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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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04.FランクとCランク

 『翼の記憶』って名前の宿屋に来た。
 中に入って、店の人がでてきた。

「ひぃ!」

 サヤカは声をあげて怯えて、おれにしがみついた。
 おれもちょっとだけちびりそうになった。

 出てきた店の人は男の人で、パッと見ていくつなのか分からない。
 なぜ分からないのかというと、顔中――体中もだけど――傷だらけだ。

 片目がつぶれて、でっかい傷跡があって。
 耳もかけてて、鼻もつぶれてる。
 露出した腕も傷だらけ。

 普通の人間なら十回は死んでるんじゃないか、ってくらい体中傷だらけでみてて怖かった。

「いらっしゃい、お客さん二人?」

 意外な事にものすごく優しい声だった!
 傷だらけの男なのに、田舎のおばあちゃんみたいな優しげな音色だった!

「う、うん。二人……だけど」
「怖がらなくても大丈夫。これは若い頃ヤンチャした時の名残だから。今はもうすっぱり足洗ったから」
「ヤンチャって……何したんだろ……」

 つぶやくサヤカ、しがみついてるからこれは聞こえた。
 同感だ、一体どんなヤンチャをしたらそんな傷だらけになるんだ。
 というか普通死んでるよなそんなにきずだらけなら。

「あの頃は不可()のアンブレって呼ばれてた。今となっては何もかも懐かしいけど」

 なんかいきなり昔を懐かしみだした店の人。
 独り言からしてアンブレって名前らしい。

 このまま付き合ってると名前だけじゃなくていろんな――余計な情報をゲットしてしまいかねないから、さっさと本題を切り出した。

「部屋を二つたのんます」
「おっと、ごめんごめん、お客さんに変なことを言っちゃったね。二つね。別々でいいの?」

「ああ」
「いいんですか?」

 なぜかサヤカが驚いてる。

「ああ」
「本当……に?」

 もう一回頷いた。
 なんでそんなに念押しで聞くんだ?
 金の心配……なのか?

「一人部屋……わたしにも一人部屋……夢の一人部屋」

 まーたブツブツ言ってる。
 かと、思いきや。

 おれをちらっと見て赤面した。
 なんなんだろ。

「あの! ハードさんと同じ部屋じゃダメですか?」
「おれと?」
「はい!」

 上目遣いで、ものすごい勢いで見つめてくる。
 というかせがんでくる、そんなに同じ部屋がいいのか。

 うーん、奴隷がご主人様と同じ部屋とか普通はあり得ないけど……まいっか。
 サヤカは『ちーと』使いで強いし……アンブレがなんかしてきた時に守ってくれるしな。

「わかった。じゃあ一部屋でたのんます」

 アンブレに言って、一部屋にかえてもらった。
 そのまま部屋に案内してもらう。

 今日こなした依頼で得た報酬を提示して、その中で一番いい部屋って言った。
 案内されたのは結構いい部屋だった。

 大通りに面してて、大きな窓があって、ベッドもふかふかそうだ。
 じゃあごゆっくり、といってアンブレが出て行った。

 部屋におれとサヤカが残った。

「今日はお疲れ」
「え? う、ううん。どういたしまして……」
「よく働いてくれた」

「あの、本当にいいんですか。わたしだけその、ランク? をあげてもらって」
「それでいい。お前のをあげた方がおれもうれしい」
「うれしい、の?」
「ああ。このままSランクになってくれたらもっと嬉しい」
「うれしい……喜んでもらえる? 生まれてはじめて喜んでもらえた……」

 ぶつぶつつぶやくサヤカ。もはや恒例行事なので放っておくことにした。
 というか、つかれた。
 色々あった一日で、メチャクチャつかれた。

 明日もがんばろう。おれはそう思ってベットに潜り込んだ。

     ☆

 この人……不思議な人。
 すごく優しくて、わたしによくしてくれる人。

 わたしの事を奴隷だっていうけど、本当なのかな。
 左手の薬指の指輪。
 気がついたらこれがつけられてた。

 これって結婚指輪……って思ったけど、奴隷指輪っていわれた。
 奴隷……。

 奴隷って言われてるけど、不思議とそんなにいやじゃない。
 優しくしてくれるからかな。

 それに必要としてもらってる。

 でも、いつまで必要としてもらえるのかな。
 ようすんだらポイされちゃうのかな。

 それは……いやだな。
 優しい人、ずっとそばにいたいな。

     ☆

 コンコン。
 部屋がノックされて、目が覚めた。

 窓から朝日が差し込んでる、朝になったみたいだ。

 コンコン。
 またノックされた。

 起きようとしたが、サヤカがベッドの上でおれにしがみついてた。
 先にねたけど、あの後一緒に寝たのか。
 まあ、ベッドは一つしかないしな。

 Sランクになったらでっかい屋敷を後払いで買おう。
 やっぱり奴隷とは別の部屋じゃないと閉まらないもんな。

 気が向いたときに一緒に寝るのはいいけど、ちゃんと別部屋を用意する。
 それもご主人様の甲斐性だ。

 コンコン。
 またノック。
 サヤカの手を剥がして、起き上がってドアを開けた。

「おはよう」
「うわ!!!!!」

 心臓が口から飛び出るかと思った。
 ドアを開けたらそこに顔面凶器が――じゃなくてアンブレがいた。

「ごめんなさい、朝から変なものを見せてしまって」

 アンブレは優しかった。
 顔の凶悪さとは正反対に優しかった。
 ギャップがひどすぎる!

