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神のお仕事  作者: シオン
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不定期更新です。すいませんm(_ _)m

「そんな.... そんな方法は危険だ ! ! もし.... 記憶が戻らなかったら帰ってこれなくなる ! ! 」


「落ち着け。そんなことは俺だってわかってる。....だが今回の件は受けろ。これは命令だ」

....こんなことをあいつにさせるわけにはいかない。


「何故だっ。今回の件もいつもと同じ依頼じゃないのかっ。私達はこれまで、全ての依頼を完遂してきたはずだ ! 一つくらい断ってもいいだろう ! ? 」


「そうだな....」


「ならばっ.... ! ? 」


女の目に微かに希望が宿る。


「だが、それは普通の依頼なら、だ。俺に今回の依頼を受けろと上から命令がきたんだ。もちろん、理由を尋ねた。だが、上もさらに上から言われた、としか教えてはくれなかった。それでますます気になって詳しく調べたんだが.... 」


「どうだったんだ ! ? 」


「何もわからなかった。自分で言うのも癪だが、俺は人脈はかなり持っている。だが....それを駆使しても無理だった」


「そんな.... 」


「つまり、それだけ重大なものということだ。だから必ず、この依頼は受けなければいけない」


 くそっ ! 絶対.... あいつを危険な目には遭わさせない。もう二度と、あんなことは繰り返させない。


絶対に。

  ──何か方法を見つけなければ.... 。


 女は血が滴り落ちるほど拳を握りしめ、天を見上げた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 あぁ....疲れた。今すぐに柔らかいベッドでゆっくりと眠りたい。本当ならもっとゆっくりする時間があったはずなんだが。



 .... これも全てあいつのせいだ。




「おい、リクト聞こえてるのか ? 今からお前をこっちに転送させるからな。そこで大人しくしてるんだぞ」


「わかってる。さっさとしろ」


  まったく、あいつは....。


  唐突だが、俺の名前はリクトという。今から自宅へと帰るところだ。


  いきなりなんだ、こいつ ? と思っただろう。が、今しばらく俺の話に付き合ってくれるとありがたい。


 じゃあ早速、少し長くなるかもしれないが俺の人生を説明しよう。

 



  俺は日本で生まれ、まあ.... 今よりはまともな生活をしていた。だが、それも高校1年の入学式までだった。俺は入学式後、すぐに異世界へと召喚された。ついでにいうと、出会ったばかりの同級生男子二人も一緒に飛ばされた。



目を開くとそこは、どこもかしこもキラキラな金でできた部屋だった。


 俺達を召喚したのはレタ王国という国の姫アリーナだった。そして俺達は国を魔王の手から救って欲しいとアリーナ姫に頼まれた。


王道中の王道過ぎて、逆になかなか使われそうにない展開だ。


そして案の定、俺以外の男子二人は大きな胸の綺麗な顔立ちのアリーナ姫に今にも泣きそうな顔で頼まれ、喜んで首を縦に振った。


 まあ、俺は見るからにめんどくさそうだったし、こういう場合は実は国に騙されているということがラノベでは結構あったため、とりあえず協力する振りをして一通りの魔法を教えて貰ってからこっそりと城を抜け出し、国から逃げ出した。追っ手が来ると考えて国外へと逃げたのだが、不思議と追ってくる者は全くいなかった。


 幸い、俺は普通の人より魔力が多かったようなので冒険者になり、なるべく強い奴らとチームを組み、一番安全な後衛で魔法を担当していた。


 しかし、しばらく経つとその生活に飽きてきて、チームの奴らとは別れて別の町へと向かった。それを何度も繰り返し、そんな生活が5年目を迎えたときだった。


 その時、俺はまた別の町へと向かっていた。いつもは護衛などの依頼を受けて新しい町へと行くんだが、今回は丁度いい依頼がなかったため一人で向かっていた。


そしてそれは、十匹程の魔物の群れを倒していたときに起こった。


近くで甲高い悲鳴が聞こえてきた。放っておくのも目覚めが悪かったので、俺はとりあえず状況を見に行った。


 そこには金髪の美女が地面で胡座をかいていた。その姿はとても怖くて腰を抜かしたという感じではなかった。そして、そんな彼女を射抜くように見つめているのは全身黒一色の頭に二本の角が生やした見るからにヤバそうな見た目をした魔物だった。


  正直、そんな様子の彼女が助けを必要としているのかは疑問だったが、とりあえず、強化魔法を自分にかけて彼女の元へと向かった。


「大丈夫か ? 」


  俺は彼女に手を差し出した。


「お、助けてくれるのか ? 」


「あ、ああ.... 」


  彼女は俺の手を取って立ち上がった。


「じゃ、とりあえず戦ってみるから下がっててくれ」  


「ああ、頼む」


  そんな軽い感じで会話を終えた俺は今にもこちらに襲いかかろうとしていた魔物と向き合う。


『ブースト』


『キュア』


俺は魔物へと一直線に走りながら、身体強化魔法であるブーストとしばらく自動的に回復してくれるキュアを唱えた。


「小賢シイ人間メ、蹴散ラシテクレルワ ! 」


 魔物がそう叫ぶ姿はまるで魔王のようだ。


俺は収納魔法を唱え、仕舞っていた剣を取り出し、両手で柄を持つと、それを魔物の体の中心部へと突き刺す。


「ふっっ」


「フハハハハ ! ! コンナ鈍イ攻撃当タラヌワ」


「これでもか ? 」


 右に体をずらして躱された突き出した状態の剣を右手に持ち替え、そのまま右へと水平に動かした。それと同時に足に装備していた短剣を左手に持ち、魔物の首へと滑り込ませる。


