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1Dys

高校2年生がイキッて書いた作品なのでクオリティーが低いのは許してください

背景描写などがあまり印象に残らないような中途半端なできなのは自分の未熟な所だと反省しています。

また流れ的にも無理があるのは承知のうえで書いてます

 1Days

 俺が昌栄高校に入ってもう二年目の夏を迎えようとしている。文理選択によってクラス替えも行われた。多数の人が数学をやるのを避けて文系を選んでいくなかで、俺は古文とか歴史が嫌いだから理系を選んだわけだど。別に高校入っても友達とかほとんどいないし、唯一の友達、いや中学からの腐れ縁の中野悠馬も理系なわけで、理系の人が少ないために必然的に同じクラスだ。

 といった簡単な自己紹介を済ませたところで今の状況を説明したいと思う。

 梅雨明けと同時に期末テスト期間が過ぎ去り、湿度の高い時期が過ぎ去ると今度はクソ暑い毎日がやってきた。

 そして問題となるのは今日のHRが終わり、クーラーが消された生ぬるい空気と帰宅を始める生徒がいる教室でのことだった。

 俺も帰宅の準備をして帰宅部の俺は同じ帰宅部の悠馬と一緒帰ろうとしていたのだが肝心の悠馬がみつからないし、教室の出入り口がやけに騒がしかった。それに同じクラスの女子が俺のことを指差していた。俺は自分を指差さすジェスチャーをして目のあったクラスメイトに尋ねると首を立てに振った。

何もしていないはずなんだが、これで変なことに巻き込まれてたと思うと別の出入り口から無視して帰りたい気分なのだが、クラスメイトが指差す俺の方向に向かってなんのためらいもなく教室に入ってくる女の子がいた。

上履きを見る限り一年生であろう女の子で、琥珀色の長い髪を揺らし、堂々とした姿勢で上級生のクラスに入り俺に近づいてきた。

 動揺した俺は無意識に自分の席から立ち上がると…さっきはクラスに入ってくる迫力でわからなかったけど、目の前に立っている女の子は俺の頭一個分も小さかった。あまりのことに俺はつい口に出てしまう。

「ちっさ…」

その一言に目の前に立つ女の子は湯だったタコのように顔を赤らめて一歩後ずさる。

「なっ…こほん」

咳払いをして気持ちを落ち着かせようとしているようだ。でもその間にも野次馬どもが俺達を囲み始めている。それに数名は「あの須田が後輩の女の子に呼び出されたぞ!」とか言いながら教室を飛び出していった。さっきの姿勢とはなんだったのかと言わんばかりにこいつはオドオドしている。このままだと本当にやばいことになりそうなので俺から話を進めることにした。

「それで俺になんかよう?」

俺の発言に目的を思い出したのか落ち着きを取り戻し始めて女の子は言った。

「須田先輩、…待ってます!」

声が小さくてよく聞き取れなかった。

「は?聞こえないんだが」

俺は彼女の言葉を必死に聞き取ろうとして目つきが鋭くなり、周りのやつらは俺が後輩を脅してるように見えてるのか軽蔑するかのような表情をしている。これでまたクラスメイトからの評価が下がるのかとため息をつこうとした時だった。

「須田先輩!私、花澤海穂は今日の7時まで1年5組の教室であなたを待っています!」

周りの野次馬も静まり返るようなボリュームで言うと、みんなを掻き分けて俺の前から去っていった。

俺はしばらく花澤海穂が言ってることが理解できずにその場に立ち尽くしていると、「あの須田が告られた」とか「意外とイケてるしさ、わかる気がする」「だよね、私も初め見たときは…」「でも問題は性格だよね」とか勝手なことばかり言われ始めた時だった。

「須田が性格悪いのは皆わかってんだろ?どうせあの子もすぐわかるって、だからこの辺でこの話は終わりにしようぜ?」

悠馬の発言でみんなが納得したように俺の周りから散っていく。

 