「それよりも、あなたにお客様よ」
「客?」

 客って誰だろ。心当たりがないんだが。
 街にきたの昨日だし、初めての宿屋だし。

 なんて、考えてても仕方ないか。
 アンブレについて、部屋をでて宿屋の入り口に来た。
 ロビーになってるそこに男がいた。

 男は若く、四五人の部下を引き連れてる。
 いい服をきてて、顔は……なんかおかしい。

 顔がって言うか、頭に木を生やしてる――何で木!?
 そういうファッションなの? 街の流行なの?

 そんな風に驚いてると、向こうが話しかけてきた。

「キミだね? 黒髪の奴隷を連れてる田舎者って」

 いきなり失礼なヤツだな。
 確かに黒髪の奴隷をつれてるけど、……田舎者かもしれないけど。
 初対面でいきなりそれを言うのは失礼だろ!

「お前は?」
「わたしの名前はどうでもいい。まあ、お忍びで来てる、って思ってくれて構わないさ」

 お忍び?
 ってこと貴族か王子様てことか?

 ……いやないない。
 こんな頭から木を生やしてる貴族とか王子とかいたら世も末だ。

「それより、黒髪の奴隷はどこかな?」
「サヤカになんの用だ?」
「単刀直入にいおう、その子を売りたまえ」
「はっ?」
「もちろんただとは言わない」

 男はパチンと指を鳴らした。
 控えてた部下が一斉に動いた。
 一旦外にでて、次々と箱を運んでくる。

 箱を綺麗に並べた後、開ける。
 中に黄金が入っていた!

「これで売ってくれたまえ」
「これで!?」
「――っ!」

 背後からガタンって音が聞こえた。
 振り向いたけど誰もいなかった、気のせいか、ネズミかかな。
 そんなことよりも目の前の黄金だ。

「これで売りたまえ。わたしはねえ、黒髪の子が大好きなんだ。聞けばただ黒髪なだけじゃなく、ものすごくつやつやで長いらしいじゃないか。ああ、黒髪ロング……つやつや……ぺろぺろしてむしゃむしゃしたい」
「――っ!」

 またガタンって音がした。今度ははっきり聞こえた。
 でも姿はやっぱり見えない。気のせいじゃないから、ネズミだな。

 と、いうか。

 変態だ――!

 黒髪をぺろぺろとかむしゃむしゃとか、むちゃくちゃ変態だ!
 こわいこわいこわい、変態過ぎてこわい。

 言ってる事も怖いし、恍惚してるあいだ頭の木もぴょこぴょこ動いてキモイ。
 キモイ、怖い。
 ヤバイヤツだからとっととお引き取りねがおう。

「ということなのだよ。キミよりも私の方がずっとあの子にふさわしい。だから売りたまえ。どこだね、私の部下が連れて行くから安心したまえ」
「売らないから帰ってくれ」
「そうかうらないに――なんだってぇぇ?」
「――!?」

