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14話『張りぼての心』

「ごめんねネフィリムちゃん、ただ登録しに来ただけなのにこんな大事になってしまって・・・」


「気にしないでくれベルさん。私はこうしてベルさんと仲良くなれたし、むしろ良かったよ」


「キャー、なんかこのアンバランスな感じ、堪らないわ!!」


ソファの上で私を抱きしめるベルさん(ベロール・ウルフルさん)は、フサフサの顔で頬ずりをしてくる。出されたお茶が飲めないが、もふもふしてて最高だからよし。

ここに来るまでとあのエルフが来るまでに私たちはお互いのことを話していた。ベルさんは実はかなり可愛い物が好きみたいで私をずっと抱きしめたかったそうだ。

他にもどこの種族出身だとか、なぜここで働いているのかだとか色々話してくれた。

まぁ簡単にまとめると、一族内でいろんなゴタゴタがあり、飛び出してきた。いく宛もなく歩いてる際にギルド長(あのイケメン謎エルフ)が手を差し伸べそれからずっとここで働いてるのだそうだ。

私はこの世界に来てからここに来るまでの出来事や、私の新しい家族であるベリッツ家(特にマリーがどれだけ可愛いか)の話をダイジェストに話した。

ベルさんはぜひマリーにも会いたいと熱く語っていた。本当に話がよく合う人だ。


ついでにここでギルドについてまとめておこうと思う。

ギルドは私たちプレイヤーが、効率よく強くなるため存在していた物で、所属ギルドでのチームを組んだりすることで任務の攻略をスムーズにする。

プレイヤーはギルドを作ることができるが、そのためにはギルド長達の認可が必要となる。同じギルドを束ねる人物になる、その素質があるのかどうか判断するというものだ。

そして、その権限を手に入れるには一度何処かのギルドに入り、実績を積むというのが最も近道なのである。

個人でよろず屋をするのもありだが、仕事量を考えると客が多いのはやはりギルドなんだ。仕方ない。

ギルドにはランク付けがあり、魔物と同じくG~SSとなっており、もちろんギルド長になるにはSS級の力を持っていないと駄目だ。信用と力を持つ優れた存在がギルド長なのである。