 今まで何事もなかったかのようにみんなが帰りの準備に入ったところで悠馬が俺に話しかけてきた。

「ほんと、ああいう野次馬ってないよな」

悠馬は呆れまじり俺に言ってくるのだが

「何よりお前が一番酷かったと思うわ」

そんなつもりはなかったと言いたいような笑いをした。

「結果的には上手くいったんだからいいじゃないか」

お前の一言で俺の評判がまた落ちたけどな。

「それより、今の子誰なんだ?」

さらっと話を切り替えやがった。俺はこれでも少しは周りの評価のこと気にしてるというのに。

「あ?…俺もよく知らん」

不機嫌な顔で答える。

「そんな顔しなさんなって、つか、よく知らないって…そんな訳ないだろお前に用事あったんだろ?」

「本当に知らん、いきなり教室入って待ってるとか意味わからん」

悠馬は興味がありそうな表情で俺を見てくるので、ためらいながらもこいつが来るまでのいきさつを説明することにした。

 「なるほどねえ…で?」

「で?ってなんだよ」

何が言いたいのかわかってるくせにって顔をした悠馬は答える。

「だから、その花澤海穂ちゃんとは当然付き合うんだよね?…それともまだ」

悠馬はその先を続けないが俺の腕を睨むように見つめている。俺の腕に結ばれた赤、紫、青、黒で丁寧に編まれたミサンガのことを睨んでいるんだ。だからこいつが俺に何が言いたいのかはだいたい想像がついた。

「和真、お前まだ胡桃のこと諦めてないのか?」

俺はつい手に力が入ってしまう。

 

 胡桃は俺達がまだ中学生の頃の友達で、その中でも俺と胡桃は付き合っていた。付き合い始めたのが中学2年の夏で、その時あった祭りの花火の下でペアでつけることにしたのが今も俺がつけているミサンガだった。俺はその時ミサンガに『これからもずっと胡桃と一緒に』と叶えられない願い事をした。

だから今も俺の腕に未練たれたれのまま結ばれているのかもしれない。胡桃とは中学3年の時別れたことになってる。胡桃は音大の付属校に合格したときに「私は本気で音楽家を目指す…その間に私と和真の距離は色々な意味で離れていくし、同じ道を歩むことができなくなると思うんだ…だからここで終わりにしよ?私の夢を叶えるまで和真を縛ることしたくないから…」胡桃の最後の言葉だったと思う。俺はそれに対して返事を返してないし、今もどこかで胡桃のこと想い続けている自分がいた。

 

 真剣な顔で自分の左腕についてるミサンガを睨んでる俺に呆れたような顔をしながら悠馬はポケットから紙札2枚を取り出す。

「それ…もしかしてあいつのライブチケット」

そう、胡桃はまだ人気者とまでいかないが、そこそこ名の知れ始めたミュージシャンになっている。

「そうだ」

「でもお前無理だったって…」

悠馬はこの前この辺で胡桃のライブがあるからとチケットを手に入れるために奮闘していたのだが結局無駄だったと言っていたのだ。なのに今悠馬の手元には2枚のチケットがゆらいでいる。

「本当はチケット販売の前から胡桃から送られてきてた」

そう言って悠馬は2枚のチケットを俺に渡そうとした。

「2枚とも?お前は行かないのか?」

俺の返答に察しろとでも言いたげな顔をする。

「お前…どこまで鈍いんだよ、もう一枚は後輩ちゃんの分に決まってるだろ」

「俺はまだあいつと付き合うと言ったわけじゃ」

俺の言葉をさえぎるように悠馬は言った。

「俺がこれを渡す条件は後輩ちゃんとライブに行くことだ。付き合うかはその後でも構わない」

俺は悠馬の言うことに納得できずにその場に静止する。

「なあ和真、そのライブにお前が行くことは胡桃に伝えてある、そろそろケジメつけてこいよ…まだあいつに返事してないんだろ?」

今の悠馬はいつもと違う感じがした。いつも胡桃の話になるとケンカしていてその時の悠馬凄く冷酷に感じるし、それに対して俺もムキになっていた。「お前…あいつのいた時とは随分かわった」これがケンカする時の悠馬の口癖でもあった。俺を哀れむような目で見てくる…でも今の悠馬にはそれを感じなかった。だから余計にイラつくいた。

