挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

12/52

12.奴隷とドラゴン

 地下道は平和だった。
 ここが巣なのか、あれからもちょくちょくシリウマと出くわしたけど、気が弱いシリウマ単体は刺激しなければ襲ってこない。

 むしろ向こうから逃げてく。

 シリウマをやり過ごしつつ、先にすすむ。
 ……そういえば。

「コハク姫、国王は今でも生きてるのか? 話を聞くとずっとここに監禁されてるんだろ? しかもコハク姫が追われて賞金首になってだいぶ経つ。その間に亡くなってることなんてことは?」
「それは大丈夫」

 コハク姫は即答した。

「お父様がもし亡くなってればこの髪飾りが壊れるから」

 そういって、ツインテールの根元の髪飾りをさした。

「忘れない形見か」
「忘れない形見? 忘れ形見じゃないんですか?」

 サヤカが首をかしげてた。
 むしろ忘れ形見ってなんだ?

「忘れない形見ってのは魔法アイテムの一種で、忘れる形見ともいう。渡した人間が生きてればそのままで、死んだ瞬間に崩壊するものだ」
「どうしてそんなものが?」
「大昔に戦争に行った男達のために作られたものだってきいた。戦争にいっちゃうと死んでるかどうか分からないケースがあるから、忘れない形見が残ってたら待っててくれ、壊れたらあたらしい人を見つけてくれ、って妻にわたすんだそうだ」
「……はじめて真面目な話かもしれない」

 またサヤカがブツブツいってる。
 おれは説明を続けた。

「つまり、それは国王がサヤカ姫に渡したもので、まだあるから国王は生きてる、ってことだな」
「そう。お父様からのプレゼント、王家のものはみんな持ってる」
「……なるほど、偽物の国王がいて、忘れない形見もあるから殺せないし、実際ものが残ってるから死んではいない、ってことか」

 コハク姫は静かにうなずいた。
 それなら大丈夫だな。

「あっ」
「どうしたサヤカ」
「髪飾り、ちょっと割れた」
「え?」

 おれはパッとコハク姫のツインテールの根元をみた。
 コハク姫もびっくりしてそれに触った。

 サヤカの言った通り、ちょっとひび割れてる。
 壊れてないけど、ひび割れた。

 ……命の危機?
 そんな言葉が脳裏をよぎった。

     ☆

 地下道の脇道、牢屋の前。
 柵を挟んで、二人の男が向き合っていた。

 柵の外にいるのは胸に三つ星の紋章をつけた警察庁、ノード・キャラクシー。
 柵の内側にいるのは身なりは汚くやつれているが、鋭い眼光の男。
 国王、スウェー・サローティアーズ。

 かつての主従が、柵越しににらみあっていた。

「何をしに来た」
「あなたに引導を渡しにきたのですよ、陛下」
「ずいぶんと急な話だな」

「いいえ、むしろようやくなのです。ようやく最後の障害を取り除く目処がついたのですよ」
「コハクか」
「ええ。陛下がここにいると知っている唯一のもの、コハク姫。彼女を亡き者にする目処がようやくついたのです」

「コハクは易々とやられるような娘ではない」
「そんな事をいっていられるのも今のうちです。後ほど死体を運んでくればいやでも信じたくなります。まあ、ウマに蹴られて面影がないほどつぶれているかもしれませんが」

「わたしを殺すとコハクだけじゃなく、王族全員に事が露見するぞ」
「忘れない形見のことですかな」

 ノードは懐から布の包みを取り出した。
 それをわざとらしく、国王に見せびらかすように広げた。

 包みの中は置物や髪の串、ゲームのコマと、色々はいっていた。
 一見まとまりがないが、全部に同じ紋章が刻み込まれてある。

 王家の紋章。
 国王の忘れない形見である事を示す紋章だ。

「すべてすり替えました。いけませんなあ、身につけるものをお渡ししないとこのように簡単にすり替えられます」
「……」

 国王はわずかに眉をしかめた。


「すり替えられなかったのはコハク殿下がもつ髪飾りのみ。おっと、それもウマに蹴られてつぶれているかも知れませんなあ
「……なぜこんなことをする。わたしを亡き者にしても国がお前のものになることはないぞ」

