挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第三章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

31/52

31.あなたに……歌を

 リサはアイドル衣装を纏って、激しく歌っていた。
 観客はものすごく盛り上がっている。

 アップテンポな曲調も合わさって、盛り上がりだけでいえばさっきのイノリのライブを上回っている。

「すごい人気だな。というかリサってこんなことも出来たのか」

 なんか意外だった。
 いやもともと見た目はよかった女だ、着飾ればアイドルにも見劣りしないのは知っている。
 それに加えて歌って踊れることにおれは驚いた。

 驚いた、のだが。

「なんか、いやな歌だな」

 思わずつぶやいた。
 曲はいいんだけど、歌詞がとにかくネガティブで、攻撃的で。
 聞いててあまり気分のいいものじゃない。

「イノリはどう思う?」
「……」
「イノリ?」

 背負ってるイノリに聞いた。
 彼女はぼうっと聞いてて、おれの質問に答えない。

 聞き入ってる。気に入ってるのかもしれないな、イノリは。

 おれはしばらく、その場でリサのライブを聴いた、が。

「ハード!」

 一曲が終わって、リサはいきなりおれの名前を呼んだ。
 視線はまっすぐこっちを向いてる、釣られて観客の視線が一気にこっちをむいた。

 集まった数百人にいきなりみられて、ちょっとだけたじろいでしまった。

「な、なんだ」
「どう、あたしの歌は」
「あ、ああ……いいんじゃないのか」

 あまり好きじゃない、とは言えなくてあいまいな感じで濁した。
 それが気に入らなくて、リサはむすっとなった。
 リサがそうなると、彼女の歌を聴いていた観客も不機嫌になった。

 ある意味リサ以上に不機嫌になって、凄まじい形相でおれをにらみつけてくる。
 数百人に一斉に睨まれた。

 今度はいきなりじゃなかったけど、やっぱりたじろいでしまった。
 数百人に一斉ににらまれた事なんて今までなかったからな。

「ふん、負け惜しみいっちゃって。さっきの聞いてたわよ。その女の歌――あんたの奴隷の歌」

 リサがいう、する観衆の視線が一気にイノリにスライドする。
 おれに負ぶさって、首に回してた手にはっきりと奴隷指輪が見えるからだ。

「路上でくすぶっていた女らしい、大したことのない歌だったわ」
「……そうかい」

 これにはむかっときた。

「まっ、あんたの奴隷なんだしその程度よね。みてなさい、あたしは違う。あたしは一気に駆け上がってやるわよ」

 宣言してから、リサは観衆に語りかけた。

「みんなー。今のライブどうだったー」

 いって、マイクを向ける。
 ――サイコー!

「もっと聞きたい?」
 ――聞きたい!

「ごめんちょっと聞こえなかった。もっと聞きたい?」
 ――聞きたい!!!

 リサは観客を煽った、集まった観客たちのボルテージがグングン上がっていった。
 今のうちに立ち去ろう、そう思ってイノリを背負ったままきびすを返した、その直後。

「みんなー。あたしの歌をもっともっと聴きたい?」
 ――うおおおおお!

「あたしも歌いたい! でもだめなの……」
 ――どーしてー?

「あそこにいる男が邪魔が邪魔なの。あいつがいるとあたし歌えないの」
「え?」

 立ち去りかけた足がとまった。
 びっくりして、リサを振り返った。

 目が合った、ものすごく挑戦的で、得意げな目で見られた。

 異変に気づく。
 観衆達の様子がおかしい。

 目が血走ってて、こっちを睨んでる。
 攻撃的で――正気じゃない!

