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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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06.FランクとAランク

 Bランクになったから、次の依頼を探す前に掲示板を眺める。
 その前に、今更だけどサヤカの『ちーと』の詳細を把握しておきたいって思った。

 今まではサヤカの『ちーと』に頼ればなんとかなると思ってた。
 サヤカは切り札、その切り札をきれば何でも解決する。

 それは間違いないからいいんだけど、奴隷の事を完全に把握してないのはご主人様としてどうなんだろうか、って思ったから、聞いてみることにした。

「サヤカ、お前の『ちーと』って具体的にはどんなものなんだ?」
「具体的にですか?」

「強いのは分かったけど、もっと詳しく知りたい。お前の事を」
「わたしの事をもっと詳しく知りたい……」

 サヤカはまた赤面した。
 いつものことだからそこはスルー。

 サヤカの赤面とブツブツはとりあえずスルーする事にしてる。
 そうして、ご主人様として命令する。

「そうだ、お前の全部を教えろ」
「わたしの全部……」

 ますます赤くなった。
 サヤカは茹でタコヤキみたいな顔をして、答えた。

「ハードさんに会う直前の夢で言われました、あなたにチートを授けるって」
「それは前に聞いた。ふわふわの、ふわっふわなんだな」

 自分で言ってて何がなんだかと思ったけど、とにかくふわふわらしい。

「その時に『ちーと』の詳細はなにか言われてないのか?」
「えっと……あっ、思い出しました。常に相手の十倍力強くて、十倍速い、ってチートです」
「常に相手の十倍?」

 サヤカは頷いた。
 常に相手の十倍。相手って敵の事か?
 試してみよう。

「サヤカ、今から勝負だ。力比べをしよう」
「腕相撲するんですか?」

「それじゃあ勝ち負けしか分からない」
「どうすればいいんですか?」

 おれは壁際に向かった。
 積み重なってる椅子をワンセット――十脚まとめて持ち上げた。

「ぐあ……お、重い」
「大丈夫ですかハードさん」

「はあ……はあ……やっぱりこれくらいが限界か。次はサヤカ、持てるだけもってみろ」
「わかりました」

 サヤカはおそるおそるって感じで椅子を持ち上げた。
 軽々と十脚。二十脚も余裕だ。

 三十……四十……五十……百。
 そこで顔が真っ赤に――わかりやすく力込めすぎての顔が真っ赤になった。

「ま、まだいけます……」
「もういい、そこまでだ。下ろしていいぞ」

 おれの命令でサヤカがホッとして椅子を下ろした。
 おれとの勝負で、サヤカは力がおれの十倍になった。

 なるほど、常に相手の十倍になる能力か、『ちーと』ってのは。
 ……反則じゃねそれ?

 常に相手の十倍って事は、どんな相手にも勝てるって事じゃないか。
 自分の十倍力強くて早い相手に勝てる生き物なんて存在しないぞ。

「すごいなサヤカは」
「す、すごいですか?」

「ああメチャクチャすごい」
「ハードさんにほめられた……」

 サヤカははにかんでうつむいた。
 その姿は可愛かった。

 さて、『ちーと』を把握したことだし、そろそろBランクの依頼をやるか。
 掲示板の前に戻ってきて、依頼を見る。

「今度は何をしますか?」
「Bランクはほとんどが討伐系だな」

「討伐……相手を倒す事ですか?」
「そういうことになるな。魔物をたおすけど……いやか?」

「ううん、ハードさんのためならなんでもします」
「ん? いま何でもっていったか」
「はい!」

 サヤカは躊躇なくうなずいた。
 なんでもする、か。

「だったらカメラ小僧捕縛はどう?」

 サイレンさんが横にやってきた。
 ギルドに戻ってきた時は旦那さんを折檻してたから、意識して無視してた。

 それが隣にやってきて、提案した。

 カメラ小僧か……いいかもしれない。
 だいぶやっかいな存在だけど、サヤカなら楽勝な相手だ。

     ☆

 街の広場にやってきた。
 おれはいつも通りの格好だけど、サヤカはコートで全身を羽織ってる。

 その格好でもじもじしてる、泣きそうな目でおれを見てくる。

「本当にやらなきゃいけないんですか?」
「ああ、その格好でカメラ小僧をおびき出すんだ」
「た、確かにカメラ小僧さんが好きそうな格好ですけど……でも……」

「いやか?」
「――!」

 サヤカはハッとして、ぷるぷる首を振った。
 ちぎれるくらいの勢いで振った。

「とんでもないです! やります!」

 といって、コートをぱっ! と脱ぎ捨てた。
 コートの下は水着だった。

 V字型の水着、三点をぎりぎり隠してるだけの過激な水着だ。
 それがサヤカの幼い体つきと相まって、背徳感がとんでもない事になってる。

 街の広場って事もあって、行き交う人々がジロジロ見つめてくる。
 それがますますサヤカを恥ずかしくさせて、肌色が桜色に染まってますますエロくなる……の好循環になっている。

