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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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07.FランクとSランク

 リサ・マッキントッシュ。
 昔は好きだった、幼なじみで一緒に育って、本気で将来のことを考えた事もある。

 でも今はもうない。
 もはや見てるだけでいらつく存在になった。

 そんな彼女に、おれは笑顔で話しかけた。

「よう」
「うん? あらハードじゃない。何してんのこんなところで。もしかして冒険者になったの?」
「まあな」
「――ぷっ」

 リサはおれを見て、いきなり吹き出した。

「あははははは、あ、あんたが冒険者? あはははは。冗談きっついわ。あはははは」

 リサは腹を抱えて笑い出した。
 そんなにおかしいかよ。

「リサ。こいつは?」
「あたしと同じ村出身のヤツ」

 ……幼なじみすらいらないのか。

 男は「そうか」っていって、おれに握手を求めてきた。
 握手して、男を観察する。

 イケメンだ。
 甘いマスクに鋭い眼光、実戦で鍛えたであろう実用的な筋肉質な体。
 イケメンだし、女にモテるタイプのイケメンだ。

「アイホーン・スレートだ」
「ハード・クワーティ」
「よろしく、ハード。話はよくリサから聞いてる。まさか冒険者になってるなんて思わなかったから驚いた」

 一見なんともないやりとりだが、ハードの瞳からは隠しようもない程の侮蔑が見えた。
 完全におれを見下している目だ。

 リサからどんな話を聞いたのか……聞かなくてもわかるなこりゃ。

「(お前ごときが)冒険者になってるなんて思わなかった」

 って意味なんだろうな。
 ますます腹が立った。
 なんとかして鼻を明かしてやろう、そう思って色々考えた。

「そうだ、ハードあんたこれから暇?」

 考えがまとまる前にリサが聞いてきた。

「どうせ暇なんでしょ、だったら一緒に来なさいよ」
「一緒ってどこに?」
「良いから来なさい」

 リサは得意げに鼻をならした。

「DランクとEランク冒険者のすごさを見せてやるわ」

     ☆

 アイホーンとリサに連れられて街を出た。

 先行する二人、後ろについて行くおれとサヤカ。
 サヤカがおれの横にやってきて、小声で聞いてきた。

「ハードさん……あの人たちは?」
「女はおれの幼なじみ、男は……多分彼氏かなんかだろうな」

 後ろから見てもよく分かる、リサはアイホーンにかなりお熱で、思いっきりこびを振りまいてる。
 あんな女だったっけ、あいつ。
 ……だったかもなあ。

「幼なじみさん、ですか」
「ま、もう色々終わってるけどな」
「なんか……あの人嫌な感じ」

 またブツブツ何か言ってるサヤカ。
 いつもの事だからスルーした。

 そのままついていって、見晴らしのいい草原にやってきた。
 前に来たことのある草原だ。

「ハード、これから仕事するから、あんた達は離れてなさい」
「危険だからな」

 リサとアイホーンに言われた通り、おれはサヤカを連れて離れた。
 おれ達が遠ざかるのを確認してから、二人は地面に倒れた。

「ハードさん、あれって」
「ああ……ワンチャンだ」

 見晴らしのいい草原で死んだふりをする二人。
 あきらかにワンチャン捕縛のための戦術だ。

 おれとサヤカはかなり距離を取った、百メートル以上距離を取って二人を見守った。
 しばらくして、遠くからワンチャンが現われた。

 ワンチャンは警戒心強いままゆっくりと近づいて、死んだふりの二人のまわりをぐるぐる回った。
 やがて、大丈夫だと思ったのか、二人の手の届く距離に近づいた。

「いまだ!」
「観念しなさい!」

 アイホーンとリサがパッと起き上がって、ワンチャンに襲いかかった。
 戦術は完璧だ、死んだふりをして近づいてきたワンチャンに不意をついて襲いかかる。

 おれ達もとった戦法で、ワンチャン対策のオーソドックスな戦法だ。

「きゃあああ!」
「リサ! やったなあ――ぐわっ!」

 が、二人はワンチャンを捕まえられなかった。
 素早いワンチャンを取り逃がして、反撃まで喰らうしまう。

 リサは顔面から地面に突っ込んで泥だらけ、アイホーンは吹っ飛んでぼろぼろになってる。

 おれは近づいていって、聞いた。

「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないに決まってるでしょ! もう、ハードのせいなんだからね!」
「へ?」
「あんたがそこにいるから捕まえられなかったんじゃん。なんでついてきたのよ! もうあのワンチャン警戒心MAXで捕まえられなくなったじゃん!」