「返事って…それに胡桃のライブにあの子とそれは関係なねえじゃん」

「お前にはなくてもあの子にはあるかもしれないだろ?」

あっさりと言い返されてしまう。

「なんでお前はあの子を俺に押し付けるんだ?」

「少しは変わろうぜ」

意味がわからん。いつもは「お前は変わった」とかいうくせして今日に限っては変わってないとか。

「それではチケットいるの?いらないの?」

俺の前でチケットをチラつかせる。

「今の条件つきで貰うか…俺がこの場で破り捨てるか、お前の自由だけどな」

こいつ、卑劣すぎる。

「わかった…あの子と行けばいいんだろ…」

たとえ悠馬と行けなくても俺はあいつに合いたいし、昔のようにはいかなくても今の想いを伝えれば戻れるかもしれない。

「よく言えました」

笑顔で2枚のチケットを俺に渡す。

「でもさ…」

「でも?」

「もしあの子が告白のために呼び出したんじゃなかったら一緒いけるよな?」

「その時はな」

もし、あの子のが告白じゃなければ…そう想いながら俺は鞄を片手に花澤海穂のいる教室へとむかった。


 昌栄高校は全部で3つの校舎がある。俺がいるのは新校舎の3階で1年5組は本館の4階だった。

そう、凄く遠い。本館に向かうにはいったん外にでて裏の出入り口から本館に入ってまた階段を上ることになる。俺が4階の1年5組の前に来たときにはバテバテだった。

 しばらく1年5組から少し離れた場所で息を落ち着かせることにした。

階段を上り下りした疲労が徐々に回復していき、辺りを落ち着いて確認できるまでになる。

廊下を晴れた空から顔を見せる夕陽が茜色に染めていた。

俺は1年5組の教室に目を向けた。ドアから茜色の光が漏れている。

多分教室は綺麗な茜色に染まっている。まるでドラマのワンシーンのようだな。

 俺はドアの前に立って教室の中の様子を確認する。

窓側の席に一人の影を確認する。そして覚悟を決めてドアを開ける。ガラガラという音に彼女は俺に気づいてこちらを振り向いた。

「きてくれたんですね」

嬉しそうな声でこっちに近づいてくる。俺もドアを閉めて近づいた。

「それでなんのようなんだ?」

「私と付き合ってください」

想定していなかったわけではなかった。

「俺には好きな人がいる」

「知ってます。中野先輩から聞きました。片想いなんですよね?」

「だったらなに?」

片想いでも俺に好きな人がいるのに変わりはない。それにこいつの態度が俺をさっきから少しイラつかせていた。

「あなたは囚われてるとも言ってました。」

「なにに囚われてる?それにお前は俺の何を知っていってるんだ?」

心の中を土足で入られた気分がした。

「須田先輩はもしかしたら好きな人がいるって自分を誤魔化して恋することから逃げてるんじゃないかなって」

「なっ」

悪戯っぽく笑っているが俺としてはいい気分ではない。

血が一瞬凍ってしまったんではないかと思うくらいの寒気を感じた。

それはこいつの発言に対する怒りじゃない。図星を言われたような変な感じだ。

俺はもしかしたら失恋するのを怖がっていたのかもしれない…でも

「だとして俺がほぼ初対面のお前をいきなり好きになるわけないだろ」

「それもそうだよね」

軽く笑って肯定されてしまってさっきまでの苛立ちや怒りが呆れてどっかにいってしまった。

「でも、できることなら私と付き合ってもらいたいです」

「それは…」

すこしはこいつに興味をもったかもしれない…でも俺が胡桃を好きなのに変わりはない。

「日曜日まででいいんです。私には―」

いったん口ごもり言いなおす

「祭りのある日までに私のことを少しでも知ってもらって記憶の片隅にでも残してもらえれば」

俺はこいつに対する怒りもどこかに消えていた。むしろ感謝してるほどだ。俺は『失恋』するのが怖いから今まで言い訳つけて逃げてたのかもしれない。もしこのまま胡桃とあっても多分俺はあいつから逃げてたんじゃないかと思うとこいつに助けられた気分だ。

それに3日間だけなら胡桃と一緒に祭りに行けないのは残念な気もするけどその後からでもやり直すようにライブの日に話し合うこともできる気がした。

「わかった。日曜日までな」

俺からしたら恩返しの3日間だ。恋愛をするわけではない。

「ありがとう!」

俺の言葉に喜びを隠せないのか、いきなり飛びついてきた。バランスを崩した頭ひとつ小さいこいつをとっさの判断で抱き寄せてしまった。

そのまま顔をうずてくる。

「そろそろ離れろ」

「嫌だ」

俺は抵抗しようとする小さい体を無理やり引き剥がした。

「もう少し抱きついていたかった」

すねた感じで言っていたが俺は無視した。

「それよりどうするんだ?」

「どうするって?」

「俺は帰っていいのか、気乗りはしないけどこの後どこか行くとか」

「そう言わないでさ。私オススメの喫茶店あるからそこでゆっくり話さない?」

俺は言われるがままその喫茶店についていくことにした。


 連れてこられた喫茶店は学校の最寄駅の大通りにあるお店なんんだが…

「この店大丈夫なのか?」

「大丈夫って何が?」

「なんていうか…経営的に」

こいつに連れてこられたのは有名チェーン店のスター●ックスとマク●ナルドの間。そしてここのメニューは飲み物『コーヒー』のみ、食べ物『パンケーキ』のみ…これじゃこの二つの店に太刀打ちできないだろう…「あー…常連さんでなんとかなってるみたいだよ!それより早く中に入ろうよ」

