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2Days

俺は6時のアラームで起床した。

そろそろ悠馬と春の下旬から作るり始めていた物の完成を目指さないとな。

俺は悠馬に電話をかける。

「まさか寝起きじゃないよな?」

『俺も今電話かけようと思ってた。あれ作るんだろ?最近はテストがあって作ってる暇なかったしな』

「それじゃ、今から集合な」

『了解』

あいつが忘れてないだけ話が早かった。俺は電話を切って、でかける準備を済ませると、この街唯一の観光名所の天文学博物館に向かった。

 

 俺が悠馬と作ってる物ってのはプラネタリウムの投影機で映しだす映像のことだ。

つくり始めたのは今年の春の下旬なんだが、投影プログラムを作るには知識も必要なため、俺達が動き出したのは高校は入ってからすぐだ。

 理由は、高校を入学してすぐの頃、悠馬が「お前の夢ってなんだ?」と、一昔前の高校生がよく話題にするような事言ってきたので、俺は「魔法の機関車に乗って銀河を旅することだな」なんて小学校の下級生が言いそうな夢を冗談で言ってやったつもりだった。

でも悠馬は高校生ぽく解釈した。「魔法の機関車って…でもあれか、銀河を再現した場所をつくっちゃえばいいのか」それが始まりで、天文学博物館を管理している俺の父親に願いこみ、知識と作業する場所を貸してもらい、今もこうして悠馬と二人で気が向いたときに作業をしていた。

