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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第二章

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20/52

20.おれが一番うまく奴隷を扱える

 翌朝。
 ギルド『勝つためのルール』。

 表に「臨時休業」って看板がでてて、中におれたち三人と、サイレンさんがいた。
 中に入ってきたおれ達をみたサイレンさんが複雑な顔をした。

「ご苦労様、それとごめんなさい」
「あの……サイレンさんはああいう豹変しませんよね」

 おれは不安になって、つい聞いてしまった。

「大丈夫、そうなってもおれが無限の愛で元に――」
「あんたは少し愛の数をへらしなさい♪」

 サイレンさんは真横から伸びてきた旦那さん(?)のを折檻した。
 あっ、いつも通りだ。

「サイレンさんは大丈夫みたい」
「わたしも今ほっとした」

 サヤカとコハクがいった。
 うん、同感。
 確証はないけど、サイレンさんなら大丈夫っぽい。
 そんな気がした。

「本当にごめん、こんな事になってたなんて」
「ロックさん……じゃなくロックがなんでそんな事になってたんだ?」

「それはまだ分からない。別の事に気を取られてまだそこまでしらべられてないんだ」
「別の事?」
「ブレスレットの話をおしえてくれたじゃない?」

 おれは頷く。

 昨日、ロックを倒したあと、電書ハトでサイレンさんに連絡を取った。
 その時にブレスレットの事を色々教えた。

 サイレンさんは光っていないブレスレットを一つ取り出して、複雑そうな顔でそれをみた。

「まず、こんなものをあたしは知らない」
「え?」

「負傷者の救出と把握に使われてるって聞いて、いくつかのギルドに聞いてみたけどみんなそれを知らないっていった」
「どういうことなんだ?」

「これは、ロックが独自につくって、使ってたもの。昨日の話からすると、冒険者の負傷を把握、救出するためが目的じゃなくて。負傷した冒険者から何かを吸い取って、それを回収する。のが本来の機能だと思う」
「そうね、ロックの真意を知った後ならその解釈が正しいね」

 コハクが納得した。

「どうやってこんな物を作ったんだ?」
「それも問題の一つではあるんだけど、もっと問題なのがあるんだ」
「もっと問題なのが?」
「ここ」

 サイレンさんはブレスレットを裏返した。
 そこに番号が振ってある。

 掲示板にくる1~100までの番号とはちがう、もっと大きい番号だ。

「そういえばそんな物もあったな。特に気にしてなかったけど」
「ロックが残して行ったこれは30個くらいあったの。その中で確認出来た一番大きい番号は621。つまり……」
「――使われた? いや持ち去られた!?」

 サイレンさんは頷いた。

「どっちなのかは知らない。でもどっちにしても……」
「やばいぞ、それって」

 サイレンさんの出した数字、そこから計算すると600個近くのブレスレットが行方不明だ。
 ロックはたしかブレスレットを十個使った。
 それがあの赤いドラゴンだ。

 見あげるしかなくて、建物の半分も埋めてしまうほどの巨体。
 あれが十個分。あと500個以上はある。

 サイレンさんは重々しく頷いた。

「そう、まずい。目的はしらないけど――」

 ガタン。
 ドアの方からいきなり物音がした。

 振り向く、ドアが開かれ、アホ毛の女の子がたっていた。

「ごめん、今日は営業は――」
「ルナ?」

 おれが女の子の名前を呼んだ、サイレンさんが訝しんで首をかしげた。
 ルナは――ふらふらと倒れてしまった。

 ドアをあけて、中に入って――一歩踏み込んできた途端たおれた。

「ルナ!」

 おれは駆け寄った。サヤカもコハクもついてきた。
 ルナを抱き起こす。

「ルナ! しっかりしろルナ!」

 ぼろぼろになったルナは意識がなかった。

     ☆

 ギルドの二階、ベッドのある部屋。
 ルナに手当てをして、そこに寝かせた。

 ルナに意識はない、が、規則的に寝息を立てている。
 たまに苦しそうに眉がゆがむけど。

「見た目はひどいけど、ほとんど外傷だね。何日かで動けるようになると思う」

 サイレンさんは言った。
 それはよかった。

「それよりも怪我の種類が気になる」
「種類ですか?」

 さやかが不思議がって、サイレンさんが頷いた。

「念の為に後で検査キッドを連れてくるけど、どうもエンシェントモンスターから受けたダメージっぽいね」
「エンシェントモンスターって?」

「普通のモンスターと違うモンスター、古代種とも呼ばれてるね。普通のモンスターは三秒ルルとか、カメラ小僧とか、今話した検査キッドとか。名前が『説明つく』タイプのモンスター」

 サイレンさんが一息ついたところで、コハクが引き継いで説明する。

「エンシェントモンスターは名前に説明つかないの。例えばオーク。なんてオークはオークっていう名前なの? って聞かれても説明出来る人はいない。古代種だから古代人か神様は分かるんだろうけど」
「そっか……名前じゃ説明できない……あっ、ドラゴン!」

 サヤカはハッとした。珍しく察しがいいな。

「ドラゴンもなんでドラゴンなのか説明できない」
「そう、ドラゴンもエンシェントモンスター。サイレン。彼女の怪我も?」
「そうみえる」

 頷くサイレンさん、コハクの顔は険しくなった。
 ドラゴンなんてそんなしょっちゅう出てくるもんじゃない。
 普通の人間なんて人生に一回くらい、冒険者でも年に一回くらいあうかどうかのレベルだ。

