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神のお仕事  作者: シオン
4/12

4

「.... 」


 はぁ.... 情報多すぎるだろ。一日で覚えれる量じゃねーよ。


 リクトの自室はベットの周りを中心に、足の踏み場はないほど多くの書類で埋め尽くされていた。


 そしてベットの上ではリクトが書類を一枚取っては床に捨て、また一枚取っては捨て.... 、という作業を繰り返していた。



 それにしても.... あいつ、絶対俺に何か隠してるな。

ほんと、しょうもないことはいくらでも話すくせに....なんで本当に困ってることは話さねーのか....。



 少しくらい俺を頼れよ。



 あいつが俺に頼ろうとしない理由はわからない。もう千年くらいは一緒に暮らし、仕事をしているというのに全くわからない。


だが、絶対に俺に頼ることはしないことはわかる。



 実は前に一度だけ、今回のようにジゼルも俺と一緒に行ったことがあった。





それは五回目の依頼の時だった──





そこは戦争が多発し、人の減りすぎにより滅亡間近になっている世界だった。

俺達が頼まれたのは、その世界の滅亡を止めてくれという依頼だった。


調べると、各国の王をある闇魔法で操り、戦争を起こさせていた人物がいることがわかった。


俺とジゼルはその人物の情報をかき集め、なんとかルーマという名のそいつを追い詰めた。


 しかし少し油断した隙に、ジゼルが操られてしまったのだった。そして、虚ろな目を俺に向けると襲いかかってきた。



俺はそれを解除する方法がわからなかったが、なんとか殺さずにジゼルの動きを止めることに成功し、ジゼルを操っていたルーマを倒した。




 すると、ジゼルは糸が切れたように倒れたのだった。 



        

 俺は最初、魔法が解けたのかと思ったが、ルーマは最期に言ったのだ。



 俺が死んでもその魔法は解けない、と。



 それでも俺はその世界に居座り続け、魔法を解く方法を探し続けた。


 そしてある時、─闇魔法につく危険性─という文献を見つけたのだった。


 それを読んでから、俺は調べるのをやめてしまった。


そんなときにジゼルは目を覚ましたのだった。



目を開けてすぐ、俺の顔を見つけたジゼルは長い間使っていなかったために固まってしまっていた表情筋を無理矢理動かし、ひきつった笑顔を見せた。


そして、かすれた声でこう言ったのだ。



『.... 久しぶりだな、リクト』



 俺は最初、寝ていた時の記憶がないのかと思った。でもそんなはずはなかった。


だってあいつは、久しぶり、と言ったのだ。



それによく見れば、あいつの手は震えていた。



つまり、それだけの恐怖に襲われていたということだ。




その後、俺はジゼルがすぐに仕事を再開しようするのを止めてこの世界に留まり、無理矢理休ませていた。


 俺は毎日、大丈夫か ? と尋ねたが、いくら尋ねてもジゼルは、大丈夫だ。と答えるだけだった。


 しかし、平気なはずがなかった。

ジゼルは毎晩眠るとすぐ、何かにうなされ、毎朝、汗だくで目を覚ましていた。


あの文献には、ジゼルがかけられた魔法はかかった者は自分にとって一番の恐怖の夢を永遠と見る。

そしてその魔法は自分一人で恐怖に立ち向かい、それが現実ではないと気づくことでしか解かれないと記されていた。



 つまり、その魔法にかかっていたジゼルが目覚めたということは、恐怖に立ち向かい、現実ではないことにみずから気づいたということだ。


それもたった一人で。平気なはずがない。


それにきっと、悪夢はまだ、眠ると甦るのだ。だから、毎朝ジゼルは汗だくで目覚める。


しかし、そんな状況でも俺に頼ることは一度もなかった。頼るどころか、仕事をさせろと言ってきかなかった。

そしてついに、一回も頼ることなく、あいつは悪夢も時々しか見ないくらいには回復させて、何も無かったように仕事を再開したのだった。


 俺はジゼルがなぜそこまで自分一人で耐えようとするのか未だにわからない。


俺がその理由を訊いたところであいつが素直に教えてくれるとも思えない。


 だが、あれほど自分一人で解決しようとするのに理由があるのは確かだろう。 


 だから決めた。あいつのことは絶対に守ってやると。


 たとえ、あいつから頼ってくることがなかったとしても勝手に守ってやると。



 今日のこともあいつは何も言わなかったが、きっと何かあったのだろう.... 。

そして、再び俺と一緒に行くと言ったことにもそれは関係がしているだろう。



あいつが何も教えてくれなくても俺のやる事は決まってる。


今度こそ、何かあれば絶対に俺が助けてやる。




───コンコン



 リクトが改めて決意を固めているとドアがノックされ、ジゼルが顔を覗かせた。


「リクト、今日の夕食は私が作ればいいのか ? 」

 

「ま、待て.... ! ! 今すぐ俺が作る」


 リクトは急いで、読んでいる途中の書類と一緒に散らばった書類を集めるとベットに置き、リビングへと向かうのだった。

─────────────────────


過去の話だけの回です。


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