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チートを作れるのは俺だけ~無能力だけど世界最強 作者:三木なずな

第一章

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11.潜入と正面突破

 いよいよ当日になった。
 コハク姫を助ける、本物の国王を助ける決行の当日。

 サヤカとコハク姫、奴隷の二人と一緒にギルド『ラブ&ヘイト』にやってきた。
 表でリサと遭遇した。

 そこで待ってたリサはおれを顔を見るなりよってきた。
 ものすごく得意げな顔をしたまま歩いてきた。

「やっとご出勤? 駆け出しのくせに大物ぶってるわね」

 徹底的におれを見下し、さげすんだセリフ。
 不思議だ、腹が立たない。

 むしろ「お、おう」ってのが感想だ。

「リサはこんなところで何をしてたんだ? ギルドの依頼をうけるのか?」
「ギルドの依頼?」

 リサは失笑して、その後鼻で笑った。

「そんなまだるっこしいことするわけないじゃん。聞いて驚きなさい? あたし、ものすごく割りのいい仕事を見つけたの」
「わりのいい仕事?」

「そ。前金で銀貨200枚、成功報酬銀貨300枚もらえる事になってるの」
「500枚も!?」

「しかも今日一日で」
「一日で!?」

 びっくりした、それが本当ならかなり割がいい。
 なにしろ合計500枚ってのは、自宅の増築一回目ができる程の金額だ。

 まさかな――って思ってると。
 リサはずっしりした銀貨袋を取り出した。

「ふふん、どうよ」
「おー」

 ざっと見た限り、まちがいなく銀貨200枚は入ってる袋だ。
 本当だったのか。

「ふふん。それじゃ、あたしはもう行くね。ハードはそのまましょぼい仕事でもやってなさい」

 リサはそう言って立ち去った。
 ちょっと離れたところで待ってるイケメンのアイホーンと合流して、そのまま立ち去った。

「いやな人です……」
「可哀想な人だと思う」

 奴隷の二人がそれぞれ自分の感想をつぶやいた。
 おれは彼女の後ろ姿が完全に見えなくなるまで見送ってから、ギルドの中に入った。

 ギルドの中にサイレンさんと知らない男がいた。
 窓とかはコハク姫が出てきたときと同じ締め切ってる。

 それで色々察した。
 サヤカも後ろでごくりと固唾をのんだ。

 知らない男をおいて、とりあえずサイレンさんに話しかけた。

「お待たせしましたサイレンさん」
「心の準備はできた?」

「それは出来てる」
「そう。それじゃあ協力者を紹介する。この人はノードさん」

「お初にお目にかかる。ノード・ギャラクシーだ」
「ハード・クワーティーです」

 ノードと握手した。
 四十代くらいの中年男で、立派なヒゲを生やしてて、服の胸のあたりに星の模様を三つ重ねた刺繍がある。

 どこかで見た事のある紋様だなそれ。
 どこだろう……。

「ノード長官、あなたが協力してくれるの?」
「王女殿下、よくぞご無事で」

 ノードはコハク姫に頭を下げた。
 二人はどうやら知りあいみたいだ。

「まさかあなたがくるとは……わたしを指名手配したのはあなたのはずなのに」
「仕方なかったのです、殿下。それが国の方針、わたしでは横車を押すことはできません」
「それもそうね」

 コハク姫とノードとのやりとりを聞く。
 サイレンさんが横にやってきて、説明してくれた。

「ノードは警察庁の長官なの。コハクの指名手配は彼の命令でだしたものだけど、彼もまた上から命令されただけだから」
「なるほど」

 命令されて仕方なくやったけど、実はコハク姫の味方だった、ってことか。
 そういう人をよく見つけてきたなあサイレンさん。

     ☆

 おれ、サヤカ、コハク姫。
 三人はノードと一緒にプリブをでて、王都・マーキュリーにやってきた。

 駅からウマ車の特急にのって一時間、あっという間についてしまった。
 マーキュリーの駅にはだくさんの人がいて、中には兵士や警察もいたが、長官のノードが一緒についてたから、職質とかされなくて素通りだった。

 その後とある建物につれ込まれた。
 建物は普通の民家だったが、台所に地下への階段があった。

 何かあったときに王族が城から脱出するための地下道で王宮に続いてる。
 同時に、途中で例の地下道を通る。

 こうして、おれとサヤカ、そしてコハク姫。
 三人で、国王を助けるための地下道に足を踏み入れた。

     ☆

「うぅ……この魔物、頭がお尻になってて気持ち悪いです……」

 サヤカが泣きそうになっていた。
 意外と広い地下道、そこかしこに頭がお尻になってる、四足歩行の魔物がいた。

「うわ! お口のお尻からウンコしましたよ!?」

 セリフだけ聞くとサヤカの頭がおかしくなったように聞こえるが、見たものをそのまま言っただけなんだよな。
 ちょっとだけ認識違いはあるけどな。

「あれは口じゃなくて鼻なんだ。今出してるのは鼻くそだ」
「鼻くそってそういう意味のくそじゃないですよね!?」

「ちなみにこの魔物の名前はシリウマ」
「見た目通りだぁ……」

「気が弱くて基本的には無害だけど、どれか一匹でもキレて襲いかかってきたら他も全員尻馬にのって襲いかかってくる」
「そんなぁ……」

「刺激しなければ無害よ。このままやり過ごそう」

 コハク姫がそういった。
 彼女の先導で進んだ。

「どれくらい歩くんだ?」
「もう少しよ。逃げるときは追手をまくために複雑になってるけど、外から中に入るのは一本道だから」
「なるほど」

 コハク姫はフランクな口調で説明してくれた。
 最初にあったとき、締め切ったギルドの中の時と同じ口調だ。

 どうやら彼女は他人の目があるのとないのとでちょっと口調が変わるみたいだ。

 そのまま進む。
 あっちこっちに尻馬がいるが、刺激しないで進む。

 しばらくしたらちょっと開けた、地下なのに広場っぽくなってるところにやってきた。

「このまま進むと王宮、逆にあっちに行くと例の地下牢が――」
「あんたたちが引受人?」

 王宮へ向かう道から声がして、二人組の男女が現われた――って。
 アイホーンとリサじゃないか!