「うがあああ!」

 一人の男が襲いかかってきた。
 うなり声をあげて、おれに殴りかかってきた。

「はあっ!」

 男は横から蹴り飛ばされた。
 霧揉んですっ飛んでいき、水切り石のように地面に何度もバウンドした。

「ルナ!」

 男を蹴り飛ばしたのはルナだった。

「ルナ、こっちに!」
「うん!」

 ルナに手を伸ばした。
 危険な状況、さっさと時間停止して逃げようと思った。

「ちょっと! ルナの邪魔をしないでよ!」

 が、伸ばした手は届かなかった。
 ルナとおれのあいだに別の男が割って入った。
 ルナがそれを倒すと、今度は別の男が襲いかかった。

 次々と襲いかかる男達。
 ルナはそれをさばけるが、おれに近づいて手をつなぐ余裕はない。

 歌が聞こえた。
 リサが歌い出したのだ。

 さっきも聞いた、アップテンポでネガティブな、とにかくあおり立てる曲。

 それを聴いた観衆達のボルテージが上がった。
 いや、ボルテージがあがったなどという生やさしいものじゃなかった。

 全員が正気をなくし――狂気に支配されていた。
 それが一斉に襲ってきた。

 まずい、このままじゃ――。

 と思っていたら、耳元から歌が聞こえてきた。

 イノリだった。

 イノリは歌った。おれに背負われたまま歌った。
 リサの歌に対抗して歌った。

 こんな時に何を……と思っていたら、ルナに襲いかかった男の一人がいきなり寝てしまった。
 糸の切れた人形のように、崩れ落ちてそのまま寝息を立てた。

 それだけじゃなかった。

 別の男は目をかっと見開かせたまま動かなくなった。
 更に別の男は全身が切れて血を吹き出させて、別の男は顔色が緑になった。
 目が見えなくておろおろする男や――なんと体が徐々に石になっていく男もいた。

 どうしたんだ、一体どうしたんだ?
 ――はっ。

 横をみた。イノリが歌っている。

 おれの奴隷、歌う手のハーフであるイノリ。

 フロの歌う手の時の事を思い出した。
 あの歌を聴いてると眠くなったことがあった。

 そのハーフで、『ちーと』を持つおれの奴隷。
 これが彼女のちーとか!

「いわれた、こっちを(、、、、)を歌うと、敵がいろんな状態異常になるって」
「やっぱりそうか」

 一曲終わって、おれに説明して、また歌い出すイノリ。
 リサに操られた観衆は次々と、ばったばったと倒れていった。

「なんなのよ! なんなのよこれ! もう! むかつく!」

 ヒステリックになるリサ、彼女は更に歌った。
 さっき以上に煽動的で、激しい歌を。

 残った男達は更に豹変した。
 目が血走ってるだけじゃなく、筋肉が盛り上がって、服が破けた!

 イノリの歌は効いていた、相手に様々な状態異常を与えた。
 しかしリサの歌にかかった男達は、石化みたいな物理的に動けなくなるヤツいがい、関係なく襲いかかってきた。

 出血しても、毒にかかっても、やけどになっても。
 その状態のまま襲ってきた。

 その勢いはルナを圧倒した。
 ルナも『ちーと』持ちだ。時間停止という考えつき限り最強クラスの『ちーと』をもってる。
 だがそれはおれと手をつながなきゃ発動しない。

 なんとかして手をつながなきゃ――でも届かない。
 イノリを背負ったままじゃ近づくこともできない。
 かといってイノリをおいていくことはもっとできない(、、、、)

 どうする――ってなっていたら。

「ハードさん!」
「ご主人様! 一掃する」

 サヤカとコハク、残った奴隷が到着した。
 相手の十倍強くなるという『ちーと』を持つ二人は、あっという間に操られた男達を倒していった。

 敵を全滅させて、おれはホッとした。

「そうだ! リサは――いない?」

 さっきまでリサが立っていたところをみた、彼女はいつの間にかいなくなっていた。

「リサって、あのリサさん?」
「彼女がいたの?」

 サヤカとコハクが驚いた。
 二人が到着した時にはもういなかったって事か。

「ああ」

 おれは頷き、状況を説明した。
 リサがいて、アイドルになってて、歌で地面にごろごろ倒れている男達を洗脳し、操った。

 そして、総選挙に出る事を宣言した。

 それらのことを二人に説明した。

「リサさん……どうやってこんな力を」
「それよりもまずいよ。だってご主人様、あたらしい大統領に親書を渡さないといけないんだから」
「あの人がなったら渡せないね」
「それよりもっとまずい事がおきるかも」

 コハクがいうと、他の奴隷達は生唾を飲んだ。

 リサが大統領になる。
 ちょっと前までなら多分祝福してたけど、今はそんなのんきな事はいってられない。

 リサは、あきらかにおれを敵視してる。
 いや、殺そうとしてた。

 そんなリサが総選挙にかったら――そう思うと背筋がぞくっとした。

「とめなきゃだめだね」
「止めるって、どうやってですか?」
「ルナが総選挙にでちゃおっか」
「わたしが出る」

 耳元で囁く様にイノリがいった。
 他の三人は一瞬驚いたが、すぐに納得した。

 視線が、イノリの指輪に集まっていた。
 おれの奴隷になってる事に気づいて、納得した。

 イノリは更に続く。

「わたしが歌う、総選挙で」
「いいのか? そこで歌うの危険だぞ」
「気にしない」

 首を振ってから、おれを見つめる。
 背負ったまま、至近距離で目が合う。

 イノリの目は、まっすぐおれを見つめていた。

「あなたのために……歌いたい」

 その宣言は、まるでプロポーズのように聞こえた。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
7ysy7eb3mlnm36qb0th9jyha9ke_php_nf_xc_9d
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