 「ほらよっと」

作業部屋の外にある自動販売機からジュースを買いに行った悠馬が戻ってきた。

「それにしても、ライブ効果でかいな」

今の時間は9時だ。博物館が開園し、ライブ参加ついでに見学しに来た人で溢れているのだろう。

「それにライブのスタッフもいるだろうしな」

俺は買ってきてもらったコーラを開けて口にする。

「それと、さっきプラネタリウムの方に行ったら胡桃と会ったぞ」

俺は思わずコーラを噴出しそうになり、その勢いでむせる。

「な、まじかよ」

「まぁ、すぐに戻っちゃったんだけどな」

「なんだ」

「でも、伝言を言い渡されぞ。『ライブ終了後その場でみんなが出て行くのを待ってて』だとさ」

それって

「…俺に話があると?」

「そうなんじゃないか?でもさ…今のお前を想ってくれてるのは胡桃だけじゃないってこと忘れるなよ」

「海穂のことか?」

「そう、あの後輩ちゃん、お前のこと好きなんだから、大事にしてやれよ」

「そうかもしれないけどな、俺が好きなのは胡桃なわけだし…」

そんなこと言う俺に悠馬は「お前なにもわかってないな」とでも言いたそうな顔をしてため息をついている。

「お前さ、一方的すぎるんだよ、少しは相手の想いも受け入れろよ」

「何が言いたいんだ??」

「聞かなくてもわかるだろ?…それより作業再開しようぜ、形にはなってきたんだ、夏休みまでには俺達のつくった夜空を見上げようぜ」

「そうだな」

作り始めて4ヶ月、形にはなってきたんだ。後とは微調整やら確認やらをして完成だ。

 夏休みまであと数日だが、なんとか完成はするだろう。

もし完成してこの空をを眺める時は胡桃と一緒に観る。

そう強く願い、左腕に力を込めてから俺は作業を再開した。

 再開してから1時間後にケータイのアラームがなりだす。

この部屋には壁掛けの時計がないから時間を忘れてしまうことが多々あり、俺はあらかじめアラームをセットしていた。

「わりぃ、俺この後予定あるから」

「後輩ちゃんとライブ前のデートか?」

「うっせ」

俺はアラームを切って携帯を確認するとメールを1通受信していた。

海穂からだ。『お昼は買わなくて大丈夫だよ(。◕ ∀ ◕。)』

俺は短くメールを返す『了解(。・Д・)ゞ』

「お前ってメールと普段の会話とじゃ印象全く違うよな」

俺の携帯を横から覗き込む無礼者に強烈なエルボーを喰らわせてから俺は約束のバス停前に向かった。


 大きな木々が立ち並ぶ幼稚園の庭の隅で俺と海穂に子ども達みんなでレジャーシートを敷いて昼食を食べていた。

俺が食べているのは海穂の手作り弁当で、かつサンドや、色と形が綺麗なたまごやきに、バリエーション豊富なおにぎりが並んでいた。

「私の手作りのお弁当美味しい?」

「あ、あぁ」

確かに見た目だけじゃなくて美味しい。

 なんで俺が保育園の庭で海穂の手作り弁当を食べてるかというと、昌栄高校の近くにある幼稚園にボランティアとして海穂がよく臨時の先生をしてて、今日はお庭ランチデーとかいう日らしく、俺達はお庭ランチから臨時の先生をすることになった。

 でも俺は性格とか、言葉使いが悪いから子どもに悪影響を与えるだけな気がするんだが、

あまりノリ気でない俺を無理やり説得させ、幼稚園へ連衡したわけだ。

 お昼を食べ終わってから少しの間は室内で子ども達を遊ばせることになっていた。

「和真君、前掛け似合ってるよ」

そう、臨時でも幼稚園の先生であるため、いつでもハサミ、ノリ、ペン、それからメモ用紙に絆創膏などをしまっておけるビックポケット1つと、胸の辺りに小さいポケットのついた前掛けを配布された。

「頼れるお兄さんっぽく見えるところとか」

「どこが頼れるお兄さんなんだよ」

「頼れるよ、だって、ほら」

俺の前掛けを引っ張る一人の女の子を指差した。

「なんだ?」

上から睨みつけるよう…正確には人相悪いからそう見える俺に怯えながら女の子は言った。

「おにぃちゃん、絵本よんで」

「俺より海穂に読んでもらったほうがいいいぞ」

「せっかく頼まれてるのにぃ」

それでも女の子は俺に本を読んでほしく俺の前掛けを引っ張り続けていたので仕方なく。

「わかった、それで何を読んでほしいんだ?」

「おにぃちゃんのすきな絵本」

「俺の好きな絵本って…」

「絵本ならあそこに置いてあるよ」

海穂が本棚を指して言った。

そうじゃなくて、俺の好きな絵本って…幼い頃に読んでたくらいだぞ?覚えてるわけ…あったわ

俺は自分の持ってきたバックの中から一冊の絵本を取り出した。

「お、和真君準備がいいね!もしかして嫌がってたけど私がここに連れてくるの予知してた?」

「違うわ」

 これは俺が始めて母親に買って貰った絵本だった。

別にマザコンだから持ってるとかじゃなくて、俺はこの本が純粋に好きだった。

幼い頃に読んだ時以来、絵本を読んでなかったと思っていたが、俺はこの絵本を何度も読み返していた。

ページ1つ1つの絵に人を魅了させる何かがあると思うんだよな。

「ほら座って」

俺は女の子を座らせて、俺も女の子の正面に座る。

「これ長いから飽きたら教えろよ?止めるから」

女の子はゆっくり頷く

「なら私も和真君の読み聞かせを聴いちゃおっかな」

「ほかの子ども達はどうするんだよ!」

ほかの子ども達より、俺が恥ずかしいだけなんだけどな

「それなら大丈夫」

「今からお兄さんが絵本読んでくれるよぉ!聞きたい人はこっちだよ」

それを聞いた何人かの子ども達が集まってきた。

みた感じだと女の子が多くて、男の子が少ない。

それは多分、みんなとジャレ合いたい年頃の男の子はジッとしてられないのだろう。

幼少期、ボッチな俺には無縁の感情だがな。

 てか、多いな。もし間違えて読んだりして笑われたらと思ったら変に緊張してきた

「読んでいいのか?」

「大丈夫だと思うよ」

海穂は周りを確認して言う

「それじゃ」

 みんなの視線が向けられるなか、俺は本を開き、読み始めた。

「銀河鉄道の夜

 『ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。』先生は、黒板に吊るした大きな黒い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問いをかけました。」

 俺が読んでるのは「銀河鉄道の夜」

孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作のひとつで、原稿5枚分がないことから未完成と言われているが、俺としてはこれでも面白いと思う

 読んでいく最中、遊んでいたほかの子ども達も集まりだして、最終的には全員俺の周りに集まっていた。

「ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいでなんにもいえずに博士の前をはなれて早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うともう一目散に河原を街の方へ走りましたとさ、おしまい」

 俺は絵本を閉じる。何ども読み返してたこともあり、噛んだり、間違えたりすることなく本を読むことができた。

 毎回この本を読んで思うのが、この独特な世界観が幼稚園児にわかるのか?

