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神のお仕事  作者: シオン
7/12

7


「リクト、ここら辺なのか ? 」


二人は反応があった場所に来ていた。


「ああ。ここから50m以内にいるはずだ」


「ふむ。なにか聞こえるか ? 」



二人は耳を澄ませると、小さくズズッと鼻をすする音が聞こえてきた。


「こっちの方向からだな」


リクトはジゼルに指で示してから、歩きだす。


「ここだな....」




リクトが立ち止まった木の根元には10歳くらいの黒髪の少年が足を抱いて蹲っていた。



「おい、お前どうかしたのか ? 」



ジゼルは少年に近づくと、しゃがんでそう声をかけた。


「ぐすっ....えっ ? 」


少年は顔を上げてこっちを向く。


「おねぇちゃん、誰 ? 」


「私か ? 私はジゼルだ。お前は ? 」


「....僕は、ミシェル」


少しためらうように少年はそう名乗った。



「そうか。ではミシェル、ミシェルはどうしてこんな所にいるんだ ? 」


「えっ、それは....」


口ごもるミシェルにジゼルがどうした ? と訊く。



「ミシェル、お前俺達と一緒に町まで行くか ? 」


リクトは座り込んでいるミシェルに手を差し伸べる。


「....え、いいの.... ? 」


理由を言わなくていいのか、とそう尋ねたミシェルだったが、それを勘違いしたジゼルは見当違いなことを答えた。


「当たり前だ。ミシェルみたいな小さな子供が一人でこんなところにいるなんて危ないじゃないか」



なぜか若干怒り気味の声で言うジゼルにリクトは苦笑する。


「ミシェル、一緒に行こう。....出来れば手を取ってくれ。自分で引っ込めるのも恥ずい」


リクトは一向にミシェルが手を取らないため、手を伸ばしたままになっており、徐々に恥ずかしさが増してきていたのだった。


「うん。....あ、お兄ちゃんの名前は ? 」


ミシェルはリクトの手を取って立ち上がる。


「俺はリクトだ」


「じゃあリクト兄ちゃんって呼んでいい.... ? 」


リクトは躊躇いがちにそう尋ねるミシェルの頭を撫でる。


「いいぞ。あと、こいつのことは呼び捨てでいいぞ」


そう言ってジゼルを指した。


「おい、ちょっと待て。お前、なんでそんなことを言うんだ ? 」


ジゼルが指をさしているリクトの腕をガシッと掴んで、力を込める。


「は ? だってお前子供みたいな頭脳しかないだろ」


「な、ん、だ、っ、て」


一笑するリクトにジゼルは掴んでいる腕にさらに力を込める。


「....じ、ジゼル姉ちゃん、そろそろ町に向かわないと暗くなっちゃうよ」


ミシェルがジゼルの腕を掴んで、泣き跡のある目でジゼルを見つめた。


「か、かわ....う、うむ。そうだな、そろそろ行くか」


そう言ってあっさりリクトの手を離したジゼルにミシェルは内心ホッとする。


ミシェルはジゼルとリクトの今にも殴り合いしそうな一触即発の気配を感じ、なんとか止めようしていたのだった。


「ミシェル、剣は使えるか ? 」


リクトは腰に差していた2本の剣のうちの片方を抜いて手に取る。


「う、うん。多少は使えると思う....でも、いつも練習では怒られてばっかりだったから....」


苦笑するミシェルの表情はどことなく嬉しそうだった。


「よし。ならこの剣を貸すから、お前も一緒に戦ってくれ」


手に持った剣をミシェルに渡して、リクトは腰に差してあったもう1本の剣を抜く。


「うん。僕、頑張る」


剣を握る手に力を込めてミシェルは頷いた。


「うむ。援護は私がするから安心して戦えミシェル」


「うん ! 」


ジゼルはミシェルの頭を一撫でしてから親指を立てて自信満々の笑みを浮かべる。


「お前、MPが無かったら何もできないくせに何えらそーな事言ってんだよ」


「な ! ? 」


そんなほんわかしていた空気をリクトが一瞬でぶち壊しにし、険悪な空気のなか、3人は歩き始めたのだった。









「おいリクト ! 本当にこっちの方向で合っているのか ! ? 」


「はあ ? お前の頭は幼児くらいの知能しかないんだから黙ってついてこればいいんだよ ! ! 」


「ああ ! ? なんだと、もう1回言ってみろリクト ! ! 」


「いいぞ。何度でも言ってやるよ」


「ちょっ、ジゼル姉ちゃんもリクト兄ちゃんも喧嘩はやめてよ ! ! 」


ミシェルは今にも掴みかかりそうな2人の間に入り、なんとか殴り合いを止めていた。


そんな3人の姿は日が落ちてほとんど見えなくなっている。


そう、現在3人は迷子になっていた。


事の発端は1匹の魔物だった。


リクト達は1匹しかいなかったため、チャンスだと思い、倒そうと魔物に向かっていった。

だが、魔物の皮膚は想像以上に固く剣が通らなかった。


ならば、とリクトはジゼルに攻撃魔法を指示したが、攻撃魔法も全く効いている様子はなく、やむ無く3人は逃げることにした。


魔物はしつこく追ってきたがやっと逃げ切ったというところで、どう道を走ってきたのか分からなくなっていたのだった。


「もう、今は喧嘩してる場合じゃないんだって。リクト兄ちゃんも分かってるんでしょ ? 」


必死にジゼルを止めているミシェルがリクトを見た。


「....ふぅ。そうだな、冗談はこれくらいにしておくか」


「おい ! ? リクト、お前なに自分は仕方なく....みたいに言ってるんだ ! ! ミシェルもなぜリクトにだけ訊く ! ? 」


さらに殴りかかろうと体に力を込めるジゼルのおでこをリクトが指で弾いた。


「落ち着け馬鹿。そろそろ真面目に考えるぞ」


「....痛っ。リクト痛いじゃないか ! ! 」


叩かれたおでこを擦りながらジゼルは怒鳴る。


「はあ ? お前がなかなか落ち着かねーから悪いんだろうが」


「ちょっと ! ! 2人とももう喧嘩はやめてってば、」


とても疲れた表情を浮かべたミシェルは慌ててまた止めに入るのだった。



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