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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第四章

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42.怪盗ハード

 フィーユは頭を抱えて、頭下尻上なポーズでガタガタ震えていた。

「……」
「神様助けてもう悪いことは二度としないから」
「……」
「炊き出しに参加してこっそり栄養剤混ぜ込むのも孤児を引き取ってスパルタなエリート教育を押しつけたりするのもクレーマーに遅効性の毒を仕込んで巣に戻った後にまるごと全滅させたりするのも二度としないから」
「……」

 いやそれはいいことばっかりなんじゃないのか?
 冥土に怯えてなにやら神様に懺悔を繰り返しているフィーユだけど、どれもこれも良いことばかりに聞こえる。

「お願い神様助けてください」
「……」
「……」
「……」
「……ゴホン」

 フィーユが我に返って、立ち上がって咳払いした。
 冥土はサヤカに一掃されて、この場からモンスターがいなくなった。
 そのせいか、フィーユはさっきまでのフィーユに戻った。

「別にモンスターが怖いってわけじゃねえ」
「いや何もいってないけど」
「本当だぞ、本当だかんな。ブラックドラゴンもケルベロスも怖くねえしオークにつかまっても絶対に負けねえ」

 一気にまくし立てるフィーユ。

「そうか」
「本当だかんな――」
「ぐおおおお!」

 反対側から更に一体の冥土が現われた。
 服の裾がビリビリする咆吼に、フィーユがまたしても頭下尻上なポーズで頭を抱えて震えだした。

 冥土はサヤカが瞬殺した、危険はまったく無い。
 それでもフィーユは震える。

「も、もういないか?」
「ああ」
「大丈夫ですよ」

 戻ってきたサヤカがフィーユの顔をのぞき込む。
 また出たら私がやっつけますから。

「う、うん。頼むな……?」

 涙目のフィーユ。その姿を見て、俺は庇護欲を掻きたてられた。

「冥土が怖いのか?」

 できるだけ優しげに、そして真面目な顔で聞く。
 また意地を張ろうとしたフィーユだが、俺の顔をみて、観念したように言いだした。

「冥土だけじゃねえんだ、ああいうモンスターが苦手なんだよ」
「ああいう?」
ああいう(、、、、)のだ」

 フィーユはチラチラと、おそるおそるうかがうような視線を倒された冥土に向けた。

「冥土とか、クレーマーとか、ケルベロチューとか。ああいうふざけた連中のことだ。エンシェントモンスターとかなら全然こわくねえんだが」
「そういうもんなのか――」
「わかります!」

 横からサヤカが身を乗り出して、ものすごい勢いでフィーユの手を取った。

「ああいうモンスターっておかしいですよね!絶対悪意がありますよね創造者の」
「わかるか! 悪意あるよな!」
「はい!」

 二人して盛り上がるサヤカとフィーユ。
 事故物件がおかしいだの、クレーマーがひねりすぎだの、冥土が悪ふざけしすぎだの。
 そんなことで盛り上がっていた。

「エンシェントモンスターの方が素直ですよね」
「だろ? だろぉ!?」

 普通のモンスターがいやでエンシェントモンスターの方がいいって感覚は俺にはまったく分からなかったが。
 サヤカとフィーユが仲よさそうにしているのは、将来的にもいいことなのだと思ったのだった。

     ☆

 プリブの街、ギルドラブ&ヘイト。
 フィーユを護衛して戻ってきた俺たち。
 道中他のモンスターがでることなく、無事にフィーユを連れて帰ってきた。
 ギルドの中に入るとまわりがざわざわした。
 事情をしってる冒険者達が救出されたフィーユを見てざわざわしていた。

「ただいま戻りましたサイレンさん」
「ハード! それにスーパーソニックさん」

 出迎えたサイレンさんは驚き、そして安堵と表情を変えていった。
 フィーユの呼び方が名字とさん付けなあたり、いろんな責任やらそこにくっついてる安堵やらが見えてきそうな感じだった。

「すまねえ、迷惑かけちまったか」
「そんなことありません。スーパーソニックさんが無事ならよかった」
「あたいの捜索に何人動員したんだ?」
「そこにいるハードだけです」
「あいつらだけ?」