「うぅ……はずかしいです」
「我慢しろ、その格好ならもうカメラ小僧に狙われてるはずだ。最近広場に出没してるって話だから、きっともう来てる」
「もう来てるんですか?」

 サヤカはきょろきょろとまわりを見回した。

「そ、それらしき人は見えませんけど」
「最初は見えないからな」

「え? み、みえないんですか?」
「徐々に見えてくるんだよ」

 おれの説明にサヤカは「???」と首をかしげた。
 説明するのはもうちょっと待って実際に見せた方がいい。

 しばらくして、サヤカをジロジロ見てた町の人が「あー」って得心した顔をし始めた。
 来たか、って思ってサヤカのまわりに目をこらした。

「いた、サヤカのまたの下だ」
「え? ――ひゃ!」

 サヤカがびっくりして飛び退いた。
 手で胸と股間を押さえた。

 そのサヤカにカメラ小僧が追っていった。
 人型の魔物で、小柄だけどデブってて、汗をだらだら流している。
 顔はでっかい眼球が一つだけ、スケッチノートをもってて、それに絵を描いてる。

 描いてるのはもちろんガン見してる水着姿のサヤカだ。

「は、ハードさん?」
「そいつがカメラ小僧だ。安心しろ、エロい格好をしてる人を描くだけでそれ以外は無害だ」
「む、無害じゃないですよ! じゃなくてこれを捕まえればいいんですね、えい!」

 半透明のカメラ小僧を捕まえようとするサヤカ、しかし腕は空を切った。

「あれ?」
「無駄だ、カメラ小僧は絵を描き上げるまでは触れないんだ。触れるのは描き上げたあと。完成度に連動して徐々に実体化していくんだ」

「それじゃ、描き上げるまでずっとこのままなんですか?」
「そういうことだ」

「うぅ……」
「それと気を付けろ、カメラ小僧はとても逃げ足が速い。触れる様になったら一瞬で逃げるからな。捕まえられるのは一瞬だけだ」
「わ、わかりました!」

 サヤカはおれの注意を聞いて気を引き締めた。
 カメラ小僧を凝視した。いつでも捕まえられるように待ち構えた。

 カメラ小僧はその素早さもあって、狙われたヤツは大抵とり逃がしてしまう。
 が、サヤカには無用の心配だ。

 サヤカの『ちーと』は相手の十倍速くなること。
 つまりカメラ小僧の十倍速い。

 早いだけのカメラ小僧、超早いから捕縛する難易度がBランクだが、サヤカならもう勝ちっていうか捕縛が確定している。
 後は書き上がるまで待つだけ。

 ってことで、おれはサヤカを眺めた。
 恥じらうサヤカを、じっと眺め続けた。

 カメラ小僧はあっさりつかまった。

     ☆

 Aランクになった後、日が暮れたので宿屋『翼の記憶』に戻ってきた。
 サヤカは顔を赤くしたままだった。もう元の格好に戻ったけど、顔は赤いままだ。

 三回目に泊る同じ部屋の中、おれは捕まえたカメラ小僧から取り上げたノートをヒラヒラさせて、サヤカにきいた。
 水着姿って事もあって、サイズ的にもブロマイドに見える。

「これ、どうする?」
「も、燃やしてください!」
「もったいないな、こんなに可愛いのに」
「か、かわいい?」
「ああ」

 おれは頷いた。
 ブロマイドを見た。V字水着のサヤカはすごく可愛い。
 この水着でエロくなくて可愛いとかちょっとした奇跡だぞ。

「こんな可愛いんだからいつまでももってたいぞ」」
「ハードさんがもってる? わたしのブロマイドを……? はっ! だ、ダメです! そんなの恥ずかしいから燃やしてください!」
「しょうがないな」

 まっ、気持ちもわかる。こんなのいつまでももってられたら恥ずかしいもんな。
 おれはブロマイドを部屋のランプで火をつけて、燃やした。

 自分の恥ずかしいブロマイドが灰になったのを確認したサヤカはホッとした。
 ちなみに燃やしたのはサヤカが恥ずかしいからもあるが、別にいつでも見られるからってのもある。

 おれの奴隷だからな、サヤカは。
 体なんていつでも見られる。ブロマイドを後生大事にもっておく必要はない。

 さて、これで一件落着。
 早めに休んで、明日に備えよう。

 明日はAランクの依頼だ。
 それをこなせばサヤカはSランクになる。
 そしたら家を買える――ついでにサイレンさんの依頼も受けられる。

 そろそろ寝てしまおうか?