 さっきからネズミがガタガタうるさいな。
 アンブレも怖いしもうこの宿屋には来ないようにしよう。

「わたしの耳がおかしくなったのかな。いまなんて?」
「売らないから帰ってくれって言ったんだ」

「……金が足りないのかな、なら――」
「ちがう。金の問題じゃない」

「どういう事なのかね?」
「一度奴隷にした子は何があっても売らない、ってだけだ。そんな事をしたらご主人様失格だ。奴隷をもつのは甲斐性、持ち続けるのも甲斐性だ」

 そうとも、絶対に売らない。
 どんな子でも、一度奴隷になった子は絶対に手放さない。
 それが男の甲斐性だ。

 変態はしつこく食い下がったけど、無視した。

     ☆

 ギルド『ラブ&ヘイト』にきた。
 今日もやっぱり血まみれのサイレンさんがおれ達を出迎えた。

「いらっしゃい――あら? その子ニコニコしてるね。なんかあったの?」
「サヤカか? 分からないけど、朝起きたらニコニコしてた」

 そう、サイレンさんの指摘通り、サヤカはすごくニコニコしてる。
 変態を追い返して、部屋に戻ったらサヤカはもう起きてて、今みたいにものすごくニコニコしてた。

 なんでそんなにニコニコしてるのか分からないけど、とにかくものすごくニコニコしてる。

 理由はわからないけど、ニコニコしてる分には可愛いからそのままにした。

「それよりも仕事いいかな」
「もちろん、今日もがんばってね! あっ、DとCの掲示板は直したから、そこから選んでね」

 サイレンさんの言うとおり、昨日のテストでぶっ壊した壁は半分くらい直ってて、DとCの掲示板が元に戻ってた。

「行きましょう! ハードさん」
「あ、ああ」

 上機嫌なサヤカに引っ張られて、Dランク用の掲示板の前にきた。
 気を取り直して、依頼を探す。

 Dランクの依頼はEランクのものよりも、パッと見てるだけでも難しそうなものばかりだった。
 中には「本当にいけるのかこれ?」って思う様なものもある。

 ちらっとサヤカをみた。
 実際になんとかするのはサヤカだから、つい視線がむいた。

「決まったんですかハードさん」
「え? いやまだだけど」
「わたしなんでもしますから、なんでも言ってくださいね」

 昨日とだいぶ違って、サヤカはやる気満々だった。
 何でこんなにやる気なのか分からないけど――まあ、やる気があるのはいいことだ。

     ☆

「クレーマーの撃退、ですか」

 街の中を歩きつつ、サヤカに説明する。

「その、クレーマーってなんですか? また変なものなのかな……」
「変なものかどうかは分からないけど、飲食店によく現われる連中だな。急にやってきて店を占拠して営業妨害をするから、飲食店をやってる人にとっては天敵だな」
「あっ、普通にクレーマーなんですね」
「おれ達は神だ、って主張するな」
「大変な方のクレーマーだ……」

 クレーマーに大変じゃないのってあるのかな?
 まいっか。

 サヤカを連れて、店にやってきた。
 クレーマーに占拠されてる店らしく、人気がなかった。

「じゃあ、入るよ。言って聞く様な相手じゃないから、実力で排除だ」
「はい!」

 ドアを開ける、中に入る。
 うわあ……うじゃうじゃいるよ、でっかいクレーマー達が。

 あいも変わらず「神」って書いてるハッピー来てるし。
 本当迷惑だ。

「だがそれもこれまでだ。やれサヤカ!」
「……」
「サヤカ?」

 何故かサヤカが固まっていた。
 かと思えば――。

「きゃあああああ! ゴキ○リきゃあああああ!」

 思いっきり悲鳴を上げた。

「来ないで来ないで来ないで!」

 だだっ子のように手を振った――直後。
 その手から爆風が飛び出して。
 店の中にわらわらしてたクレーマーが建物ごと跡形もなく吹き飛んだのだった。

     ☆

「店ごと吹っ飛ばしたのはやり過ぎだね♪」

 ギルドに戻ってきたおれ達はサイレンさんに説教を受けた。

 さやかは店を吹っ飛ばした。
 一撃でクレーマーごと店を消滅させた。

 やりすぎって言われるのも仕方ないところだ。

「ごめんな――」

 頭を下げるサヤカ、そんな彼女に手をかざして、止めた。

「ハードさん?」

 訝しむサヤカ。
 そんな彼女の前にでて、サイレンさんからかばうように立つ。

「おれの責任だ」
「え?」

 奴隷のしでかしたことはご主人様の責任。
 それが甲斐性、男の甲斐性ってもんだ。

 サヤカがびっくりして、サイレンさんはニコニコした。
 サイレンさんのニコニコは怒ってるか怒ってないかわかりつらいから、どきどきする。

 うぅ、旦那さんにするみたいに折檻されるのかな。
 こわい……でも、しょうがないか。
 ご主人様だしな!

 ビクビクしてるおれに、サイレンさんがかるくため息つきながらいった。

「まっ、一応ね。建物壊したし、一応の説教はね」
「すんません」

「といってもあの店はクレーマーが根付いちゃったから、掃除してもまたすぐにでてきたんだろうね。これが最善だったとも言えるしね」
「聞いた事がある。クレーマーは一匹みたら三匹いると思えって」

「きゃああああ! 一匹ところじゃなかったよあのでっかいゴキ○リ!?」

 ゴキ○リ? 違うクレーマーだ。
 飲食店に出没するやっかいな生き物だ。

「うん、もうあの店にはクレーマーが根付いちゃってるんだ。だから吹っ飛ばして立て直すしか根絶の方法はないんだ」
「そっか」
「だから、依頼は失敗だけど、ランクは上げてあげる」

「いいんですか?」
「根絶させて、まわりの店を結果的に守ったからね」

 そういうことか。
 ならばと言葉に甘えて、サヤカにいってギルドカードをださせた。

 これで、サヤカはDからCランクになった。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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