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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第五章

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51.金では買えないもの

 プリブの街、ギルド『ラブ&ヘイト』。
 ゆにコーン退治を完了した俺は、サヤカとルナを連れて報告に戻ってきた。

「話は聞いた、やるじゃない。ゆにコーン退治で建物も依頼主の娘さんも無傷なのはほとんどないことよ」
「ハードさんからちょっと聞いてたけど、そんなに大変なモンスターだったんですね」

 サヤカがサイレンさんに聞く。

「大変も大変。でも今言ったのはまだ大変なうちに入らないの。ゆにコーンが破れかぶれになっちゃうとね……」
「な、なっちゃうと……?」

 ごくり、と生唾をのむサヤカ。

「その場にいる女の子を全員女の子しか愛せない体にしてしまうの」
「……えええええ!?」
「女の子しか愛せないって。ルナ、さやっちと恋人になっちゃうって事」

 サヤカだけじゃなく、ルナも驚いていた。
 そういえばそんなケースも聞いたっけ。
 ますますサヤカが発明した処女厨と言う言葉がびったりだと思った。
 純潔の守護者という別名をもつゆにコーン、同性しか好きになれないのなら純潔は自然と守られる事になる。

「よ、よかった……そんな事にならなくて」
「うん、そうなったら大変だもんね」
「奴隷百合でも俺は大好きさ――ゲフッ」
「妄想で口説かないの♪」

 カウンターの向こうにいる旦那さん(?)をサイレンさんは思い切り折檻した。
 鮮血が飛びかう凄絶な修羅場だが、もうすっかり見慣れてしまった光景。

「私はやっぱり男の人がいいです……」
「ルナも」

 サヤカもルナも、血の制裁をまったく気にも留めていなかった。

     ☆

 二人でよりたいところがある。
 そう話したサヤカとルナと別れて、俺は一人で帰宅した。
 別れる直前にみたサヤカとルナはすごく仲がよくて、もしかして既にゆにコーンの呪いを受けている? なんて想像をついついしてしまった。

 そんな馬鹿げた想像しつつ、まだローンが残っている我が家に帰ってきた。

「ただいま――うおおお!」

 家のドアをあけた瞬間ものすごくびっくりした。
 玄関がピカピカに磨かれている。
 いや玄関だけじゃない、玄関から続く廊下や階段、ちらっと見えるリビングもものすごくピカピカだった。

 一体何が――って思っていると。

「お、お帰りなさい……」

 奥からおずおずとフィーユが出てきた。

「ど、どうしたんだこれは?」
「どうしたって……掃除の事かい?」
「え? 掃除?」
「そうさ。というかあたいを奴隷にしたのは家事をさせるつもりだったんだろ?」

 フィーユはきょとんとした顔で俺を見た。
 いやそうだけど、メイドが欲しいなとみんなで言ってたらフィーユに運命を感じて、チートも家を守るためのものになったからそうなんだけど。

