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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第二章

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23.静止した世界の中で

 サヤカ、コハク、ルナ。
 三人を連れて街を出た。

 目的地はエルーガの街から南に行ったところにある、廃れた教会。
 以前はエルーガの民の信仰で賑わっていた時期もあったが、炭鉱が出来て、エルーガ鉱山のちょうど反対側にあることで次第に廃れていった教会。

 ロックはそこにいる。ということで三人の奴隷とともに向かっていた。

 歩きながら、まずはサヤカとコハクにいう。

「多分敵がわんさか出る、すんなりロックと戦える事はないだろう」
「分かってる。ご主人様とルナの露払いをすればいいんだね」

 コハクはすぐに理解した。
 前の事件、サローティアーズ王国がノードに乗っ取られかけた事件では、彼女はルナのポジションにいた。
 だからコハクは今回自分が何をすればいいのか、それをよく理解している。

「ロック以外の敵を倒せばいいの?」
「ああ、サヤカになら出来る」
「うん、頑張る」

 サヤカは小さく拳を握り締めた。
 気合を入れる仕草は可愛いかった。

 二人に言い含めた後、今度はルナの方を向いた。
 ルナはまっすぐ前を睨んでる、顔が強ばっている。
 いつもはぴょこぴょこしてるアホ毛も、心なしかピーンと張り詰めている。

 その顔はあまり見てたいものじゃなかった。
 早く復讐をさせて、元のルナに。
 明るくて可愛いルナに戻してやりたいと思った。

 おれ達四人は進む、教えられた道を進む。
 やがて、崖の上にポツンと佇む一棟の教会を見つけた。

 まわりに何もない、木々すら生えていない教会。

「あそこにいるのか」
「教会とは聞いたけど、まさか古神シエテの教会だったなんて」

「古神シエテ?」
「ご主人様は神って聞かれると誰の事をおもいだす?」

「だれって、この世界の神はセーミ様一人だろ? なんだそのシエテってのは」
「ざっくりいうと、セーミ様と争って負けた古い神の事だよ。この辺は話すと長いけど、序論だけでも聞いとく?」
「いや、いい」

 首をふった。

「そんな事は今関係ない。問題なのはそこにロックがいるかどうかだ」

 コハクは頷く。
 シエテのセーミ様の話はちょっと興味があるが、それは今度だ。

 おれ達は更に近づく。
 ぼろぼろのドアを開けて教会の中に入る。

「けっ……結局ここまで来たか」

 中にロックがいた。
 女神像に祈りを捧げていたロックはおれ達に振り向き、聞き慣れた悪態をついてきた。

「せっかく見逃してやったのに、のこのことここまで出向いてくるなんてよお」
「ロック・ネクサス。お前の目的は一体何だ」
「あん?」
「冒険者を利用して、賞金稼ぎを巻き込んで。あんなブレスレットを大量につくって何をするつもりなんだ」
「けっ」

 また悪態をついて、ブレスレットを一つ取り出すロック。
 おれ達は同時に身構えた。

 ロックはおれ達をあざ笑うかのように、教会にまつられてる女神像にブレスレットを捧げた。
 知らない顔の女神像、コハクがいうシエテってやつか。

 輝くブレスレットは女神像に吸い込まれていった。
 それを見た瞬間、なんとも言えない、悪い想像が頭を駆け巡った。

「まさか……シエテの復活?」

 それを代弁してくれたのはコハクだった。
 ロックはにやりと口角を持ち上げた。

「けっ、だとしたらどうするよ」
「なんでそんな事をするの!? シエテを復活させてなんのメリットがあるというの!」

 コハクがは叫んだ。

 シエテの事は知らない、復活したところで何がどうなるのかも分からない。
 けど、一つだけは分かる。

 あのブレスレットは人の「苦痛」をすって輝いてる。
 それを使って復活をもくろむなんて――シエテとやらはまともじゃない。

 それがコハク――サローティアーズ王国王女としての彼女の考えだろう。

「この世界はぬるすぎる。女神セーミの加護を受けたこの世界はぬるすぎるんだよぉ!」

 ほとんど絶叫する勢いで叫ぶロック。

「セーミになってからこの世界はぬるま湯に浸かったようなもんだ。そんなんじゃつまらん、刺激がたりないんだよお。おれはなあ、シエテ様が示した争いと苦痛に満ちた世の中がほしいんだよ」
「争いと苦痛?」
「そおおおだあああ!」

 ロックは更にブレスレットを取り出した。
 輝くブレスレットにほおずりして、ヘビのような舌でなめ回して。
 ガリッ、とかみついた。

 いっちゃってる目でうっとりした。

「ああ、いい……。いいぞお、これだ……この苦痛こそがこれこそが世界で一番甘美な味だ」
「ひぃ」

 さやかが怯えた。

「今はこうしてあつめにゃならんが、シエテ様が復活した暁には、この世は全て苦痛に染め上げられるのさ」
「そんなのはどうでもいい」

 これまで、黙って聞いていたおれが口を開いた。

 そう、どうでもいい。
 ロックが何を企んでようと、そんなのはどうでもいい。

「どうでもいいだああ?」
「そうだ。今日は落とし前をつけに来ただけだ」

 ルナを見る、背中を押して一歩前にだす。

「お前の目的とか世の中とか今は関係ない、ルナを悲しませた落とし前をつけに来た。それだけだ」
「……はっ!」

 ロックは一瞬きょとんとして、それから楽しげに嗤った。

「いいぜ、いいぜえ。てめえハードといったか」
「覚えてもなかったのか」
「ただのFランで、偶然手に入れた奴隷でいい気になってるだけかと思ったら、そこそこの男じゃねえか」
「……」
「ふ、ふふ、ふふくけぎゃーはっはははは!」