 フィーユは驚いた顔で俺の方を見た。

「あたいが言うのもなんだけど、こういう時百人くらいまとめてださねえか?」
「彼なら大丈夫だと思ってましたから」
「へえ……?」

 今度は興味深そうな目でじろじろ見られた。

「まあいい。ハードビート、宿を用意してくれ、今日はこの街に泊まって行く」
「わかりました」
「俺の腕の中でお休みなさ――」
「シャレにならない人をくどかない、の♪」

 カウンターの向こうからフィーユを口説こうとするサイレンの旦那さん(?)はきっちり折檻され、まわりに爆笑を提供した。

「ありがとうねハード。お礼は今度ちゃんとするから」
「わかった」

 サイレンさんにそう言って、サヤカを連れて、イノリの台車を押してギルドを出た。
 いったん家に戻ろうとする帰り道、サヤカが眉をひそめて口を開く。

「すごい人なんですね。私たちがダメなときは百人だったり、サイレンさんが敬語を使ってたり」
「そうみたいだな」
「でもさらうんですよね」
「ああ」

 俺ははっきり頷いた。
 一目見てピーンと来た相手だ、何が何でもさらって奴隷にしたい。

「どうしたら良いですか? 私何をすればいいですか?」
「ノリノリだなサヤカ」
「だって、フィーユさんとすごく気が合いましたもん。早く仲間になりないなって」
「なるほど」

 二人はモンスター談義で花をさかせて意気投合してたし、のりのりになるのも分かる。

「やっぱりギルドに救援の依頼を出させないように動くべきですよね。となると誰知れずさらったほうがいいか――そうだ、イノリちゃんの歌で、混乱させて自分から来てくれるように見せかけるのはどうですか?」

 本当にノリノリなサヤカである、普段はそんなに強く主張するタイプじゃないんだが、ものすごいノリノリでやり方を考えていた。

「いや、そういうのは必要無い」
「え? どうしてですか?」
「奴隷を持つ一番古いやり方、相手をさらってくる場合、いにしえの作法に則ってやれば大事にはならない」
「いにしえの作法ですか? それはどういうものなんですか?」
「それは――」

     ☆

 ギルド、ラブ&ヘイトの中。
 救い出されたフィーユはテーブルに頬杖を突いて考えていた。

「やっぱり……モンスターの数が増えてる」

 テーブルの上にいくつかの書類があって、そこに様々な数字が記されている。
 ここ最近モンスターの数が増えてるって事を示す書類だ。

 フィーユは完全に数字を信用しない、信じないのではなく、完全に信じない。
 数字と体感、両方合わせたものだけを信じる。

 馬車を冥土に襲われた彼女はここでようやく、モンスター増を真実と受け入れていた。

「それもこれも……これのせいなのか?」

 書類をめくるフィーユ、そこにブレスレットの事が記されていた。
 ロック・ネクサス事件に始まって、最近におきた様々な事件に見るようになったブレスレット。

「もうちょっと詳しく調べる必要がありそうだな。出来れば本物をみてえ」

 つぶやき、更に書類をめくるフィーユ。
 彼女の目が光る、書類に記された事件解決者の名前を見たからだ。

「これも、こっちにも……」

 更に書類をめくると同じ名前があった。
 ハード・クワーティー。事件の中心にいて解決に強く貢献した男の名前。

 ついさっき、自分を助けた男の名前。
 この男の事をもっと知りたい。
 フィーユはそう思った。

 ドスッ!

 書類の横、テーブルの上。
 どこからか飛んできた一枚のカードが刺さった。
 フィーユはカードを抜いて、目を通す。

「今宵、月が真上に達したときにその身と心を頂きに参上します――奴隷さらい!?」

 驚愕するフィーユ。
 それはすっかりされなくなったやり方、相手をさらって無理矢理奴隷に堕とすためのやり方。

 予告状をもって知らせ、その後予告通りにさらえば合法的(、、、)に奴隷に出来るといういにしえの作法だ。

「誰か! 誰かいるか!?」

 フィーユは慌てた、こんな時に奴隷になんてなるわけにはいかない。
 彼女はサイレンを呼び、カードを見せて護衛を要請した。

 サイレンは早速冒険者を集め、彼女まわりを固めた。

 しかし、その夜。
 大勢の冒険者の目の前で、フィーユは忽然と姿を消し、まんまとさらわれてしまうのだった。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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