「グハッ。....フハハハハ、我ハコノグライデハ死ナヌゾ ! ! 」


 リクトの剣は魔物の体を首、胴体、足と三つに切り離した。頭だけになった魔物が一瞬苦しそうな表情をしたが、すぐにまるで磁石のように、切り離された体の部分達がピタッと一つにくっついて元通りになった。 


「はぁ ! ? なんだよそれ.... 」


「驚ドロイタカ。マァ、ソレモ仕方ナイダロウナ。ドウダ、モウ絶望シタカ ? 」


口を開けて固まった様子のリクトを見て魔物はニタァと笑みのようなものを浮かべた。


だが、魔物の想像は微塵も合ってはいなかった。


「お前、不気味.... というより普通に気持ち悪いな」


「ナ、ナンダト ! ? 我ヲ.... コノ我ヲ侮辱スルノカァァァ ! ! ! 」


 魔物は言われた意味を理解した途端、声を荒げて叫び、リクトへと殺気を放つ。


「さっきからうるさいぞ。お前は声を荒げるしか能がないのか ? 」


  自分に一切動じず、さらに挑発してくるリクトに魔物はさらに怒り叫ぶ。


「コノ我二ィィィ。コノ我二ィィ今、何トイッタァァァ ! ! !」


「はぁ、ほんとお前頭悪そうだな。いや....まさか本当に脳がないのか ? ....まあどうでもいいか。めんどくさいからさっさと片付けよっと」


 リクトはいつの間にか持っていたもう一本剣も構えて、二本の剣で魔物の体にどんどん傷をつけながら魔法を唱える。


『スターチ』


「フハハッッ何ヲシテモ無駄ダァァ。我ハ不死身....グハッ 」


魔物は口から緑の血のようなものを吐く。


「どうだ ? これでも無駄か ? 」


 リクトはニヤリと口元を緩ませ、さらに魔法を唱える。


『グラバーレ』


『ファイア』


 リクトは連続で魔法を唱え、さらに魔物を切り刻む。


「グァァァ.... 。何ヲシタァァ....我ニ何ヲシタァァ! ! ! 」


「.... うるさい」

 

  魔物はさらに激昴して殺気も攻撃の手も強めるが、リクトが怯む様子は全くない。 


  だいぶ攻撃しているはずだが....。どれも致命傷にはなってないか。 


 リクトが決め手に欠けていると、よく通った声が聞こえてきた。


「光魔法を使え。その魔物の弱点だ」


  リクトが声の聞こえた方に目を向けると、そこには下がらせていたさっきの彼女だった。


「なぜ、そんなことがわかる 」


  魔物の攻撃を剣で受け止め、跳ね返してからリクトは訊く。


「今はそんなことどうでもいいだろ。私を信じろ 」 


「いや、初対面の人の言うことをすぐ信じれるやつなんていないだろ」

ていうか、信じたら馬鹿だろ。


「いいから早く言うとおりにしろ 」


「はぁ。.... わかったよ ! ! 」


 このままでは話が進まないと感じたリクトは、半分やけくそだが彼女の言うとおりに光魔法を唱えた。


『レイ』


 リクトが魔法を唱えた瞬間、辺りは一瞬にして光に包まれた。そして、光は少し弱まったと思うと一筋の線となって魔物へと収束していった。


「.... っ。相変わらずこの魔法は不便だな」


 リクトは光で魔物の姿が見えなくなり、不満を漏らしながらも警戒を緩めずに様子を見守る。


「なんでこんな魔法使ったんだ ? もっと使いやすい光魔法もあっただろう....」 


 あまりの光の眩しさに手をかざしながらリクトと同じ方向を向いて彼女がそう言った。


 彼女が疑問に思うのも当然だった。そもそも光魔法でこれだけ強い光を発するものはほとんどない。


 なぜなら魔法とは遥か昔から使われてきたものであり、先人達が研究を積み重ね、日々進化させてきたものなのだ。


 つまり、それだけ不便な点がなくなっているということだ。そんな中これほど不便な魔法は珍しいといっていいだろう。 


 そんな経緯を知っているからこそ、彼女は疑問に思っているのだった。


「.... そうだな、理由は二つある。一つはこの魔法は単体の敵に向いている魔法だから。もう一つは.... 攻撃系の光魔法はこれしか覚えていないからだ」


「は.... ? お前は魔法専門ではなかったのか.... ? 」


リクトはジゼルがそう口にしたのを聞くと、鋭い目つきに変え、ジゼルに訊き返した。


「....なんで魔法専門だと思うんだ ? 」


「え.... ? 」


  彼女はリクトが何を言いたいのかがわからないようで首を傾げる。


「だから、なんで俺が魔法専門だと思ったんだ ? さっきから俺は剣も使っていた。しかも、俺は普通はやらないだろう二本の剣を、だ。その場合、魔法より武術の方が得意、と思うのが普通だと思うが ? 」


