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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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02.チート奴隷はSランク

 奴隷をゲットした事を自慢する手紙を送ることにした。
 あらかじめ用意した手紙と、それを送るための『電書ハト』を荷物から取り出す。

「わあああ……可愛いひよこちゃんだ。ピヨピヨいってる」

 サヤカは目を輝かせる。おれの手のひらの上に乗ってる黄色い電書ハトをみて
目をきらきらさせてる。
 確かに可愛いのは認める、女の子ってこういう可愛いの好きなのも知ってる。
 しかし。

「ひよこ? これは電書ハトだぞ」
「伝書鳩?」
「発音が微妙にちがう。電書ハトだ」
「えっと……ハトなの?」
「だから電書ハトだ。こうして右手に電書ハト、左手に手紙をもって――」

 二つをくっつけるようにした。
 アン♪
 男の人のあえぎみたいな声がしたあと、手紙の方が小さい雷に打たれて灰ものこらないほど燃え尽きた。

「えええ? 今のってどういう事ですか?」
「これで手紙を送るんだ」
「手紙? やっぱり伝書鳩……? でも今のはペンとパイナップル……」

 なんかぶつぶつ言ってるサヤカ。
 電書ハトなんてみんなもってるようなものに何をそこまで驚いてるんだろ。

     ☆

 腹が減っては戦が出来ぬ。

 って事で、仕事を探したいけど、その前に腹ごしらえする事にした。
 サヤカを連れたまま街を探索、すると、焼きトリの屋台を見つけた。

 串に刺して直火で焼いてるものを、奴隷を買うための資金とは別枠でとっといた銅貨で二本買った。
 屋台の横に用意されてる椅子に座って、一本にかじりついて、もう一本をサヤカにわたした。

「ほら、お前も食べろ」
「これはなんですか?」
「アオイトリの皮を焼いたものだ」
「皮!? でもすっごい分厚い……厚さだけでも5センチは……皮っていうよりむしろステーキみたい……」

 串焼きを見つめてぶつぶつ何かいってるサヤカ。
 そんな彼女を眺めつつ更に焼きトリにかぶりつく。
 うん! やっぱりアオイトリの皮は絶品だな。ジューシーで、ほどよいケモノ臭さがくせになるおつな味だ。

 おれは美味しく頂いたけど、サヤカは立ったまま、焼きトリを見つめたまま食べようとしない。
 なんかおろおろして、まわりをみてる。

「どうした」
「あの……トイレは……どこ?」
「トイレに行くのか? だったら――」

 もってやる、といいかけてやめた。
 奴隷のかわりにものをもってやるなんてご主人様の威厳に関わる。

「そうじゃなくて。わたし、トイレじゃない落ち着いて食べられないの。…………お前はトイレ飯がお似合いだってクラスメートに言われたし」

 最後は消え入りそうな声でよく聞き取れなかったけど、トイレじゃないと落ち着いて食べられないまでは聞こえた。
 トイレでメシか……。
 個人の趣味に口を出すつもりはないけど。

「それは却下だ」
「え?」
「ここで食べろ。おれの隣に立って」
「え? い、いいの? 隣で食べても」
「ああ」

 大きく頷くおれ、往来に行き交う人々がこっちを見てる。
 おれは座って喰う、サヤカは立って食べる。
 椅子は余ってる、でもあえてサヤカは立たせる。
 うん、この格差がまさにご主人様と奴隷だ。

