崩壊しかけるものと夢を持つもの
全校集会から三日後、早くも太陽の葬式が行われた。葬式は親族・太陽の友人である僕と紅葉が呼ばれた。
少人数で行われた葬式。葬式のときに見た、太陽の顔。
本当はまだ生きてるんじゃないかと思わせる寝顔に現実感がなかった。ただ、太陽が死んで以来、話をしなかった紅葉が横で泣いてたから現実なんだって思うことができた。
葬式の後、火葬場に着いたときに太陽の家族が泣いているのを見て、居た堪れなくなっていたのを今でも覚えてる。ただ、太陽のお母さんが最後に、
「詩音くん、紅葉ちゃん・・・・・・来てくれてありがとう。太陽も喜んでると思うわ。」
と、泣きながら口にしたことに心が大きく揺れた。紅葉もその一言で太陽が死んだ日と同じように泣き始めたのも印象的だった。
「太陽の分まで、二人とも楽しく生きてね」
隣では大きく頷く紅葉に太陽のお母さんは優しく抱きしめていた。そんなときの僕は、
「わかりました。」
と、一言漏らすだけだった。
そうすると、紅葉と同じように太陽のお母さんは僕を抱きしめてくれた。
この優しさに僕は一瞬だけ力が抜けた気がした。
葬式の帰り際、紅葉は僕に対して、
「私、将来医者になってみせる。」
と口にし、僕の手を握ってきた。握られた手の温かさ、優しさ、紅葉の心が込められていたような気がした。けど、僕は笑顔とともに
「頑張って。」
と伝えることしかできなかった。