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近付く崩壊Ⅲ

翌日、僕は目覚ましよりも早く目が覚めた。何故だか、自然と目が覚めたのだ。

 カーテンの隙間から覗く空は光を一切通さない曇天だ。まるで不吉なことが起こるかのような、そんな不安を煽るような天気だ。


「不気味だ・・・」


 部屋からリビングへと向かうと、そこには母さんが座っていた。


「・・・あら、今日は早起きなのね、詩音。」

「そんなこという母さんだって早起きだね。それに目の下に隈ができてるけど大丈夫?」

「私は大丈夫よ。けどね・・・詩音。」

「どうしたの・・・?」


 目の下に隈を作っている母さんは僕の方へと視線を向けると、


「心して聞いてほしいことがあるの。」


 と一言口にした。


「なんだよ、母さん。母さんがそんなこというなんて、怖いよ。」

「いいから・・・一度、座って話そうか」


 冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、コップへと注いでいる母さんの背中は暗く悲しみが滲み溢れているのがわかる。


「どうしたの、なんかあったの?」


 そんな母さんを元気付けるため、僕は笑みを浮かべながら声をかけた。けど、振り返った母さんの表情は一層暗いものになっていたのに気づいた。


「「・・・・・・・・・」」


 机の上に出されたアイスコーヒーから滴る水滴は机に円を描く。それだけの時間が経過してから母さんが口にした言葉に僕は目を丸くするしかなかった。


『あのね、詩音。太陽くんのことなんだけど・・・昨日、学校の帰り道にく・・・車に轢かれたらしくて・・・その、太陽くんがね・・・し、死んじゃったんだって』

「・・・・・・えっ?」


 太陽が・・・死んだ? うそでしょ、昨日まで学校で会ってたのに?


「ハハ・・・母さん、嘘はやめようよ。」

『・・・・・・・・・・嘘じゃないのよ』


 不幸は続く、僕の不幸は連続してる・・・。


「気をしっかり持ちなさい、詩音。」


 目を丸くしている僕の手を握ってくれている母さん。そんな母さんの瞳には今にも零れそうな涙が溜まっていた。


「なんで母さんが泣いてるのさ。」

「ごめんね、わかんないの。私も、なんで泣いてるのかはわからない。けど、自然と出てくるの。ごめんね。」

「母さん・・・・・・大丈夫だよ。僕は大丈夫。」


 僕は笑みを浮かべた。それは母さんや紅葉、太陽に向けた同じ笑みだ。

 その笑みを見た母さんは泣くことをやめた。けど、それと変わって、さっきよりも悲しみが強い表情を浮かべ、


「ごめんね。」

 と一言口にして、朝食を作り始めた。

 グシャリ。

 そんな音が僕の耳には聞こえた。周囲を見渡しても壊れた物は何もない。けど、確実に何かが壊れた音を聞いた。


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