 いやそっちがついて来いっていったんだろうが。

 ……何か腹が立ってきた。
 前の事もそう、今もそう。

 なんてワガママなんだこの女は。
 ワガママだって思うとますます腹が立ってきた。

 まわりを見る。かなり遠い場所にワンチャンがいる。
 ワンチャンはこっちを警戒しつつじりじり後ずさってる。
 リサの言うとおり警戒心MAX状態だ。

「サヤカ」
「はい」
「あれを捕まえてこい。できるな」
「ハードさんのためなら」

 サヤカはちょっと嬉しそうに頷いた。
 一方でリサが更に激怒する。

「はあ? 捕まえる? そんなの出来るわけないじゃん警戒してるワンチャンだし――」

 リサが言い終えるよりも先にサヤカが飛び出していった。
 ものすごい速さで、ワンチャンに向かって行く。

 ワンチャンは逃げた、ものすごい速さでにげた。
 同じものすごい速さだが、サヤカのはワンチャンの十倍だ。

 十倍の早さで一気に距離を詰めて、反撃をものともせずワンチャンをがっちり捕まえてもどってくる。

 アイホーンもリサも唖然としていた。

「な、何よあの子」
「おれの奴隷だ」
「えええ?」
「サヤカ、指輪をみせろ」
「はい」

 戻ってきたサヤカは片手でワンチャンを押さえながら、従順に言われたとおり左手の薬指にある指輪――奴隷の証を見せた。

 ワンチャンを捕まえて軽々と押さえる事と、奴隷の証の指輪。

「本当に奴隷だ……」
「おれが奴隷以下だと……いやそんなのあり得ない」

 リサは呆然とし、アイホーンはものすごく悔しがった。
 いい気味だ。

     ☆

 すっかり意趣返しが出来たので、ギルドに戻ってきて、Aランクの掲示板の前に立った。
 ハプニングで遅れたけど、本来のやるべき事をやらなきゃ。

「ますます大変な依頼ばかりになってるな、Aランクにもなると」
「そうなんですか?」

「討伐ばかりなのはBと同じだけど、対象がな。どれもこれもやばい噂しか聞かないまものだ」
「そりゃそうだよ、だってAランクだもん」

 横からサイレンさんが話しかけてきた。
 今日はまだ体から血の臭いがしない。旦那さんが大人しくしてるんだろうか。

「でも、ハード達なら出来る。でしょ」
「がんばる。もう一回でSランクなんだから」
「うん、頑張ってね」

 激励だけして、サイレンさんはカウンターの向こうに戻っていった。
 カウンターに入るとき何故かひょいっと飛び越えた、まるで段差があるかのように。

 ……あそこに段差、ないよな。

 深く考えると恐ろしそうだから考えないことにした。
 掲示板をみた、サヤカの『ちーと』も考えて、一番やりやすいのを探す。

「魔女刈り討伐がいいな」
「魔女狩りですか?」
「ああ、魔女刈りだ」
「魔女狩りをするなにかかな……」

 いつも通り(もう慣れた)ブツブツのサヤカを連れて、ギルドをでて魔女刈りがいる場所に移動する。

     ☆

 街を出て、森の中にやってきた。
 昼間でもじめじめして暗くて、不気味な森だ。

 ついてきたサヤカなんかは怖がって、ビクビクしていた。

「サヤカ」
「は、はひ!」

 声が裏返った、よっぽど怖いんだな。

「怖いならおれの服の裾を――いや、手でもつなぐか?」
「え?」
「いやなら別にいいんだ――」
「ううん! つなぎます!」

 サヤカの怯えが一瞬でまとめてどこかに吹っ飛んだ。

「つなぎます! ハードさんと手をつなぎます! 例えこの命つきても絶対につないではなしません!」
「大げさだなあ――はい」

 手を出した、それを見たサヤカが恥じらってうつむいた。
 おずおずと手を伸ばしてきて、おれの手とつないだ。

 小さくて、柔らかい手だった。
 手をつないだサヤカは恥じらったまま、しかしニコニコした。

 すっかり怯えが消えたみたいで何よりだ。
 それで落ち着いたサヤカが思い出したように聞いてきた。

「ハードさん。詳しく聞いてませんでしたけど、魔女狩りってどういうのですか?」
「ああ、魔女刈りってのは――」

「ふん! とんだ無駄足だったわ!」

 正面からいきなり女の声が聞こえてきた。
 立ち止まって、目を向ける。

 そこにリサがいた。
 彼女は腰に手をあてて、おれ達を見下した目でみてくる。

「リサ、おまえなんでここに」
「あんたがどんなズルをしてるのか見に来たのよ」
「ズル?」
「そうよ。ズルしてるんでしょ、じゃなかったらワンチャンを捕まえられるはずないじゃん、ハードごときが」
「……なんのこっちゃ?」

 ズルって、何がどうしたらそういう発想になるんだ。
 ワンチャンの時みてただろうに、サヤカが真っ向からワンチャンを捕まえたの。

 あれのどこにズルがあったっていうんだ?