 昨日のこと、そして今日の事。
 ロックの事を連想しない方が難しい。

「みんな……逃げて……」

 ベッドの方から声が聞こえた。
 起きたのか!? と思ったら違ったようだ。

 寝かされてるルナに意識がなくて、うわごとを言ってるみたいだ。

「逃げて……早くにげて……ここは、くいとめ、て……」

 そういって、またがくっ、ってなってしまった。
 額に豆粒大の脂汗をいっぱい浮かべて、顔は苦しそうにしてる。

 さっきよりも苦しそう、あきらかに怪我の痛みだけじゃない。
 おれはサイレンさんと奴隷達をみた。

 みんなでうなずき合った。

     ☆

 ギルド名義で情報を集めた。
 エルーガの街で、賞金稼ぎ。
 それに関する情報を集めた。

 緊急で、報酬をかなり積んだら、すぐに情報が集まった。
 その情報を元に、おれと奴隷の二人が急行した。

     ☆

「ひどい……」

 さやかが目を覆った。
 情報通りにやってきた、エルーガの街外れ。

 もともとは炭酸倉庫だったそこは惨劇の現場だった。
 あっちこっちに人間が倒れている、ぴくりとも動かない、生きてるとは思えない。

「ここが賞金稼ぎのアジトか……」
「公認ギルドじゃないから、こんなもんね」

「だ、だれか生きてる人いないのかな」

 サヤカははきそうになるのをこらえて、生存者を探して回った。
 おれとコハクは視線を交換した。

 いるはずがない、というアイコンタクト。
 こんな惨劇の現場で生き残りなんて都合のいいーー。

「ハードさん! この人生きてます!」
「なに!?」

 びっくりしたおれ。
 コハクと視線を交換して、サヤカの元に駆け寄った。

 しゃがんでるサヤカの横にいるのは、まだまだ少年っぽい男だった。
 体が血塗れだが、苦しそうにゆがんだ顔をさらに変えた。

 本当に生きてる!

 周りが死んでる相手で、二人の『ちーと』は発動しない。
 おれが男を抱き起こした。

「けががひどいけどまだ間に合うかもしれない! 連れ帰って治療するぞ」
「うん!」
「待ってご主人様! 敵が!」

 叫ぶコハク。
 表からぞろぞろと魔物が入ってきた。
 大小さまざま、見た目も様々な魔物。
 唯一、メタリックな色合いが共通点だ。

「どいて! いけなきゃいけないの!」

 命令する前にサヤカが飛び出した。
 一番手前にいたメタリックなスライムを殴りつけた。
 ヒット、しかし。

「いったーい」

 なぐったサヤカが手を押さえた痛がった。
 戻ってきた、涙目になってる。

「ど、どうして……」
「あれはメタル種だ。とにかく堅いのが特徴だ」
「いくら堅くてもハードさんからもらったチートならーー」
「動かザル」

 重々しくつぶやくサヤカ、うなずくおれ。
 そう、動かざる。

 ああいうのと、このメタル種みたいなの。
 攻撃力が極端に低くて、防御力が極端に高い魔物は二人の天敵だ。

 コハクは魔法を詠唱した。
 かつてないほど小規模な氷の魔法がメタルモンスターに当たって、そのまま消えた。

 コハクが眉をしかめた、誰がみてもわかる、効いてない。

 倒す事をあきらめて、どかす作戦に切り返るサヤカ。
 それも数が多すぎて、うまくいかない。

 そうこうしてるうちに助けようとした男の息が荒くなってきた。
 苦しそうだ、このままじゃまずい!

 必死に考えた。
 どうする、どうすればいい?

 ーー!

「コハク! おれごと縛れ!」

 男をおいて、メタルモンスターの群に飛び込んでいった。

「ハードさん!?」

 サヤカは驚いたが、コハクは理解した。
 次の瞬間、ぶっとい氷の鎖が、おれと魔物たちをまとめてふんじばった。

     ☆

 男を連れて帰った、何とか間に合って、命は助かるらしい。

 ギルドの一階はまだ臨時休業中で無人、おれと奴隷の二人だけがいた。

「さすがですご主人様、あんなやり方を思いつくなんて」
「その場しのぎだ、何回もやれるわけじゃない。なんかほかの方法を考えないと」

 おれはかんがえた、メタル種や動かザルのようにサヤカとコハクの天敵がこれからもでるかもしれない。
 そのときどうしたら良いかを必死に考えた。

「とっさにあんなことができるなんて、やっぱりただ者じゃないね、ご主人様は」
「うん、わたしなんていつもの事が出来なくなっておろおろしてるだけだった」
「普段と違う事をとっさに思いつく、危険を省みずに実行に移せる。本当すごい」
「集中してる顔もかっこいい……はっ」
「大丈夫、ここまで集中してるご主人様には聞こえいから。もちろんあたしもいわない。だから早いウチに自分の口からいうといいよ」
「う、うん」
「あとご主人様ってよぶのもね」
「わ、わかってるもん」

 おれは必死に、二人をもっとうまく使える様に。
 ご主人様としてうまく使うことを考え続けた。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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