 ロックは天を仰ぎ、狂ったかのように大笑いした。

「いいぜえ、いいぜえええええ! きにいったぞお前、お前の苦痛をおれにも味あわせろ」

 いっちゃってる目でおれをみた。
 ホモに尻を狙われた、そんな気分になった。

「させないから」
「ご主人様はあたしたちがまもる」

 サヤカとコハクがおれの前にでた。

「けっ、お前らか。お前らの弱点はもうわかってんだよ。なんかいクエストをやらせたと思ってる」
「なんだって!?」
「そうら!」

 ロックは持ってるブレスレットを握りつぶした。
 輝くブレスレットの破片が光になって、その一粒一粒がモンスターになった。

「これって……動かザル?」
「……の、メタル版?」

 驚愕するサヤカとコハク。
 動かザル、そしてメタルモンスター。

 どっちも、サヤカとコハクが苦戦したタイプだ。
 それが、ざっと数えて20匹を超えてる。

「しってるぜえ、お前らはこういう弱くて固いのに弱いんだろ」
「うぅ……」
「くっ」

「おれ様の見立てじゃお前ら、こいつらに手も足もでねえだろ。それ」

 ロックの号令でメタル動かザルが一匹飛んで来た。
 カウンターパンチを放つサヤカ、氷の矢で迎撃するコハク。

 コハクのパンチが「グギッ」って音を立てて、氷の矢ははじかれて粉々になった。
 二人はとっさに避けた、なんとかダメージはない。

「けっ。けけけけ、ぐけけけけけ!」

 高笑いするロック。
 自分の分析、だしたモンスターが効果的な事で喜んでるみたいだ。

「ごめんなさいハードくん」
「どうしましょうご主人様」

 二人はおれの横に来て、見あげてきた。
 そんな二人の頭を撫でてやってから、ルナにいう。

「ルナ、やろうか」
「うん」

 静かにうなずくルナ、アホ毛が不割りを揺れる。
 彼女と手をつないだ。

 ……。

 そして、手をはなした。

「――なっ!」

 驚愕するロック。
 やつが出したメタル動かザル計24匹は粉々になっていた。

「何があった! この一瞬で」

 一瞬じゃないけどな。
 手をつないで、時間をとめたおれとルナはちくちくとメタル動かザルを倒していった。

 一体につき、やく一時間。
 止まった時間の中で約一日をつかって、動かザルを全滅させた。

 そして時は動き出す。
 ロックの目には、一瞬のうちに手下のモンスターが全滅したに見えるはず。

「けっ、なんかの間違いだ! こんなの――」

 ロックはブレスレットを取り出した。

 ルナと手をつないだ。
 ……。
 そして、手をはなした。

「――もう一回呼び出して、ってない!」

 手元からブレスレットが消えたことに驚愕するロック。

「探してるのはこれ?」
「ばかな、いつ奪った! ルナ・クレイドル! お前のスピードは把握してる。今のおれ様なら目で追える程度だったはずだ」
「そうかもね」

「なんかの間違いだ! なんかの――」

 更にブレスレットを取り出す。

 ルナと手をつないだ。
 ……。
 そして、手をはなした。

「――間違いだうぎゃあああ!」

 手を押さえてうずくまるロック。
 手首から血が噴き出している。

 時間停止で奪ったついでにナイフでバサッと切ってきたからだ。

「馬鹿な、どういう事だ……何も見えなかったぞ」
「……」
「けっ、この俺――」

 ルナと手をつないだ。
 ……。
 そして、手をはなした。

「――様がああああああ!」

 絶叫、今度はブレスレットを奪うついでに目を繰り出した」
 顔を押さえて、転げ回るロック。

 まだまだ、まだルナの気が晴れていない。
 横顔がそう物語っている。

 もっとやりたい、もっと苦しませたい。
 ルナの顔がそう物語っていた。

 おれは、彼女の好きなようにさせた。

     ☆

 停止した時間の中、ルナは101回目のナイフをロックの心臓に突き立てた。
 後半はもう命乞いだった。

 何も出来なくなったロックにトドメをさして、ルナは、全身が脱力した。
 手をつないでるおれはとっさに倒れそうになる彼女を抱き留めた。

「大丈夫かルナ!」
「うん……ごめんねハードくん。嫌なところを見せて」
「気にするな。1回目の時間停止で動かザルをスルーしてロックを殺そうとしたのを止めて、こんなことを提案したのはおれだ」

 そう、提案したのはおれだ。
 一撃で殺すより、たっぷり恐怖を与えてから殺した方がルナもすっきりするんじゃないかって思ったからだ。

 実際そうなりそうだった。
 ひと思いにやってしまったら空虚感が残ってしまうかも知れなかった。

 でも、こうしたことで、後半は誘導して、命乞いするロックから謝罪――ルナの仲間に対する謝罪を引き出せた。
 それを聞いたルナは涙を流した、そして、少しずつ怨念が解放されていった。

 最後には「ひと思いに殺せ」と哀願するロックの心臓にナイフを突き立てた。
 これで、終わりだ。

 ルナはおれにしがみついて啜り泣いた。
 しばらく泣いた後、涙を拭って顔をあげた。

 目を泣きはらしているが、
 彼女らしい、明るい表情に戻っていた。

 それをみて、おれは彼女の復讐完了を確信した。
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