少なくても俺はわからなかった。ただページを開いて綺麗な絵を眺めていたくらいだと思う。

本格的に読み始めたのは小学の上級生くらいの時だった気がする。

 まわりから徐々に拍手が聴こえ始める。

「和真君すごい!こんなに長いのに間違えないなんて、私には無理だなぁ」

子ども達からも「おもしろい!」「ぎんが、ぎんが」「ぽっぽー」など手を使ったりして何かを表現してもらったが、子どもと接する機会の少ない俺には何を言いたいのか理解することができなかった。

 「おっともう1時半だね」

壁に掛けられた時計を見ると、確かに1時半だ。

どうやら俺は30分も読み聞かせをしてたらしい。

「それが、どうかしたのか?」

「今から3時までは子ども達を外で遊ばせる予定なの、3時になったら本当の先生の用事が終わるから、私達の仕事もその時に終わりね」

「わかなった、それじゃ外にでるか」

「みんなぁ!お外で遊ぼうか」

子ども達は輝くような笑顔で下駄箱に向かって走っていった。

「こら!走らないの」

そう言いながら海穂は子ども達の後を歩いていった。

「おにぃちゃん、いっしょにいこ?」

最初に前掛けを引っ張ってきた女の子が俺の腕を掴んでいた。

「あ、あぁ」

俺はどうやらこの子に好かれているらしい、俺達も海穂の後を追いかけた。


 外に出ても女の子は俺の腕を離そうとしなかった。

それをみた海穂が女の子に言った。

「ゆえちゃん、和真君の子と好きになっちゃったんでしょぉ?」

「…」

「その気持ち私もわかるなぁ、だって私も和真君のことが好きだもん」

海穂と目が合ってしまう。

「でも私のこと和真君が好きとはおもってないんだろうな」

女の子に言っているのではなく、俺にいっているんじゃないか、そう感じた。

海穂は女の子に向き直る。

「ゆきちゃんは、そうじゃないと思うよ?だから遊んでもらおうよ」

女の子は頷くと俺のほうを見る

「おにぃちゃん、いっしょにあそんで?」

「そうだな、ゆえちゃんは何がしたい?」

俺が尋ねると、ゆえは海穂の手持っている大縄を指差した。

「これ?」

海穂は結ばれた大縄を解く。

「うん」

「それじゃぁ、一緒にやろう」

縄の端を海穂から渡された。

 縄の準備ができると周りにいた何人かの子ども達も集まってくる。

「みんなもやるのか?」

そういうと、喜んで俺と海穂の両隣に並んで八の字とびを始めた。

 最初は、ゆえの順番が来るたびに、止まっていた。

でもみんなが一緒に励ましあって、なんとか止まらずに飛べるようになると

数を数えて飛んでいくことになった。

 「1.2.3…」

順調に20を越えたところまできた時だった。

「21.22」

ゆえが走って縄に飛び込もうとした時だった。

「きゃーっ」

ゆえはその場に座り込み、海穂の後ろを指差した。

 俺は縄を手から離し驚愕する。

男の子が木の上でバランスを崩して落ちそうになっていた。

大人なら軽い傷で済むかもしれないが、今落ちそうになってるのは子どもだ、間違えなく大怪我をする。

振り返った海穂はあまりの状況に足をすくませている。

 俺はとっさの判断で走り出す。

「和真君!」

海穂の声が聞こえた聞こえた気がする。

俺はそのまま落ちそうな子どもの所まで駆け抜けた。

その距離50m強、短距離にはある程度の自信があるし、まだ子どもにおは木にしがみつくだけの力がありそうに見えた。

 いける!俺はさらに加速するように男の子のしたまで滑り込む、同時に男の子は手を離す。

両手を広げて体で男の子を受け止めた。

抱え込んだ男の子は無事のようだった。

俺を見た男の子は泣きそうな顔をしいた。

「大丈夫か?」

大きく首を縦に振って返事をした男の子はどうやら無傷らしい。

「ならよし」