「陛下におかれましては、歴史になを残す名君となっていただきます」
「なに?」

「この後、サローティアーズ王国には様々な天災が押し寄せます。嵐、地震、干ばつ、……ありとあらゆる災害が押し寄せます。今もすでに、疫病が徐々に広まりを見せております」
「疫病?」
「突然変異するセンパイ風邪、といえば理解できますかな?」

 国王の顔が強ばった。

「一年にも満たないうちに立て続けに災害に見舞われたことで、陛下は自身の――ひいては王家そのものの徳のなさを痛感し、災害の解決に尽力したものに禅譲する。という筋書きになっております」
「それがお前か」

 ノードは静かに口角をゆがめた。

「後に災害は嘘のようにとまります。民のために王国の歴史を終わらせる英断を下した陛下は永く歴史に語り継がれることでしょう」
「それで何人が死ぬ!」
「わたしも滅ぶだけの箱を手に入れてもしかたがありません。まあ、数十万人程度に抑えはしましょう」
「その野望のために数十万人を犠牲にするのか!?」
「戦争でひっくり返すよりはよほど犠牲が少ない」

 どなる国王、冷笑を続けるノード。
 そのやりとりが今の二人の立場、そして王国の行く末を表しているかのようだ。

「さて、名残は尽きませんが」

 ノードは剣を抜いた。
 国王はぎりぎり歯ぎしりした。

 ここまでの大がかりな計画、そして埋められた外堀。
 国王にはもう、自分にはひっくり返す程の力はないと悟った。

 悔しいが、ムリだと、悟ってしまった。

 観念した。
 ノードの剣が柵を越えて突き出てくる。

 国王はノードを睨んだ。
 その姿を網膜に焼き付けて、地獄まで持っていくかのように。

「一足先でまってる」
「あの世などありませんよ」

 冷笑して、さらに剣を突き出すノード。
 切っ先が国王の喉に届いて。

 ピキーン!

