしく無遅刻無欠勤であり、毎日挨拶をし、礼儀正しかった、そういう社会人としての何かはしっかりとしていたから辛うじて名前を覚えられた存在のような奴だった



雑務に集中していると職場の時計から12:00の昼食のチャイムが鳴る、今日は妻に愛妻弁当を作ってもらってない、何故なら今日部下たちと一緒に立ち食い蕎麦屋に行くからだ


鈴木「課長、いつもの蕎麦屋に行きませんか?」


待っていましたと言わんばかりに鈴木が話し掛けてくれた


最上「ああ、いこうか」


鈴木「相沢さんも行くーーーーー?」


相沢「ええっとーー、私今担担豆腐ダイエット中だからー、ごめんなさい」


鈴木「うう、やっぱりダメかぁ他にもいるぅ‼️?」


ゴメンナサーイ、キョウハチョット


鈴木「課長と堂本の3人か、まぁいっか行きましょう課長」


最上「そうだないこうか、久しぶりだなぁ蕎麦」


高校のときに友人と一緒にラーメンを食いに行く気分を思い出す


堂本「鈴木は一昨日も食べたよな」


鈴木「うっせ、蕎麦こそ日本最高の麺類だ‼️」


会社を出て、堂本、鈴木と一緒にすぐ前にある老舗の蕎麦屋に行く、この老舗蕎麦屋は入社してまもない頃にちょっとしたミスをしたとき優しい上司に誘われてよく奢ってもらった思い出の店だ、今まで食べた蕎麦の中でも一番美味しいお店で家族と一緒に行ったこともあった


店に入ると


蕎麦屋店員「あ、三人ね、いつもの方たちね、いらっしャーイ‼️」


蕎麦屋のおばちゃんが元気よく挨拶してくれた


最上「かけ蕎麦3つね」


蕎麦屋店員「あいよ‼️」


すぐにかけ蕎麦がきて、カウンターで列になりながら三人男どもが蕎麦を頬張る、その後ろ姿はまるで闘う社会人のようにみえるだろうか?それとも蕎麦を美味しく食っているただのおっさんたちにみえるだろうか?だが私はそんなことも気にせずに蕎麦を頬張る、ただ一言だ美味しい、あの時食べた蕎麦がとても美味しいかった


堂本「今日上から来た仕事、今日中に終わりそうですね」ズルズル


最上「そうか、私も実は今日中に終わりそうなんだ、これなら明日だせそうだな」ズルズルズゾー


鈴木「――ゴクン、あー、ダメっすよどうせトロ垣が遅れるからギリギリになりますよどうせ」


最上「確かにそうかもな、全くあいつのトロさ加減には」


堂本「あいつの話すると蕎麦が不味くなりますからやめましょうよ」


最上、鈴木「それもうそうか」


他愛ないいつも仕事の愚痴をしながら蕎麦を啜る



浦垣も入社して間もないころ、少し大きなミスしたのでこの蕎麦屋つれていったのだが、あいつは蕎麦アレルギーだったのだ


私はそれを知らずにつれていき、あいつ自身蕎麦アレルギーだと知っていたのにも関わらず無理して蕎麦を食べ救急車に運ばれたのだ


幸いにも二週間程度の入院ですんだのは良かったのだが、あいつは私に謝りもしないし、何も言わない、それからというものあいつは何度も何度も単純なミスをわざとしているかのように


なにかこう『課長が蕎麦を食べさせから入院してしまったじゃないか』といっているかのようにまったく蕎麦アレルギーなら、蕎麦アレルギーといってくれ‼️と、心底思った


そのあと課の雰囲気も悪くなり、みんな蕎麦が好きなのにアイツだけ食べられないから昼みんなで蕎麦屋に行くときに少し変な空気になってしまうのだ、しかも蕎麦屋のおばちゃんには


蕎麦屋店員「ちょっと、ちょっと、今度は誰か倒れないよね」


といわれるまでになってしまったのだ、これには本当にアイツにたいしてムカついた



蕎麦を食べ終え、会社に戻り時計のチャイムが鳴り業務を再開する、後5時間、今日は業務も少ないし残業しなくてすむな――――


2時間ほどして、相沢くんが


相沢「えっと、先ほどもらった仕事、終わりましたぁ‼️確認済みですぅ‼️」


最上「本当か、早いなぁ」


鈴木「俺も終わってまーす」


『俺も、私も』


と、みんな早く終わり確認も終わっているらしく提出してくれた、あとひとつは、浦垣か、やれやれ、まぁ後今日入れて3日だし少し引っ掛かり続けるが仕方ない、待つとするか――――


