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第六話
だが、現実は違った。男は自身の刀でしっかりと沙柚の刀を受け止めていた。
「お前、何者だ・・・。」
地を這うような声であった。たしかにこの男とは初めて会ったはずなのだが、なぜか安心するような声。沙柚本人も分からなかった。一旦、お互い間合いを置く。
「もう一度聞く、お前は何者だ。武市先生の敵であるなら・・・斬る。」
沙柚は敵ではない。ただこの男と刀を交えたいと思いここに来ただけである。
男が【武市先生】とよぶという事はこの前の男はおそらく土佐だろう。
土佐に対して恨みはない。
沙柚は声を出さないかわりに首を横に大きく振った。すると男はじろりと私を見た後、刀を鞘に戻し去っていった。
あまりに唐突で、素早い動きに彼女は目を丸くするだけである。
ハッとした時にはもうその男は居なくなっていた。
『結局刀を交える事は出来なかったな・・・。』とため息をつき、沙柚もまた歩き出す。
➖いつかまた会うときは今度こそ。と決意したのだったが、そのいつかはすぐにやってくる事となる。