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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第四章

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44.罠

「う……ん」

 家のリビング。タイラー・ボーンに増築してもらって広くなったリビングの中央に寝かせていたフィーユがゆっくりめを開けた。
 仰向けに寝かされ、焦点の合わない目が左に右にと静かに揺れる。

「気がついたな」
「本当ですか?」
「意外と長く気を失っちゃってたね」
「ごめん、時間を止めてるときの手加減ってあんまり慣れてなくて」
「次から……気をつける」

 俺の一言に呼ばれたかのように、サヤカ、コハク、ルナ、イノリの四人が一斉によってくる。

「ここ……は?」
「俺の家だ」
「あんたの……はっ!」

 急速に目の焦点が合って、覚醒するフィーユ。
 パッと体を起こして、ずざざざと壁際まで後ずさる。

「あんた……ハード・クワーティー?」
「覚えててくれたか」
「あたいをさらったのあんたなのか?」
「そうだ」
「そう……」

 フィーユは俺を見て、四人の奴隷を見た。
 最初は眉間にしわを寄せていたけど、四人の「奴隷」を見て次第に納得した様な表情になっていった。

「四人じゃたりないっていうの?」
「理解がはやいね」

 コハクがいつもの様にフランクな口調でいった。

「バカにするんじゃない、あんな予告状を出して、その上四人も奴隷が目の前にいたらいやでも分かる」
「それでも『なんで?』から入る子が多いけどね」
「うかつだったわ。予告状が届いた段階であんたの事を思い出すべきだった。時刻前に先手を打っておけば……」
「先手を打てればよかったの?」

 サヤカが不思議そうに小首を傾げる。
 ところどころ常識が欠如している彼女、いにしえのこのやり方自体知らなかったみたいだから、今の疑問もうなずける。
 俺は彼女に説明し、答えた。

「予告状を出したらその予告時刻通りさらわなきゃいけないんだ。早くても遅くてもだめ。正体がばれて先に攻撃されても、反撃してそのままさらう、って訳にはいかないのさ」
「ご主人様と奴隷の伝統だからね」

 コハクが補足してくれた。

「大変なんだね」
「そうでもないさ、こうしてさらえたんだから」

 フィーユを再び見た。
 彼女は相変わらず眉間に深い縦皺を刻んだまま、下唇をかみしめてうつむいていた。

「知ってると思うけど、俺は予告を出して、予告通りさらった。だから――」
「どうしてあたいなの?」

 フィーユの質問に一瞬虚を突かれたが、答えはとっくに持ってるのでそのまま答えた。

「ほしいからだ」
「理由になってない」
「運命を感じたから」
「うっ――」

 フィーユは顔を赤くした。

「家を守る――いや家を任せる奴隷がほしかった。そう思ってたらあんたを見かけて、この人だ、って思った」
「理由になってない!」
「分からないのも仕方ないです」
「それもすぐに終わるけどね」
「うん、奴隷になっちゃったら分かるよね」
運命(であい)だから」

 奴隷達がたたみかけるようにいう。経験者としての言葉だ。

「というわけだから」
「まって、あたいは――」

 フィーユは何か訴えかけようとしたが、無視する。

 みんなの説明は今は分からないかも知れないけど、奴隷になったらそれは自然と解消されるもの。
 そして何より、俺は予告を出して、そしてフィーユを予告通りさらってきた。
 そうやっていにしえの作法に沿って逆らってきた相手をきちんと奴隷にしないのはご主人様失格だ。
 甲斐性が無い、と見なされる。

 当然それは避ける、あり得ない。
 俺は用意していた指輪を取り出して、それを持ってフィーユに迫る。

「まっ――」
「待たない

 一瞬でフィーユを壁際に追い詰めて、手を取って指輪をはめた。

「あぁ……――っ!」

 はめられた瞬間絶望する表情をしたのだが、直後にかっと目を見開かせた。

「来ましたね」
「どんな『ちーと』になるのかな」

 奴隷達と一緒に、わくわくしながらフィーユを見つめる。
 彼女が戻って(、、、)くるのをじっと待った。

 しばらくして……フィーユの表情が徐々に落ち着きを取り戻した。

「こういうことなの……でもどういう事なのこれ?」
「『ちーと』はどんなのになったんだ?」
「ちーと、っていうんだ」

 頷くおれ、フィーユを見つめて先を促す。
 フィーユはしばらく俺を見つめてから、静かな口調でいった。

「そこの……そのテーブルを殴ってみて」
「こうか――いてっ」
「うっ……」

 言われた通り無造作にテーブルを殴ると頭が殴られたように痛みが走った。同時にフィーユも小さく呻いた。

「え? どういう事なんですか?」
「反射と身替わりだよ」
「反射と身替わり?」
「あたいが指定した相手にした攻撃をそのままかえすのと、その分のダメージをあたいが引き受けるの両方だよ」
「やっぱり運命だね、家を守るのにぴったりな『ちーと』じゃん」

 コハクは楽しそうにいった、一方のフィーユはまだ複雑そうだ。

 『ちーと』の事はわかったが、だからと言って納得しきってない、そんな顔だ。
 だが納得してもらうしかない……いや俺がそうしなきゃだめだ。

 そこは紛れも無く、「ご主人様の甲斐性」が試される所だからな。

「フィーユ、最初のめ――」
「うっ!」

 フィーユはいきなり手を押さえてうずくまった。
 微かに見える額から一瞬で脂汗が浮き出ていて、顔はとても苦しそうだ。

「どうしたフィーユ!」
「な、に……これ……」
「フィーユ!」
「は……な……」
「え?」
「離れ、て……」

 苦悶に顔をゆがめるフィーユ、最後の力を振り絞って、とばかりに俺を突き飛ばした。

 何が起きたのか――と理解する暇もなく事態が急変した。
 フィーユの懐から光が漏れ出す。その光はまずフィーユの全身を包んで、それから指輪に集中した。

 奴隷の証である指輪、光がそれをとりつき、形を変える。
 指から移動する、手首に移動して形を変える。

 ブレスレット。


 どこかで見たようなブレスレットに変わった。

『獲得』

 そして、どこかで聞いたような声と共に。
 フィーユの胸から、半透明の、人の魂の様な感じの男の顔が浮き上がってきたのだった。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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