が、しかし一時間位して


浦垣「あ、あのすいません、終わりました‼️」


最上「え、あ、チェックはしといたのか?」


浦垣「‼️はい二回、や、やりました‼️」


最上「わかった、自分の業務に戻りなさい」


うん、しっかりと終わっているな、よしこれなら大丈夫だろう、そのとき私は少しは彼を信頼した――――


18:00終業のチャイムが鳴りみんな伸びをする、


『クァァァァァ、オワリデスゥ、フゥゥ』


さて、今日は残業もないし飲みに行こうか…………


あ、そうだ今日は家族全員で一緒にゲームをするんだった、確か息子が前から欲しかったゲームをプレゼントしてあげて、やっと、なんだっけ?名前?cmもやっていないような4人対戦のソフトを買ってあげたんだっけ?私はメジャーのソフトのほうがいいんじゃないかと思ったのだが、子供たちにあわせたのだ



息子が3歳の頃だっけか?他の親の子供とは違う玩具がほしいといった、私は少し心配になり


最上「これでいいのか?本当にこれで?」


息子「うん‼️これがいい‼️」


最上「どうして?他の子はこのヒーローものの方がカッコいいっていってるのになんでこんなに小さい玩具がいいの?」


息子「えっとね、えっとね、何となく‼️何となく‼️」


最上「何となくか、ハハハハハハ、よし買おうか‼️」


息子「わーい、お父さんありがとう」


と、私が必ずおれて息子や娘、妻に合わせて食事したり玩具を買ってあげたりしていたのだった



鈴木「課長‼️今日飲みに行きましょうよ‼️」


最上「イヤー、今日は家族サービスの日なんだよwまた今度な‼️」


鈴木「ええー、お昼は蕎麦を一緒に食べてくれたのにぃーーーーー、でも子供のお父さんの時間をとってしまっては可哀想ですもんね」


堂本、相沢、木嶋「鈴木さん早く行きましょうよ、あと課長の他に行きたい人ーーーーー‼️」


浦垣「すいません、僕はちょっと、お先に失礼します」


いたのかと浦垣がいたたまれなくなるように、浦垣はタイムカードをきりそそくさといなくなる、これが浦垣の毎日だった、一体なぜすぐに家に帰って何をしているのだろう?全く、人付き合いも悪くて課の空気も悪くする


鈴木「きいてねぇっつうの」


木嶋「本当、あいつなんなんですかね?いつもすぐに帰っちゃって」


堂本「あいつ、家で多分、ゲームでもしてんじゃねぇの?ほら昼休みいつもスマホゲームしてるし目の下にクマもあるし」


相沢「そういえばぁ、親迎会も暗くてあまりしゃべらかったですよねぇ、なんか暗いイメージ強すぎて空気乱してるイメージ強かったしぃ」


木嶋「三次元よりも二次元、そういうタイプ大嫌っ嫌いなんですよね、不潔そうですし、あとなんか加齢臭臭くありせん?」


最上「じゃ、俺は?」


木嶋「課長は違いますよー、家族も、私たちも、一生懸命守ってくれてるカッコいい人ですよ」


最上たち「ハハハハハハハハハハ‼️」



家に帰りドアをあけると


息子「パパーお帰りーーー‼️」


娘「お帰りーーー‼️」


最上「今日のご飯は何かな?」


娘、息子 セーノ「唐揚げーーーーー‼️私、僕達が作ったんだよーーーー‼️」


最上「ハハハハ、風呂に入り終わったら何をしたいんだっけ?」


息子は笑顔になり


息子「みんなでゲーム‼️‼️お姉ちゃんとお母さんとお父さんと一緒にゲームゲーム‼️」


妻「ほーら、お父さん玄関で困っているでしょう?早く席についてお父さん待ってましょう」


うん、いつもの家族だ、いい家族だった、たまに喧嘩もしたり、笑ったり、泣いたり、と様々な感情をくれてとても楽しかった



それから一週間後、何故かは知らないが上から呼び出された


上司「君、一週間前に出された業務にミスがあったよ‼️これは一体どういうことかね‼️」


最上「え、あ、も、申し訳ありません‼️」


上司「まったくこんな簡単なミスをして、最近弛んでいるじゃないのかね‼️?この前渡した業務だってミスがあって会議が遅れたじゃないか‼️少し上に話させてもらうよ‼️」