 音をたてて柵ごと凍った。

     ☆

 話し声が聞こえて、駆けつけた先にノードがいた。
 ノードは牢屋っぽいところの前に立って、剣を抜いている。

 その剣を突きつきた先は柵の向こう。
 そこにぼろぼろな格好の中年男がいた。

「お父様!」

 コハク姫が叫びながら手をかざした。
 ノードの剣が柵ごと凍ってしまった。

「コハク姫!? 馬鹿な! シリウマの大群を抜けてきただと!?」

 ノードが驚愕した。
 おれ達は駆けつけて、男とノードのあいだに割り込んだ。

 ちらっとみる、コハク姫は中年男の事をものすごく気にしてる、お父様とも呼んだ。
 つまりこの男が助けるべき国王か。

「貴様ら、どうやってここに!」
「シリウマを倒してきただけ」

「馬鹿な、不可能だ! 汚いシリウマに先導された数百匹のシリウマの群れをわずか三人でぬけてくるなど」
「それは間違いだ。やったのは二人だ」

 ノードは忌々しげにおれを睨んだ。

「終わりだな、ノード」

 柵の向こうから国王が静かにいた。

「大それた事を成し遂げる、綿密な計画があったとおもう。が、そういう計画はほんのわずかなほころびですべて破綻するものだ。そして今、ほころびがここにある」

 状況はやっぱりよく分からない。
 わからないけど、国王がある意味勝利宣言をしているのだけはわかった。

「そこのものよ」
「え? おれ?」
「そうだ。そこの男をとらえてくれまいか。できれば生け捕りにしたい」
「わかった」

 おれは頷いた。
 ノードがそれを聞いて、逆上した。

「バカに……するなあああ!」

 そして怒鳴った、血走った目でおれをみた。

「綻びだと!? そんなものは関係ない! 状況は何一つ変わらない! ここにいる人間を全部消し去れた計画は計画のままだ!」

 ……。
 ここにいる人間全員消せば、か。

「冒険者の分際でその顔をするか! おれを! ただの文官だと思うな!」
「いや別に――」
「うおおおおお!」

 ノードは胸もとの三つ星の紋章をもぎ取って、握り締めた。
 何かはいってるのか、握り締めた手のひらから血が出た。

 直後、異変がおきた。
 ノードの体が膨らみあがった。

 ぼこぼこと音をたてて、変異しながら膨らんだ。

「あれはまさか――そこのもの! 早くヤツを止めろ」

 国王が切羽詰まった声で叫んだ。
 よほどノードがしてることがまずいのか。

 変身――そう変身してる。
 変身しきったらまずいのか。

「何をぼうっとしている、早く!」
「大丈夫だ」

 おれは動じなかった、大丈夫だと思って、その通りに言った。

「サヤカ」
「はい!」
「捕まえて、そのまま動かないように捕まえてて」
「わかった!」

「捕まえるって――あれはそんなに生やさしいものでは――」
「お父様」

 叫ぶ国王とは対照的に、コハク姫もかなり冷静だった。
 静かな口調で、父親をたしなめる。

「大丈夫、彼に任せて」
「コハク……?」
「大丈夫だから」

 話してるあいだにもノードは変身を続けた。
 人間じゃなくなった。

 大きく膨らんだ体は変異に変異を重ねて、なんとドラゴンになった。
 なるほど、だから国王は焦ってたのか。

「ブラックドラゴン、邪竜王の血を手に入れたのね」
「そうみたいだ」
「じゃりゅうおうのち?」

「そういうものがあるんだ。大昔に死んだドラゴンの王様の血で、手に入れた人間はあんな風に黒いドラゴンに変身する」
「そ、そうなんだ……あの」

 サヤカはおそるおそる聞いて来る。

「今までみたいな変な話は……ないんですか?」

 いままでみたいな変な話ってなんだろ。
 意味がわからないけど。

「見た目通りからだがでかくてパワーもあって、硬くて強大な魔力も持ってる」
「あ、はい……」
「だからサヤカ、取り押さえろ」
「はい、わかりました」

「まて、ブラックドラゴンに無策でつっこむのは――」

 国王が叫ぶ、ブラックドラゴン・ノードが前足を振り下ろしてきた。
 サヤカに振り下ろされてる、彼女のまわりの地面にヒビが入った。

 入ったが――サヤカは無傷だった。
 無傷のままブラックドラゴンの前足をつかんだ。

 ブラックドラゴンは動けなかった、もう片方の脚を振り下ろしてきた。
 サヤカはそれもつかんだ、ますます動けなくなった。

 サヤカの『ちーと』は相手の十倍速くなって――十倍力強くなる。
 それはブラックドラゴンにも適用されるみたいだ。

 十倍の力で拘束されたブラックドラゴンはまったく動けなかった。
 もがいて、絶叫する。

 普通なら暴れ出すところだが、サヤカに取り押さえられて、暴れる事さえも出来ない。

「これでいいですかハードさん」
「ああ、よくやった。つかれるだろうがしばらくそうしててくれ」
「はい! ……ハードさんにほめられた、ふふふ」

 ブラックドラゴンを押さえたまま、サヤカはいつもの様にブツブツいった。
 それをおいて、国王の方を向く。

 国王は驚いていた。
 目を見張っておれをみていた。

「その胆力、落ち着き、そして連れている部下。そなたは……なにものだ」

 なにものか、どう名乗ろう。
 と、思っていると。

 コハク姫は魔法をつかい、凍った柵ごと破壊した。
 コハク姫の魔法にも驚く国王。

 そんな国王に、コハク姫は言い放った。
 左手薬指の奴隷指輪を見せて、言い放った。

「わたしたちのご主人様よ」

 助け出された国王はますます。
 それこそ――死ぬほど驚いたのだった。

     ☆

 こうして国王を助け出して、王宮に向かった。
 本物と偽物、二人の国王が対面して混乱が起きたが、忘れない形見をはじめとするいろんな魔法アイテムがあって、あっという間にこっちの国王が本物だって証明された。

 コハク姫の主張と証明が通って、おれは救国の英雄になって。
 翌日、ものすごい好待遇で王宮に呼び出されて、国王の前にやってきた。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
7ysy7eb3mlnm36qb0th9jyha9ke_php_nf_xc_9d
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