 向こうは箱みたいなのを台車で運んでて、こっちと同じように、おれを見てびっくりしてた。

「ハード? あんたどうして」
「それはこっちのセリフだ、おまえ割りのいい仕事をしにいったんじゃないのか?」

「そうよ。まったく、ここであんた達に会うなんて。ハードに用がないからさっさと行きなさい」
「待てリサ、それは依頼主の命令と違う。依頼主は『やってきた三人組に箱の中身を渡せ』だ」

「でもハードだよ?」
「でも三人組だ」
「……むぅ、しょうがないな」

 リサはブツブツ言いながらおれの方を向いた。
 ものすごくいやそうにな顔をして、箱を台車ごと押し出してくる。

 台車も箱もものすごく大きくて、おれ達三人が入れるくらいの大きさがある。

「はい、これ」
「それは?」

「知らないわよ。あたしたちは運んできただけなんだから。それよりも早く開けなさいよ。中身を受け取ったところまで確認しろ、って言われてるんだから」
「……」

 なんだろう、この展開は。
 微妙にいやな感じだ。

 リサがここにいるのもそうだし、訳の分からない箱なのもそうだし。
 指示された内容も曖昧で、ものすごくいやな感じがする。

 どうしよう、箱を開けるべきか――なんて考えていると。

「もうまだるっこしいな! 開けるよ!」
「リサ――」
「こっちが開けて中を渡したらダメだなんていわれてないから」

 アイホーンが止めるのを一喝して、リサは箱を開けた。
 蓋が開く、思わず身構える。

 中から出てきたのは黒いシリウマだった――黒いシリウマ!?

「まずい! リサ! 早く蓋を閉じろ!」
「はあ? あたしに命令してんじゃないわよ――」

 リサの反発、そのわずかな一瞬の隙を突かれた。
 黒いシリウマは箱から飛び出て、黒い尻の顔に青筋をビクンビクンさせた。

「ハードさん、黒いシリウマってだめなんですか?」
「ダメなんだ、あれは見たとおりものすごく凶暴で、誰彼かまわず襲う性格をしてる」
「……それでいてシリウマだから、他のシリウマも乗ってしまうのですわ」

 他人行儀にコハク姫が説明を補足した。

 その直後、黒いシリウマはそばにいるリサを蹴っ飛ばした。
 助けにはいるアイホーンも同じように蹴っ飛ばした。

 先制攻撃した黒いシリウマ。
 ちょくご、ドドドドドド、と地鳴りのような音が聞こえた。

 前後左右、道という道から馬の蹄の音が聞こえる。

「くるぞ! サヤカ、応戦だ!」
「ひぃーん!」

 サヤカは泣きそうな顔をしながら尻顔の馬たちに反撃した。
 ものすごく嫌そうだが、それは精神的なもの。

 地面や壁をケリ砕くシリウマの大群を次々と倒していった。

 コハク姫も同じだ。
 彼女は魔法でシリウマを倒していく。

 二人の戦う姿をみて、黒いシリウマに倒されたアイホーンとリサの姿をみて。

 はめられた。

 おれは直感的にそう思った。

     ☆

 百は優に超える普通のシリウマと、黒いシリウマをまとめた倒したあと。
 未だに気絶しているアイホーンとリサを囲んで、作戦会議をする。

「どうやらはめられたようね」

 コハク姫が言った。

「やっぱりそう思うか」
「わざわざ起爆剤になる黒いシリウマを運ばせてきたもの。それに『受取人』が三人だとピンポイントにしてきたし」

「じゃ、じゃあ……これはわたし達を狙った罠なんですか?」
「そういうことになるな」

「心当たりはないか、コハク姫」
「……あなたは?」

「ノード、それかサイレンさん」

 おれがいうと、コハク姫は頷いた。
 タイミングといい、リサたちに与えた情報といい。

 それをやったのはノードかサイレンさんしか考えられない。

「どうしよう……」
「このまま進めばいいと思う」

 悩むコハク姫におれは即答した。

「このまま?」
「どんな敵が出てきたって倒せばいいだけだ。サヤカと、コハク姫の二人で」
「あっ……」

 自分達の名前を挙げられて、コハク姫は自分の手を見つめた。
 左手薬指にある奴隷指輪。

 奴隷の証、『ちーと』の証。

 ついさっきシリウマの大群を二人で撃退した力。
 相手の十倍強くなる力。

 その力さえあればどんな相手でも倒せる、それをコハク姫は理解した。

「わかった、進もう」

 うなずき合って、おれ達三人は再び進み始めた。
 王宮ではなく、地下牢に向かう道に入った。

「……」

 その場を離れる直前、気を失ってるリサをちらっと見た。

 箱を開けるように指示されたリサ。
 使い捨てのコマだったよな……と、ちょっとだけ彼女の事を気の毒だと思ったのだった。
■10月10日書籍版発売します
よろしくお願いいたします。
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