そういって頭を撫でてやると、吹っ切れたのか急に泣き出した。

「和真君!」

そう言って倒れた俺の元に駆け寄ると、そのまま抱き、俺の体に顔をうずめる

「ほんとうに、よかった…心配したんだから」

「俺も、もしかしたら助けられないんじゃないかって思ったわ」

「この子もだけど、和真君もだよ!」

「俺?」

「受け止めた時、骨とか折れなかった?」

俺は上半身を起こすようにして体の動作確認をする。

「どうやら大丈夫だ、かすり傷だけみたいだ」

「よかった…それと手当て、私がしてあげる」

「え、あぁ」

これくらいなら自分でもできると思ったが、今はこいつに甘えたい気分だった。

「それじゃ、みんなも手を洗って中に入って、桐嶋先生がおやつもってきてくれるから」

海穂は子ども達を誘導する。

「たてる?」

「一応な」

海穂の右手をかりて立ち上り、俺達も手当てするために戻った。

 「私がここじゃ先輩なのに何もできなくごめんね」

「お前じゃ無理だったって」

「無力でごめんね…」

こいつの情けない姿ってなんか調子狂わされんだよな

俺はうつむいて元気のない海穂の頭を撫でるフリして髪の毛をぐしゃぐしゃにする。

「にゃっ!」

驚いた顔して海穂がこっちを向く

「お前、泣いてる顔が似合わないんだよ」

「え…ちょっと」

それだけ言うと俺は海穂をおいて走り出す。

 慌てた様子で海穂も俺を追いかけた。


 部屋に戻った後、俺は海穂の手当てを受けたた。3時になると桐嶋先生というここの先生が戻ってきて、事情を説明をしたのち、保育園をあとにした。

 帰り道、俺は朝の悠馬の言葉を思い出した。

『お前さ、一方的すぎるんだよ、少しは相手の想いも受け入れろよ』

俺が怪我をした時、一番俺を心配していたのは俺自信よりも海穂だった。

それをあいつに抱きつかれた気がしたし、正直うれしかったし、

胡桃と付き合ってた時ころに俺は大きなケガをしたけど、心配してくれた胡桃からは海穂に似たような想いは感じれなかった。

 今思えば俺のこと今までに一番心配してくれたのはこいつかもしれない。

 バスの中で海穂は俺の手をずっと握り締めてた。震えているのもわかった。

あれからかなり時間が経ってるのに「まだ心配してくれるのか」と、思ったが、恥ずかしがられて手を離されるのが嫌だったから、口にはしなかった。

この時はただ、海穂のぬくもりを感じていたいと恥ずかしや胡桃にたする罪悪感を感じることなくそう思えた。


 保育園での仕事を終えた俺と海穂はライブまで時間に余裕があったのでDaysで休憩することにした。

 「本当に大丈夫?・・・」

海穂は俺の腕に巻かれた包帯を心配そうにみつめる。

「擦り傷だから大丈夫だ」

俺は包帯の巻かれた手を上下左右に動かした。

「みたいだね」

くすっと海穂は笑った。

その笑顔には何かあるような気が・・・

「俺、どこか変?」

「んー・・・」

俺を見ながら考える素振りを見せる。

「変というか・・・」

「なんだよ、焦らさなくてもいいだろ」

俺は口元にさっき食べたパンケーキのクリームでもついていると思い、手で口元をぬぐった。

「違うよ、なんか昨日の和真くんとは雰囲気変わったなって」

「・・・」

黙って海穂を見つめてしまう。

 昨日を振り返れば自分でも自覚できてしまうほどに変わったかもしれない。

「こ、これも子ども達のおかげかな」

俺の沈黙に耐えられなくなったのか、海穂は慌てて口を開いた。

いや、俺はお前と保育園で過ごせたから変わったのかもしれない

「かもな・・・」

とは言えなかった。

 また俺達に沈黙が訪れると、海穂は話を変えてくれた。

「そういえばさ!『銀河鉄道の夜』欲しくなっちゃったなぁ」

「え?」

いきなりで海穂は何を言ってるのか理解できなかった。