 そうなんだけど、そうじゃなくて。

「なんだい、何か不満かい」
「不満……」

 つぶやき、家の中を改めて見た。
 ピカピカに磨かれた、新築以上に新築な綺麗な家。
 不満なんで、あるはずがない。

 最初に見た時の驚きはすっかり落ち着き、俺は改めてフィーユをまっすぐ見て。

「ありがとうフィーユ。すごいよ」
「べ、別にたいしたことないさ。奴隷になったからにはちゃんと仕事をするだけさ」

 フィーユは何故か顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまった。

「と、ところで……」
「うん?」
「お、おかえり……」
「うん、ただいま」

 そういえば言ってなかったかな?
 そう思って改めてただいまって言ったけど。

「……お、お、お帰り! お、お――」

 ただいまって言ったのにまたお帰りといってくるフィーユ。
 さっき以上に顔が真っ赤になって、必死に何かを言おうとしてる。

「お、お風呂ですか! ご飯ですか! そ、そそそそそれともあたいですか!」
「……おお!」

 ポン、と思わず手を叩いた。
 ものすごく顔が真っ赤なフィーユ、今のが恥ずかしくて言い出せなかったみたいだ。

 それがすごく可愛くて、もう一度フィーユの口から聞きたかった。

「フィーユ、今のを――」
「失礼」

 突然背後から男の声が聞こえてきた。
 びっくりして振り向くと、メガネを掛けたお堅い感じの、中年の知らない男がドアの向こうに立っていた。

 何者だ? って思っていると。

「ロジック……」

 つぶやくフィーユ。
 どうやら、彼女の知りあいらしかった。

     ☆

「ロジック・イクエイションと申します」

 リビングの中、向かい合った男はそう名乗った。
 俺とロジックは向き合って座り、奴隷のフィーユは俺の背後に立っていた。

 ロジックはそのフィーユを見て困った様な顔をした。
 ちなみにロジックの背後にも二人の男が立っている。
 こっちは黒服のものすごくマッチョ、ボディガードって所か。

「ロジックさん……は俺に何の用だ?」
「今日は取引をするために来ました」
「取引?」
「そう、そこにいるフィーユの件で」
「……どういう事だ?」

 何となくいやな予感がして、身構えつつ聞き返した。

「単刀直入にいいます、ギルド連合にとって彼女は欠かせない人物です。どうか返して……解放して欲しい」

 やっぱりそうか。

 フィーユは元々ギルド連合の人間だった。
 それを俺が古の作法に則って、予告状を出してさらって、奴隷にしたのだ。
 それを返して欲しいと言ってきてるのだ。

「断る、フィーユはもう俺の奴隷だ」
「もちろんただとは言いません」

 ロジックは手をあげた、すると背後にいた二人の男がそれぞれ大きな箱を取り出してテーブルの上においた。
 置かれた瞬間テーブルが「ミシッ」と音を立てた。どうやら箱の中身、ものすごく重いみたいだ。

 箱が開かれて中身が見えた。
 金貨が……普段ほとんど見られないモホ金貨がぎっしり詰め込まれている。

「こ、これは?」
「これで彼女を解放して頂きたい」
「え?」
「あなたは古の作法にのっとって彼女をうばった、であればこちらも正攻法でいくほかありません。そのやり方で奴隷にした者は何人たりとも奪うことは出来ないが、交渉して持ち主から買い取る事は出来る。違いますか?」
「……ああ」

 頷くおれ。その通りだ。
 奴隷に関する事は世界で俺が一番詳しい。もし同じ状況になって俺がアドバイスを求められたら、間違いなく金で買い戻せって助言するだろう。
 だから、ロジックの言いたい事は分かった。

「相応の金額を用意しました。お聞きしたところまだここのローンがあるとか。この家が十軒かえる程度の額を用意しました」

 ロジックは身を乗り出し、俺に迫った。

「どうか、これで」

 話は分かった、そして向こうの本気度も。
 フィーユはよほど、ギルド側にとって重要な人なんだろう。

 だが。

「断る」
「――なっ!」

 まさか断られるとは思っていなかったロジック、瞠目して固まってしまった。

「話がそれだけか?」
「え? いえ、分かってるのですか? この額は――」
「どうやら話はそれだけみたいだな。フィーユ」
「え? あ、うん」
「お客さんはお帰りだ、玄関まで案内しろ」
「わ、わかった……」

 ロジックはまだ何か言いたげだったが、その話を聞く必要は俺にはなかった。

 この話の先にある展開はわかり切ってる。
 金を更に積み上げるか、脅してくるか。
 どっちにしろ俺からフィーユを買い取る、それだけの話だ。

 そしてそれを俺は決して受け入れない。

「あ、あの……ご主人?」

 ロジックとボディガードを外に放りだしたフィーユが戻ってきた。

「本当によかったのかい? あの額は人間一人分にしては破格だよ?」
「一度手にいれた奴隷を、金に目をくらんで売り渡すのはご主人様失格だ。それに」
「それに?」
「フィーユがいいから奴隷にしたんだ、金なんかでは売らない」
「――っ!」

 フィーユは真っ赤になって、顔を背けてしまった。

「こ、こんなのずるいよ……」

 背けたままサヤカのように何かをぶつぶつつぶやいたが、好きな様にさせた。
 誰がなんといおうと、例えフィーユ本人であろうと。

 彼女は手放さない、だから何も気にする必要はない。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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