「隣で、一緒にたべていいんだ……」

 サヤカはまだ何かぶつぶつつぶやいたけど、顔を赤らめて串焼きを食べ始める。
 いいなこれ。嫌な事を無理矢理やらせる。ご主人様冥利に尽きるってもんだ。

 サヤカはちらちらおれをのぞき見しながら焼きトリを食べる。
 座りたいのか? でもダメだ。

「そのままそこで食べてろ」
「うん……」

 ますます顔を赤らめて、うつむいて焼きトリを食べる。

「いい人、かも」

 なんかぶつぶつ言ってるけど気にしない。
 ふっふっふ、これがご主人様ってもんだ。

 アオイトリの皮焼きで、おれは腹も心も満足した。

     ☆

 さやかをつれて、『ラブ&ヘイト』って看板を掲げてるギルドにやってきた。
 建物が真ん中から割れてるような感じで、片方が氷をモチーフ、片方は炎をモチーフにしてるっぽい不思議な建物だ。

 街の人に場所を聞いて、迷わずここにきた。

 というのも、懐に紹介状があるから。
 村を出る時に、知恵袋のオレンジさんからギルドで冒険者になるのが一番だって教わった。

 仕事は有り余る程あるし、タイミング次第で住み込みとか三食付きの仕事もあるらしい。
 ギルドで冒険者になれば、住む所も食べ物も仕事も、まとめて解決するらしい。
 だからここにきた。

 建物の扉の前に立った、懐の中を確認。
 うん、オレンジさんからもらった紹介状がちゃんとある。
 それを確認してから中に入った。

「いらっしゃしゃしゃい!」

 おれたちを出迎えたのは30代の女の人だ。
 年甲斐もなくはしゃいでる――じゃなくて、結構明るい性格の女の人っぽい。
 彼女はカウンターの向こうに立ってて、ニコニコこっちを見ている。

 それとなくギルドの中をみた。
 家具とかそういうのはほとんどなくて、女の人がたってるカウンターと、「F」「E」「D」「C」「B」「A」「S」ってそれぞれプレートが掲げられた、張り紙がしてある7つの掲示板があるだけ。

 なんの掲示板だろ、と不思議に思いつつも、まずは女の人が待つカウンターの前に移動した。

「えっと、サイレンさん、ですか?」
「うん! あたしがサイレン・ハートビート。見ての通りここの責任者で夫にまた浮気された女だよ」
「え? 浮気……?」
「今年で63回目になるんだよね、浮気されたの。ねえどうしたらいいと思う?」
「いや、そんな事を聞かれても……というか63回って一日一回以上のペースじゃないの?」
「うん! 日替わり浮気だね♪」
「違うんだ……サイ、レン。あの女とは一回しか、やってな――ぶごら!」

 カウンターの下から手が伸びてきて、男の声で何かを訴えたけど、サイレンがそこにいるっぽい男を思いっきり踏みつけた。
 変な音がして、男の断末魔(死んでないよね)が聞こえた。

 よく見たらサイレンの顔に最初から返り血がついてる。

「ぷるぷるぷる……」

 おれの背後でサヤカが震えていた。
 うん、そりゃ怖いよな。今のは怖いよな、おれも怖い。
 おれも怖いけどご主人様だから怖がってもいられない。

 ちびりそうになるのを我慢して、普通にサイレンさん(、、)に話しかけた。

「あの、これ紹介状なんですけど」
「うん? ありゃりゃ、オレンジさんの知りあいなんだ」
「知りあいっていうか、昔から勉強を教わってたっていうか」
「オレンジさん知識はすごいもんね、うんうん」

 サイレンさんは体を乗り出しておれをジロジロみた。
 うっ……なんか血の臭いがするぞ……。

「あんた、名前は?」
「ハード・クワーティーです」
「ハードね。ハードは浮気とかする方?」

 ぷるぷるぷる。
 全力で首を振った。
 うんって言ったら殺されそうな気がした。

 ……というか旦那さんほんと死んでないよね?