「ほら、あの絵本だよ!絵も綺麗で、私凄く魅かれたなぁ、あの絵本って駅前の本屋さんで売ってる?」

「あぁ、でもその本なら…」

俺はバックから本を取り出して海穂に渡した。

「やるよ、俺にはもう必要ないかな」

「え?必要ないって…」

貰うのを申し訳なさそうな目で俺を見てくる。

「理由は明日な…」

とっさに言ったことだが、正直間に合うかわからないし、今決めたことだから、あいつのやる気が心配だ。

「わかった…ずっと大切にする」

本を抱きしめるようにして持つ海穂を見てなんだか照れくさくなる。

「そ、それ俺がガキの頃に買ったやつだから、擦り切れてたりして見栄え悪いけど…それでも大切に扱ってきたつもりだから…」

「見栄えは関係ないよ、和真くんの宝物を貰った気がして凄く嬉しい」

 ますます恥ずかしくなった俺は海穂から目をそらして、今度は俺が話題を変えた。

「ライブ開始は6時だっけか…」

時計を見るが、まだ時間に余裕はある。

海穂は自分のバックに本をしまい質問してくる。

「胡桃ちゃんだっけ?最近話題になったりしてたから私も少しは聴いてたんだ」

「俺はガッツリ…」

「それじゃ、和真くんは胡桃ちゃんのファンなんだ?」

「ファンと言うか…」

少しの沈黙の後に決意する。

俺は海穂に胡桃との関係を話すことにした。

 中学の頃に付き合ってたことや、曖昧な分かれ方をしたこと…

今まで片想いをしてきた全てを海穂に話した。

「このミサンガにさ中学2年の頃に二人で願いを込めてペアで腕に結んだのに、未だに切れずにいる」

腕に結ばれたボロボロのミサンガを海穂に見せた。

「でもさ、今日合えるんでしょ?」

「あぁ、今日のライブ後に話をするつもりだ…」

「なら、まだチャンスあるじゃん」

別に俺は縁りを戻すとは言っていないんだが…

ただ、はっきりさせないまま明日を迎えたくないだけだ。

「同じ道を歩むことができない…」

「え?」

俺の突然の一言にキョトンとする。

「なんでもない」

「気になるなぁ…」

うっかりの一言を追求してくるので、また話をそらすことにする

「それより今日はありがとな」

「いや、手当てとかは得意なほうだから」

「ちげーよ、今日の臨時の先生を手伝わせてくれたことだよ」

勘違いした海穂は恥ずかしさのあまりに俺の髪の毛をグシャグシャにしようとする。

「おいっ、やめい!」

「和真くんがいけないんだからぁ!」

 俺は今まで、こんなに近くに人を感じたことなんてあったか?

胡桃と過ごした数年なんて音楽家を目指すのを応援して、特別な日に一緒に過ごしただけ…

体は近くにあっても、心は凄く離れていたんじゃないか?…

「ふっ」

「え?なんで笑ったの!?」

海穂の両手を髪の毛がグシャグシャにされないように抑えている最中にうっかり笑ってしまった。

「いや、馬鹿馬鹿しいなって思ってさ」

深く考えすぎてたんだな、単純に高校が違ったら自然と会わなくなるんだから、どっちにしろ俺と胡桃は終わってた気がする。

「なにが!?」

「こんな所でジャレあってるがだよ」

俺は海穂を押し戻す。

「あわっ」

少し体制を崩し気味になりながら椅子に着地

「ほら、いくぞ」

「う、うん」

椅子に変な体制で座る海穂に手を差し伸べる。

俺達は渚に会計を済ませるとライブへと向かった。


 会場はプラネタリウム…

 円形をしていて中央には投影機、それを囲むように置かれているはずだ。

音響設備とかマイク設備がないのに本当にできるのか?

 でもそんな不安も中に入ってしまえば吹き飛んでいた。

多くの人を収容できるように椅子は取り外され、真ん中にあった巨大投影機もその姿はなかった。

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