挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第四章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

41/52

41.フィーユ・スーパーソニック

 馬車の中で気絶している相手を改めてよく見た。
 スーツを着た若い女だ、髪は短く切りそろえられてて、体型はすらりとしてて、短いスカートから伸びている引き締まった足は活力とエネルギッシュさを感じさせる。

 そして、俺はピーンと来ている。
 見た目の全てを吹っ飛ばすような直感、この人が奴隷になったら絶対……という直感。
 彼女を奴隷にしたい、改めて決意を固めた。

「これからどうしますかハードさん。このままさらっちゃいます?」
「いや」

 サヤカの提案を即答で却下する。

「いったんプリブに連れて帰って、サイレンさんに報告する」
「どうしてですか? この人を奴隷にするんじゃないんですか?」
「さらって奴隷にするんなら作法を守らないとだめなんだ」
「作法?」

 首を思いっきりかしげたサヤカ。

「そうだ、作法だ」
「よく分からないですけど……ハードさんらしいのは分かりました」
「ご主人様、マニア」

 サヤカが納得して、イノリがぼそっとつぶやく。
 そのサヤカも納得したところで、この人をプリブまで護送するか。

 馬車を動かそうとすると、それまで気を失っていた女がうめき声を上げて、ゆっくりまぶたを開いた。
 焦点の定まらないまぶたはしばらくの間さまよったが、やがて俺たちをきっちりと見つめて来るようになった。

「お前達……何もんだ」
「ギルドラブ&ヘイトに所属してる冒険者です」

 サヤカが自分のギルドカードを取り出して正体を明かした。
 Sランク冒険者だと明記してるギルドカード。いままで何回かこういうのが必要な場面があって、Sランクの冒険者だって名乗った方が話が早いと経験してきたから、サヤカはご主人様の俺(Fランク)を差し置いて名乗った。

「ラブ&ヘイト? あぁ、そういや救援飛ばしてたっけ」

 ハスキーな声にはすっぱな口調。
 パリッとしたスーツを着こなしている執政官のイメージから若干外れたものだ。
 サヤカも同じ事を思ったのか、ちょっと困った顔で俺をちらっと見た。

「えっと、大丈夫ですか? どこかにおけがは?」
「うーん、大丈夫みたいだ。うん、どこもケガしてない」
「よかったです」
「それじゃああたいをいったんプリブまでつれてってくれ。えっと、あんたの名前は?」
「ハード・クワーティだ」
「ハードか。あたいはフィーユ・スーパーソニックだ。ひょろっちくて頼りないけどちゃんと頼むよ」
「ひょろっちいのは余計だ」

 確かに見た目そんなにごついとかじゃないけど、そこまで言われるようなものでもないだろ。

「それじゃあ戻ろう。サヤカ、イノリ。帰り道も頼む」
「うん! 任せて」
「それ、よりも」
「どうしたイノリ」
「なんで、こっちに頼んだの?」

 いつも通り茫漠な瞳のまま指摘するイノリ。
 感情の揺れがあまりにもフラットすぎるから、一瞬何を言ったのか分からなかった。

「……なんで、サヤカじゃない?」
「……あ」

 俺もようやく気づいた。
 フィーユはサヤカにじゃなくて、俺に言ってきた。
 ギルドカードを見せて、Sランク冒険者だと名乗ったさやかじゃなくて、名乗ってもいない俺にだ。