「うん、じゃあ仕事を回してあげる」
「ありがとうございます……えっと、ちなみにもしおれがする人だったら?」
「別に何もしないよ?」
「あ、しないんだ。よか――」
「とりあえずおちんちんの三枚おろしをするだけだから」
「それ何もしないって言わない!」

 やべえよやべえよ、この人やべえよ。
 いや別におれはやばくないけど、だって浮気はしないし。

「えっと、ちなみに奴隷は浮気枠に入らないよね」
「奴隷? あああの子ね。うん、奴隷は別に」

 けろっと言った。
 だよね、奴隷は浮気とかじゃないよね。
 なら全然安心だ、だってまだまだ奴隷を増やしたいもん。

 「奴隷持ちは男の甲斐性」だっていうしね。

「じゃあとりあえず、力を見せて」
「力?」

 サイレンさんは建物の奥から人を呼んできた。
 ものすごいでっかい男がでてきた。縦も横も、平均身長のおれの倍はある超デカブツ。
 『アリ相撲』の力士なのかな。

 男はおれの前に立って、サイレンさんがその横にたった。

「なんでもいいから、こいつを殴って」
「え?」
「力を見せてって言ったでしょ。やり方はなんでもいいからこいつを殴ってみてよ。オレンジさんの紹介だからどんなんでもとりあえずFランクには登録させてあげるけど、やっぱり力を把握しないとどんな仕事を振ればいいのかわからないじゃん」

 ニコニコしながら話すサイレンさん。そりゃそうだ。

 そうは言うけど、こんなデカブツをどう殴るか
 どんなんでもいいっていわれたけど、どうせながらいいところを見せたい。
 仕事にも繋がるし。

 攻略法が知りたいな……そうだ!

「サヤカ、お前が先にやってみろ」

 ご主人様っぽく奴隷に命じた。

「え? わ、わたし?」
「ああ。ご主人様命令だ。やってみろ」
「わ、わたしには無理です。人を殴るなんて」
「お前なら出来る」
「え?」
「わたしなら……できる?」
「ああ、おれの奴隷だからな」
「わたしなら……できる……」

 サヤカはおれとデカブツを交互に見比べた。

「わたし……できる。わたしでも、できる?」

 また何かぶつぶついいはじめた。独り言がクセなんだろうか。

「あっ……こういう時にチート、っていうのを使えばいいんだ。うん、なんか出来るかも」
「そうか、じゃあやってみろ」

 サヤカはうなずいて、デカブツの前に立って、またぶつぶついう。
 作戦はこうだ、まずサヤカに殴らせる、その反応をみておれがやる。
 以上だ。

「えっと……こう、かな。え、えい!」

 そして気の抜けたかけ声とともに、だだっ子パンチでデカブツを殴った。ペチッ、って感じのパンチ。
 だめだこりゃ、こんなのじゃ何も分からな――。

 どかーん!

 ものすごい音がして、デカブツが吹っ飛んだ。
 縦にぐるぐる回転して、ギルドの建物――掲示板を壁ごとぶちこわしながら吹っ飛んでいく。

「え?」
「え?」
「え?」
「一発までなら……浮気じゃ、ない……ガフッ」

 三人の声が綺麗にハモった。変なのも聞こえた気がするけど。
 おれも、サイレンも、サヤカも驚いていた――なんでサヤカも驚くんだ?

「あっ……指輪が光ってる。もしかして彼に言われた通りにやったから?」

 またぶつぶついってる。指輪がどうとか言ってるけど、あんなのご主人様が命令したから光ってるだけだ。
 それよりもこの力、すごいぞ。

「すごいなお前」
「す、すごいの?」
「ああ、流石おれの奴隷だ。よくやったぞ」
「よくやった……えへへ……」

 サヤカは嬉しそうに笑った。
 サイレンは違う感じで嬉しそうに笑った。

「やるじゃないその子」
「ま、まあな。なんだっておれの奴隷だし」

 思わず見栄をはった。
 でもいいよな、おれの奴隷なんだから。

 うん、奴隷の力はご主人様の力。ご主人様の力はもちろんご主人様の力だ。

「うん、あれなら戦闘はSランク相当だね。頑張って昇進して、強い子には難しい仕事色々任せたいから」

 力を示したおかげで、一瞬で認められた。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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