 彼女はそこまで聞いてやっと、リクトが何を言いたいのかを理解したようだった。そして、思った。おそらく彼が予想しているだろうことの半分は当たっている、と。   


 だがそれを想像してなお、彼女は微塵も焦りを感じていなかった。

 

一方、そんな彼女に焦りを感じ始めたのはリクトの方だった。


 彼女のことは最初から少し怪しいと思ってはいた。だが、それが確信に変わったのはさっきの彼女の発言を聞いたときだった。


俺の予想だと、俺はずっと彼女に監視されていて、監視された理由は勇者関連のことだった。そして今、彼女のミスを問い正せば多少なりとも焦りを見せると思っていた。


 しかし、彼女の見せた反応は俺の予想とは違った。


 彼女の表情に焦りや心の揺らぎは少しも現れなかった。自分の感情を読み取る力には自信がある。だから俺が読み取れなかっただけというのはありえないだろう。

だとすれば、もし俺が細かく指摘すれば追い詰められてしまうことが理解出来るはずだ。いや、もしかしたらこの状況など容易く変えられる程の実力者という可能性もあるか。


 しかしそれならそもそも勇者など必要とは思えないし、俺を無理矢理連れて帰ることも出来るだろうから、監視する必要などないよな....。


 いろんな考えが何度も頭の中をグルグルと駆け巡り続け、リクトは混乱していた。彼女はそんなリクトを見つめ、沈黙していた。


 そんなとき、やっと光が収まった。


 リクト達は一度話を中断して倒れている様子の魔物へと近づいた。


魔物は予測していた通り、体の中心に大きな穴を開けてすでに死んでいた。


 よく見ると、穴の周りは皮膚がでこぼこしていた。おそらく、なんとか傷口を塞ごうしたが回復力が追いつかず息絶えたのだろう。


 リクトは魔物を一瞥すると、話の続きをしようと彼女がいる方へと顔を向ける。


 だが、そこにはすでに彼女の姿はなかった。


「ん ? .... 逃げたか」


 リクトは一瞬追おうかとも思ったが、捕まえたところでどうにも出来ないと考え、死んだ魔物をギルドで換金するためを持ち上げる。






 ───瞬間、空が強烈な光に包まれた。







 リクトはその光の眩しさに思わず目を瞑る。そしてしばらくすると、空から声が降ってきた。


『 見事だったぞ、勇者よ。私はジゼル。この世界の神にあたる存在だ。今回の件、誠に感謝する。では、これから元の世界へと戻してあげよう』 


リクトが目を細めながら空を見上げると、光の中にさっき逃げたはずの彼女が立っていた。


そして、俺はそこでやっと、彼女─ジゼル....いや、奴が言ったことを理解した。


「….るな」


『うん ? 何か言ったか ? 』


彼女は声が聞き取れなかったようで宙に浮いたままでコテンと首を傾げていた。その姿はとても可愛らしいく、様になっている。だがそんなジゼルの姿を気にも止めず、リクトは怒鳴った。


「ふざけるなと言ったんだ。このクソ神がぁ ! ! 」


『なっ…. ! ? 』


「お前は俺を地獄へと戻す気か ! ? 」


俺は怒りを彼女へとぶつける。


『なぜそうなる....。其方の故郷に帰れるのだぞ ? 』


どうやらまだ俺の気持ちは彼女に伝わっていなかったようだ。彼女はまだ諦めず、説得を試みてきた。


俺はそのしつこさにさらに苛立ちを感じながらも今度は落ち着いて言った。


「だからなんだ ? 故郷に帰って何になる。俺はあそこにいい思い出なんて何一つ無い。ここで月日を過ごした今、あそこに戻ることは地獄でしかないんだよ ! ! 」


『.... 』


俺がそこまで言ってやっと彼女は、俺はどうしても故郷には帰りたくはないのだと理解したようで話の方向性を変えてきた。


『ならば、其方は何を望む。其方の望みを叶えてやろう。ただし、この世界に残りたいということだけは不可能だぞ』


....くそっ、先を越されたか。


リクトは最悪の事態は回避したが、最高の結果は逃がすというなんともいえない気持ちを抱えながらも次の最善を考える。


望みは決まっているが....くそ。上手く纏まらない。

....よし、もうそのまま言ってしまおう。


「俺の望みは一つ。楽しい人生を送りたい。それだけだ」


リクトは真剣な表情でジゼルの目を見た。


ジゼルの方もリクトの目をしばらく見つめ、数秒沈黙してから深く頷いた。


『.... わかった。では、其方の望みを叶えてやろう』


───瞬間、辺り一面が真っ白に染まる。


リクトはその光景に驚いて一瞬固まるが、すぐに後ろへと跳ぶ。が抵抗虚しく視界は白一色に染まった。




読んでくれてありがとう。

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