第七話
部屋が明るくなり、彼女は目を覚ました。久しぶりにしっかりとした睡眠をとる事ができた。いつもの袴に着替えた彼女はふと思い出す。辻斬りの犯人である男・・・岡田以蔵の事を。昨夜の彼を見る限り、武市に敵対する者以外は特に害はない。
別に沙柚は命をかけた戦いがしたいわけではない、ただ己の強さを証明しもっと力をつけたいだけなのだ。
実のところ、彼女は道場破りというとてつもなく迷惑な事でなんとか生きていた。この周辺の道場はほとんど周ったのだが、やはり誰も彼女に勝てなかった。
遊びというのは勝つに越した事はない。
・・・だが、負けがないのなら全くもってつまらないのだ。
だから彼女は岡田以蔵と勝負がしたかった。木刀の試合だろうが、なんだろうが戦えるのならなんでも良いとさえ思った。
しかし、夜に会うとなれば昨夜のように上手く逃げられそうだ。そこで彼女は、昼の間に探す事にしたのだ。
普通のどこにでも居るような男なら探すのに苦労するだろうが、この男に関してはそんな事にはならぬだろうと思っていた。
・・・というのも、彼はかなりの美男であったのだ。今日の女が放っておくはずかない。少し聞くだけで済むだろうと軽く考えていた。