「あっ……」
「どうしたサヤカ」
「その……ハードさんの隣にカメラ小僧が」
「なに!?」

 パッと横を向いた。
 サヤカの言うとおり、そこにさっきのカメラ小僧がいた。

 一つ目が血走ってて、こめかみに青筋を浮かべている。
 そしてスケッチノートはおれが描かれてる。

「おまえ! 何をするつもりだ」

 手を出して、ノートを払おうとした。
 カメラ小僧は避けもしなかった、手が空を切った。

「くっ! 書き上がるまではさわれないんだった」

 カメラ小僧がニヤリと笑ったような気がした。

「このやろ……サヤカ」
「は、はい!」
「スタンバってろ、こいつが描き上げた瞬間捕まえろ」
「わかりました」

 サヤカがおれの横に来た、そのまま命令通りスタンバった。
 いつでも動けるようにスタンバった。

 カメラ小僧がおれを書き続けた。
 くっ、気持ち悪い。こいつに書かれるあいだって凝視されるから気持ち悪いんだ。

 あの一つ目で凝視されるのは……うがあああああ!
 ええい! さっさと描き上げろこの野郎!

「ハードさんだ……」

 サヤカはスケッチノートをのぞき込んだままつぶやく。
 なぜか顔を赤らめたが、理由を考えてる余裕はなかった。

 今のおれはカメラ小僧が気持ち悪くて、こいつを捕まえて折檻する事だけ。

 やがて、カメラ小僧が書き上がって実体化した。
 そのまま逃げ出した!

「サヤカ! 追え!」
「はい!」

 サヤカはカメラ小僧を追いかけて部屋の外に飛び出していった。
 おれも後を追った、ロビーまでやってくると、サヤカが外から戻ってくるのが見えた。

 サヤカはカメラ小僧を捕まえてた、首根っこを捕まえてた。

「こいつめ、よくもおれを狙ったな」

 カメラ小僧の目玉をベタベタ触った。
 こいつらは見たとおりのものをかくから、目玉をベタベタやられて汚されるのを何よりも嫌がる。

 案の定おれにやられてじたばたしたが、やめるはずもない。
 そのままベタベタ触って、目玉をおれの手垢まみれにして、指紋だらけにしてやってから、解放した。

「そういえば、おれの絵は?」
「も、燃やしました」

 サヤカがそう言った。
 そうか、燃やしたならいい。

 あんなものをいつまでも残してはおけないからな。
 明日も早い、そして重要な一日だ。

 おれはきびすを返して、部屋に戻ろうとした。
 サヤカがついてきてないことに気づいた。

 彼女はロビーに立ったまま、何故か胸を押さえている。
 すごく大事そうなものを抱えているような仕草だ。

「どうしたサヤカ」
「え? いえなんでもありません!」

「胸がどうかしたのか?」
「胸はないです!」

 いやそんな悲しい主張しなくても。
 ちゃんとちょっとだけあるぞ、水着姿で見たから知ってる。
 ちょっとだけだけど。

 そんなサヤカはなんかあたふたしている。

「本当になんでもないんだな?」
「はい! なんでもないです!」

 サヤカがそう言うのなら信じよう。
 おれはきびすを返して、部屋に戻ろうとした。

「ハードさんのブロマイド……宝物にしよ」

 後ろからついてくるサヤカがいつも通りブツブツなんか言ってた。
 いつも通りなら別にいっか、っておれは思ったのだった。

     ☆

 翌日、ギルド『ラブ&ヘイト』。
 さやかと一緒にやってきた。

 入った瞬間、ぎょっとして立ち止まってしまう。
 そこに彼女がいた。
 幼なじみの彼女、おれを振ってさんざんバカにしてきた彼女。

 彼女は男と一緒に掲示板の前にいた。
 Eランクの掲示板の前に。

「あと二回依頼をこなせばDランクだね。今日もがんばろう!」
「みてろ、今日は昨日のように失敗はしないぜ?」
「期待してる。また失敗したら許さないんだからね」

 彼女は相変わらず強気で――ワガママだ。

 しかし……Dになるって事は、Eランクなのか?
 しかも昨日失敗したって……

 彼女と男をみた。確か名前はアイホーンっていったっけ。
 おれを捨ててあの男に走ったのか。

 ……。

 怒りがふつふつとわき上がる。
 彼女に仕返し……復讐するためのセリフを考えながら、ゆっくり近づいていく。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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