最上「すいません、以後気を付けますので」


上司「そもそも‼️あの会議の遅延のせいでだね、私の飛行機を遅らせたんだぞ、まったく」


グチグチと上司が一時間ほど話す、上司の予定、血圧、健康、仕事など、全部自分のことを私にどなり散らしたのだ、そのときなんでこうなったのか?私のミスじゃない、しっかりと確認したしと色々と考えていると、何故か浦垣の顔を思い出してしまった、コピー、ミス、蕎麦の件、今までためていた何かが爆発してしまったのだ



私はすぐに課に戻る


最上「浦垣ぃ‼️一体なんでお前はそんなにミスをするんだ‼️」


浦垣「あ、あ、あ、あ、あのそのえっと、どんなミスですか?」


最上「そこに座れ‼️」


浦垣「え?あ、」


最上「いいから‼️そこに座るんだ‼️」


浦垣を地べたに正座なって座らせる


最上「一週間前の仕事だ‼️全く‼️本当に二回にチェックしたのか‼️」


浦垣「えっと、あの、すいません‼️」


最上「なんでこの会社に勤めているのか責任をもって行動しているのかね‼️」


すると堂本が立ちあがり


堂本「そもそも、お前国立大学出でしょ?なんでそんなミスするのかわからないな、人付き合いもしないし、昼休みはスマホばっかしてて昼飯も食っているのかわからないし人の輪を乱したいなら

―――辞めてくれない?トロ垣―――


堂本が私の代わりに言ってほしいことを言ってくれた


相沢「えっとぉ、なんで浦垣さん、この会社に勤めてるんですかぁ?ミスばっかりするし、他の人にも迷惑かけるしぃ、雰囲気も悪くするしぃ

――存在価値がわからないんですよぉ――


みんな、うなずいていた、私もそう思っていたなぜこんな奴に怒鳴らなきゃいけないのか?なんでこんな奴が会社にいなきゃいけないのか?何かムカムカしてしまい


最上「

―――やる気がないなら消えろ‼️―――


とものすごい怒号を浦垣に発した、すると浦垣は何かにとりつかれたかのようにタイムカードも切らずにスマホとカバンをもってふらふらとどこかに行った、(チッ、だからゆとり世代はきっと家に帰ったのだろう)と思いなにかこう私の中で肩の荷がおりたような感じがした


木嶋「今度は無断退社ですか、消えてくれてせいせいしますよ、本当に」


鈴木「仕事ほったらかしてどこに行くのかね、本当に役立たずですよ、やれやれ」



その日を皮切りに浦垣は会社に来なくなった、理由は体調不良らしくすぐに戻ってくるのだろうと思っていた、彼がいなくなったあとの広報課の仕事ははかどり雰囲気もかなりよくなり素晴らしい毎日がおくれていた



その三日後


鈴木「浦垣がいなくなってから、仕事がスムーズになって良かったですね」


最上「そうだな、ハハハハハ、あいつがいなくなってからこんなにも課の雰囲気が良くなるなんてな」


あいつがいなくなって本当に肩の荷がおりたような感じがしてしまっていた


堂本「あいつこのままなら会社、辞めることになりますよね、ならいっそう雰囲気も良くなりますよ」


木嶋「本当本当‼️」


すると受付の人から電話がきた


最上「はい、こちら広報課」


受付「すいません、警察の方が来ておりますが


少しドキッとする、警察が?なんで?とりあえずはうちの会社の決まりで警察が来たらまずは面と向かって話すことにしていたのだ


最上「ああ、面と向かって話すからちょっと待ってくれ」


鈴木「何かあったのですか?」


最上「いいから、さ、仕事に戻れ戻れ」


私は胸騒ぎがしつつも腰を上げ、いそいそと受付に向かう



下に行くとスーツ姿の男性が受付にいて


警察「ちょっとお時間よろしいですか?」


警察官は手帳を見せた


最上「いいですよ、少し面接室へどうぞ」


警察「はい」


何があったのかわからなかった、ずっと警察がなぜきたのか?家族の誰かになにかあったのか?それとも両親?妻の両親?ううん胸騒ぎが止まらない



面接室に入り警察官に訪ねる


最上「いったいどのような要件でしょうか?」


警察「昨夜2:00頃、浦垣悠太さんが自宅で死亡していました」


最上「え?え?え?なんで?どうして?」


警察「自殺だそうです」

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