 なぜ? って思ってフィーユを見ると。

「そんなの見りゃわかんだろ」

 けろっとした顔で言われた。

「短いやりとりの中でもその二人はあんたの事を見てた、何かあるとあんたの方をな。視線の流れで集団のボスが分かるもんさ」
「すごいな……」

 交わした言葉は一言か二言、時間にすれば三分もなかったはずだ。
 そのわずかな間で分かったっていうのか。

「リーダーがどう見ても頼りねえけど、その二人が信用してるみたいだから信用する事にした」
「だから頼りないのは余計だって」

 あけすけなフィーユの言葉に苦笑いを禁じ得なかった。
 馬車を動かしてプリブの街に引き返すが。

「ハードさん」
「ん、どうした」
「本当にするんですか?」

 押し殺した声でささやいて、馬車をちらっとみるサヤカ。
 顔はいかにも不機嫌そうにしてて、それがフィーユに向けられているのがはっきりと分かった。

 俺の事を悪くいうあいつは嫌い、ってことなのかな。

「いやか?」
「……」

 サヤカははいともいいえとも言わなかった、唇を尖らせて拗ね顔をするだけで何もいわない。

 うーん、どうしたものか。
 正直彼女にしたい。見た瞬間ピーンときて、絶対にいい奴隷になるって確信したけど、サヤカが嫌がるのなら考え直さないといけないのかもな。

「なあ」

 迷っていると、フィーユに声をかけられた。

「どうした」
「あんたハードって言ったな、もしかしてエルーガとプルルージュの事件を解決したあのハードか?」
「そうだけど」
「へえ……」

 フィーユはまじまじと俺を見た。
 どうしたんだろうかって思っていたら、彼女は馬車から跳び降りた。
 馬車を空にして、わざわざ俺の隣に並んで歩いた。

「なあ、それらの事件をどう思う?」
「どう思うって」
「とぼけんなよ、それの裏にいる連中がまた現われるって思うか、って聞いてるんだ」
「それは……」

 俺は少し考えた。
 エルーガとプルルージュ、二つの事件に共通しているのがあの不思議な腕輪だ。
 何か裏がある、二つの事件は繋がってるってはっきりと分かる。

 そして、完全解決したとは思ってない。
 また現われるのか、っていう質問なら。

「多分だけど、また――」
「ハードさん!」

 答えようとした瞬間、サヤカが緊迫した声で俺を呼んだ。
 馬がいななき、前足をあげてバタバタして、馬車が止まる。

 何事かとみると、進む先に冥土がいた。
 メイド服を着たゴーレムのモンスター、冥土だ。

 それが5体、結構な数だ。
 そのうちの一体が天を仰いで咆哮し、もう一体がメイド服姿で四股を踏んで大地を揺るがした。
 でも。

「サヤカ、任せる」
「うん!」

 さっき戦った時もそうだが、冥土はパワーだけのモンスターだ。そしてサヤカは相手の十倍のパワーになる『ちーと』を持ってる。
 万に一つも負ける事はない相手だ。

 俺に任されたサヤカは嬉しそうな顔をして飛び出していった。
 冥土の一体が放ってきたパンチを掴んで握り潰し、別の冥土が揺らした大地を同じく四股を踏んで揺れを止めた。
 五体の冥土をそれより遥かに上回るパワーで砕いていく、まるっきり勝負にならない、安心して見ていられた。

 そうだ、話の途中だった。

「悪い、あの連中だけど――え?」

 フィーユの方を向いて話を続けようとした俺は目を疑った。
 馬車から跳び降りたはずのフィーユはそこにはいなく、馬車に戻っていた。

 まるで雷から逃げて布団に潜り込むかのように馬車に潜り込んで震えている。
 突き出したスーツのお尻が色っぽかったが、震えていてそれどころじゃない。

「フィーユ?」
「な、何でも無い! 何でも無いぞ」
「いやなんでもないって言われても」

 尻を隠さず――な状態のまま強がるフィーユ、何もなくないのはあきらかだ。

「ぐおおおお!」
「ひゃん!」

 冥土が更に咆哮して、フィーユは小さく悲鳴を上げる。
 モンスターが怖い、のか?

 サヤカが冥土を圧倒する中、俺はフィーユが見せた意外な一面に戸惑っていた。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
7ysy7eb3mlnm36qb0th9jyha9ke_php_nf_xc_9d
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