こいつが指差しているのは人が一人通れる小さな通路にある階段で、その先にあるのが入り口らしい。

俺は腕も掴まれる形で店内に入ることになった。

 ドアが開かれると同時にカランという洒落た音が店内に鳴り響く。

「いらっしゃい、海穂ちゃん」

「よーす!渚っち、今日は新人さんもいるよー」

渚と呼ばれる女の人がカウンターから出てきてこっちへ近づいてくる。

俺のことを興味津々なごようすで観察してくる。

「ど、どうも…」

「ふーむ…あなた名前は?」

「和真です」

「甘い物は苦手なタイプ?」

「どちらとも、でも甘すぎるのは…」

少し考えた素振りをみせる。

「わかった。空いてる席に二人とも座ってて」

そういうとカウンターに戻っていった。

なにが分かったんだ…とか思いながら俺は空いてる席に座ることにした。

 店の雰囲気は嫌いじゃなかった。地下作りだと思われるこの喫茶店には窓がない。でもオレンジ色の照明がなんとなく心を落ち着かせる。カウンター席にテーブル席が5つある。

床はフローリングで店内はコーヒーの香りがただよっている。

 「この店気に入った?」

テーブルに頬杖をついてニッコリとした顔で聞いてくる。

「嫌いではない…店の名前は?」

外には看板らしき物はなかった。

「そっか、ここは『Days』っていうんだよ。そういえば名前なんだけど和真君って呼んでいい?」

「別にいいけど」

「それじゃ私のことは海穂って呼んでね。」

海穂は笑っていった。

 その後コーヒーが来るまでは時間はかからなかった。

「おまたせー」

コーヒーが運ばれてきた。

「海穂ちゃんパンケーキはどうする?」

「いつもので、お願いねー」

「はいよ、それで和真君はどうする」

「俺は帰ったら晩飯あるんで」

「そっか、また今度にでも食べてよね」

そういって渚はカウンターに戻っていった。

いや、上にあるスター●ックスで美味いコーヒーが飲めるのに、ここにまた来る必要があるのかと思いつつコーヒーを口にした。

「どう?渚っちのいれたコーヒーは」

「うまい…上のスタ●より美味い」

まるで自分のことのように海穂は誇らしい顔を見せる。

「さっき渚っちに観察と質問されたでしょ?」

確かにあの時された。

「渚っちは洞察力とか凄いからその日の気分とかその人の好みに合わせてコーヒーとか入れてくれるんだよ。私も今日は甘い物が飲みたいなーって思ってたらほら」

海穂の前に置かれたコーヒーはミルクたっぷりのカプチーノだ。海穂はカップを手に取り一口飲む。

「んー、美味しい今日のはホワイトチョコの味がする。どう?和真君も飲む?」

海穂は俺のほうに自分の持ってるカップを寄せてくる。

その時だった。たっぷりの生クリームとチョコシロップがかけられたパンケーキが運ばれてきた。

「はいよー、パンケーキ。海穂ちゃんのコーヒーは和真君の口には合わないと思うよ」

食べてもないのに味がわかるほど甘い匂いが鼻をくすぐる。

「そっかー、こんなに甘くて美味しいのに」

「海穂ちゃんは甘党だからね。和真君はコーヒー美味しい?」

コーヒーの感想を求められた。

「今までに飲んだことないくらい美味しいです」

「もう少しフレンドリーにしてくれていいよ。少し自己紹介すると、ここ『Days』のマスターをしてる渚っていいます。渚って呼んでくれて構わないよ」

「上のスタ●よりも断然美味しいよ」

「お、嬉しいこと言ってくれるね、それじゃお二人のお邪魔をしちゃいけないんで私は」

そう言うとカウンターへと戻っていった。

 俺達は渚がいなくなってから他愛ない話をいくつかした。

「なんでお前は俺のことが好きなんだ?」

海穂が少し悲しげな表情を浮かばせる。

「去年の文化祭覚えてる?」

「去年はまだお前中学生じゃん」

「私、来てたんだ昌栄の文化祭来てたんだ」

その時俺のこと見かけたのか?でも初めて俺の前に現れた時に海穂は名前を知っていた。

「和真君はその文化祭で誰かのこと保健室に運ばなかった?」

「あ…」

そうだ、俺はあの時一人の女の子とぶつかってあまりにも気分が悪そうだから保健室まで連れてったことがあった。あの子の顔を覚えてるわけじゃないが、言い方からするに多分こいつだ。