「それも無駄足だったわね。まさかギルドの依頼じゃなくて、奴隷といちゃいちゃするためにこんなところに来るなんて」
「いや、それは誤か……」
「ふん!」

 リサはこっちの話なんて聞かずに、きびすを返してずんずん去っていった。

「あの……ハードさん」
「うん?」
「ごめんなさい、わたしが手をつないだから」
「サヤカは何も悪くない」
「でも……」
「気にするな。いまのどう見ても向こうがおかしいだろ?」
「そう、ですね」

 サヤカが納得した。

 邪魔が入ったが、今は魔女刈りだ。
 魔物を見つけ出して退治して、Sランクにならなきゃ。

 さて、魔女刈りはどこ――。

「きゃああああ!」

 悲鳴が聞こえた。
 リサが去っていった方角に響く――リサの悲鳴。

「ハードさん!」
「ああ!」

 つないだ手を離して、二人で走っていった。
 森のちょっと開けたところに二人の人影がいた。

 片方はリサ、尻餅をついてガクガク震えてる。
 よく見たら股間の地面の色がおかしい、何かシミのようなものが広まってる。

 もう片方は魔女の格好をしている。とんがり帽子に黒いローブ。
 が、よくある魔女のイメージよりも一回り大きい。
 というかごつい、筋肉ゴツゴツだ。

「あれはなんです?」
「魔女刈りだ」
「え?」

「あの帽子とローブが見えるか?」
「はい」
「あれはあいつの髪だ」
「え?」

「魔女に憧れすぎて、長い髪を刈り込んで、魔女の帽子とローブっぽくしてる。だから魔女刈りだ」
「刈りってそういう意味だったんですか――あっでも、なんかこっちの世界は全部そういうのっぽい……」

 またブツブツいってるサヤカ――。

「避けろサヤカ!」
「え――ひゃ!」

 おれの声でハットしたサヤカがギリギリで避けた。
 リサを襲って失禁させた魔女刈りがいきなり飛んで来て、パンチを放った。

 サヤカは避けた。からぶったパンチは地面をえぐって、一発ででっかいクレーターを作り出した。

「なんですかこれ!?」
「魔女に憧れるのは種族全体に魔力がない、筋肉しかない。どんなにサボっても筋肉ゴツゴツのマッチョになってしまうから――だといわれてる。だから魔女の格好に憧れて、可愛い女を見れば見境なしにおそう」

 サヤカはもちろんだけど、リサも見た目だけならいいからな。

「うぅ……からだがおっきくて怖い」

 怯えるサヤカ。
 確かに怖い相手だ。
 目の前にいる魔女刈りはもはや筋肉のオバケとも言うべき存在、腕だけでもおれの腰よりもぶっとい。

 サヤカみたいな女の子が怖がっても不思議はない。

 だが、問題はない。
 魔女刈りの事は前からしってる、だからこの依頼を選んだ。

 いくら筋肉がごつかろうと。

「がんばれサヤカ、相手は筋肉しか能がない」
「え? ――あっ」

 サヤカははっとした、ようやく分かったみたいだ。
 そう、魔女刈りは筋肉しかない――パワーしかない。

 そして、サヤカの『ちーと』は相手の十倍の力を出す能力。

 つまり、サヤカが魔女刈りに負ける事は万に一つもない。

 落ち着いて、魔女刈りの攻撃にカウンターを喰らわせるサヤカ、予想通り一撃でそいつを倒した。
 魔女刈りは吹っ飛ばされて、ぐちゃぐちゃになった。

「ごくろうだった」

 戻ってきたサヤカの頭を撫でてやった。
 サヤカはえへへ、と頬を染めて喜んだ。

「あっ、そうだ」

 思い出したかのように、サヤカがリサに向かって走って行く。
 心配しているのが横顔でわかった。優しいな、サヤカは。

「大丈夫ですか?」
「ひぃ!」

 リサは後ずさった。もがいて立ち上がって逃げようとした。
 ぬめってる地面に手を足を滑らせて、失禁が染みこんだ土に顔から突っ込んでいった。

 それでも更にもがいて、地面を這いながら逃げていった。

「ば、ばけものよおおお」
「ばけもの……」

 サヤカは差し出したが行き場をなくした自分の手を見つめて、悲しそうにつぶやいた。
 そんなに悲しむことはない。

 彼女に近づき、頭を撫でた。

「サヤカ、よくやった」
「ハードさん……はい! ありがとうございます!」
「さて、ギルドに戻ろう。Sランクになりに」
「はい!」

 帰りもサヤカと手をつないだ。
 上機嫌なサヤカと一緒にギルドにもどって、討伐成功を報告して。

 そして、サヤカはSランクになった。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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