「あの時に凄くうれしかったな、保健室に連れて行ってくれた後私のお母さんがくるまで付き添ってくれたじゃん」

「…」

よくは覚えていないけが、多分クラスに戻るのが面倒で逃げるついでに付き添った気がする。

おかげでクラスの女子に「須田君が保健室まで女の子を連れてくの見た」と言う奴がいて、クラスの仕事最中にナンパを堂々とやるプレイボーイという印象をもたれたのははっきり覚えていた。

「その時の保健室の先生に和真君の名前きいたんだ」

「そうなんだ」

素っ気無い返事で会話は終わってしまった。

 しばらくの沈黙が続いた。コーヒーも飲み終わり俺は携帯で時間を確認することにする。

「そういえば連絡先交換してなかったね」

海穂も携帯を取り出してくる。

「これが私のアドレスね、登録よろしく」

海穂から携帯を手渡されて俺は素早くアドレスを登録して確認メールを送り携帯を海穂に返す。

「とどいたか?」

「うん、でも空メール…」

「確認メールだからな」

「でも何か一言くらい打ってよー」

突如俺の携帯がメールを受信した。さっき登録したばっかの海穂からだ

『大好き♪』

「削除っと」

「ヒドッ!」

俺はわざとらしく声にだしてそのメールを削除した。

俺は海穂のリアクションに思わず笑ってしまった。

多分こんなに自然に笑ったのは久しぶりだな。

「それよりもうすぐ8時だし帰らないか?」

「もうそんな時間なんだ」

 俺達は席を立ちカウンターで会計を済ませる。これだけ美味しいコーヒーが飲めて250円っていうのは安くてお得だと感じた。


 陽が沈み、大通りが店などの光で違う明るさを放っていた。

俺は大通りをいつものように駅に向かって歩いていることに気づいた。

「そういえば、お前の家ってどこにあるんだ?」

「え?この店の近くだけど」

「なら家まで送る」

「大丈夫だよ、それより私が駅まで送るから」

「女を一人で帰らせられないし、なんか今になって遠慮してくるお前がムカつく」

俺を好きとか言っといて、ここで俺が彼氏らしいことするのを遠慮されるのが気にくわない。

「なら、お言葉に甘えちゃおうかな」

そう言うと、海穂は自宅のあるであろう方向に歩き出す。

 店を出てからの俺達には会話がなかった。大通りから少し外れて住宅街に入っていく。

さっきまで聴こえてた車の走る音や、店の明るさが消えて、暗い道を街灯の光だけが照らすようになってから数分が経った所で海穂が足を止めた。

「ついたよ」

2階建ての一軒家、比較的大きくみえるこの家が海穂の家らしい。

「今日はありがとね」

「あぁ、それで明日に何時に何処へ俺は行けばいい?」

「明日の11時に駅前に来れるかな?バス使うから多少のお金もお願い」

「わかった、それと」

俺はポケットからライブのチケットを渡す。

「これ…」

「明日俺の家の近くのプラネタリウムを使った珍しいライブがあるからそのチケット、お前は夜間の外出とか大丈夫だよな?」

「うん…でもこういうのは和真君の好きな人にアタックするために使うものじゃないの?」

家に送るのを遠慮しようとしたあげく、今度はライブの誘いすら遠慮するとか、むしょうに腹がたった。

「いいんだよ、つかさお前、店にいる時までウザいくらい近寄ってきたのに、店を出てからなんか遠慮がちになってるよな?」

「え?」

キョトンとした顔で海穂は俺を見た。

まさかこいつ自覚なかったのか。

「そういう遠慮してるお前みてるとイライラするんだ、だからいつも通りにしててくれないか?」

「うん!そうだよね、あははっ」

何かが吹っ切れたのかさっきまでの暗さが嘘のような表情で笑いだす。

「それじゃ、ライブチケットは遠慮なく貰っとくよ!」

「あぁ、それじゃ、また明日」

 俺が海穂に背を向けて元きた道を戻ろうとした時だった。

「明日のデート楽しみにしてるから!」

やたら恥ずかしい一言を叫ばれたが、恥ずかしさのあまり振り返ることすら出きず、ただ手を振り替えすことにした。

読んでもらえただけでも感謝します。

感想のほうも残してもらえると嬉しいです。

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