他にも・・・


「すまない時間が思ったよりかかってしまった!皆の記憶の改ざんのために幻影魔法をかけてきた。これで姉様の事はただギルド登録しにきた少女としか思わないだろう」


・・・今回はここまでにしておこう。


「おい、今聞き逃してはいけない言葉を聞いたような気がするのだが」


「ギルド長もう来ちゃったんですか?」


「おいベル君、姉さまには丁重にといったではないか!?羨ましいぞ!」


華麗に流したな。


「本人が許可したんだからいいだろう」


「私達もう仲良しですもんねー」


ここのギルド長はロリコンだったのか、何かしてきたら全力で魔法ぶつけてやろうかな。


「それよりギルド長、ネフィリムちゃんと私に早く説明していただきたいのですが」


悔しがるエルフに容赦なしのベルさん。上司にもこびない姿勢はさすが狼系だ。


「あ、ああそうだな。いつまでも貴重な時間をいただくのはのは申し訳ない」


咳払いをし、深呼吸をして話し始めた。


「では、姉さまがまだ思い出していただけないようなので名乗らせて戴きます」


「はい」「ああ」


と頷く私たち。


「私は《ギルド総連合》本部ギルド長にしてネフィリム・エヴァンシス姉さまの義弟、エリオット・リーファスにございます」


「「・・・・・・え?」」


すがすがしい笑みを見せるエルフ(もとい)、エリオットはそう宣言した。


「え、エリオット・リーファスってエリー・・・の名前だったはず・・・」


「はい、そう呼んでいただけるのは本当に久しぶりですね」


「あのちっこくて可愛かった?」


「姉さまの後を真似しながらついて行ったり、いろんな服を着せていただいたのも覚えていますよ」


「本当にか?」


「本当、でございますよ。姉さま」


その言葉に私はショックで膝を床に着けて落ち込んだ。

あ・・・あのかわいい男の娘のエリーがこんなおっさんになっているだなんて・・・。


「ふっ、時の残酷さを思い知らされたよ」


だが言われてみれば瞳や髪の色や笑うときの顔に少し面影がある。

それに確かに110年もの長い時間が過ぎているんだ。長寿のエルフが少年から成人になったところで不思議はない、ないのだが。


「納得できない・・・」


「どうかしましたか姉さま?」


「・・・・・・気にするな、独り言だ」


時に人は納得できなくても、認めなくてはならないことがあるんだな。

取り敢えずこの話は置いておこう。


「それより、なぜお前は私だとすぐに気づいたんだ?もしかしたら似ている他人かもしれないのに」


「私が姉さまを間違えるわけありませんよ。まあ、それに私には心眼がありますので」


「ああ、そういえばお前は他人の能力が見えるんだったな」


ええ、そうですよとほほ笑む姿に私はまたため息をつく。


「あのー結局、ギルド長とネフィリムちゃんはどういったご関係なんですか」


その声に私は体が固まった。そう言えばベルさんは私とエリーがどうやって知り合ったのか知らないのだ。私は実は過去の世界から来ましたなんて言うわけにはいかないし、どう説明すれば・・・。


「彼女は私の命より大事な人で、100年以上前の私が小さい頃に弟にしていただいたのだ」


「サラッと言うな愚か者!」


素直に説明してしまうエリーを拳で黙らせる。なんだか、こいつが身内だったと分かった瞬間遠慮がなくなった。おっさんだと言うのもあるかもしれない。


「・・・つまりネフィリムちゃんは見かけは幼い少女だけど、実は百才以上年を取ったギルド長のお姉さんで、でもネフィリムちゃんは人間だから少女じゃなくてお婆ちゃんってこと?それだからつまり、えーっと??」


「ベルさん落ち着いて、私は見た目通りの少女だ。婆じゃないよ」


頭を抱えて悩みこむベルさんに説得をする。この姿でお婆ちゃん扱いとか絶対嫌だ。


「ふむ、困りましたね姉さま」


「お前が結論だけ言うから、ややこしい話がさらにややこしくなったな」


「事実ですし、仕方ありません」


「確かにそうだが、そのせいで私は今お婆さん認定されそうなんだが?エリーどうしてくれる」


ジト目で話す私にしっかりとした説明をさせるように要求する。


「ベル君、確かにネフィリム姉さまは私の姉さまだが、実は事情があってね」


「事情・・・ですか?」


「ああ、私たちは姉さまが作ったギルド《ゴスペル・ザ・ブラック》に所属していました」


辞めるんだエリー!説明しろと言ったがそれはダメだ!それは忌まわしい思い出なんだ!!

オホン。少し噛み砕いて訳すと、名前を付けるときに辞書で調べていたら福音というのがぐっと来て、私の髪が黒なところから《黒き福音》という意味を込めてつけた名前が《ゴスペル・ザ・ブラック》だった。当時はカッコいいし最高だと思っていたのだが、ある時この名前を意味不明と指摘され笑二のネタにされ大恥をかいた。正しくは《ザ・ブラックゴスペル》である。

ホントに過去に戻って自分をぶっ殺したい。

なおこの世界の人には、英語というものがないのでわかっていない模様。これが唯一の救いである。

おっと脱線してしまった。


「大きな貿易都市の宿に泊まっていたんだ。そして次の日姉さまは姿を消してしまわれたのだ。その日以降同じようにさまざまなギルドのギルド長が言葉を残し、または何も言わずにいなくなり消えていった。その一週間後に名のある戦士やギルドメンバーが全て消えたのだ」


「そこからは知ってます。さまざまなギルドが長がいなくなってすれ違いになり、危機を感じた皆が集まってこの《ギルド総連合》が生まれたんですよね」


そう言えば私が死ぬ前の大遠征してたんだったな。その後にこのゲームが閉じられたのか。

そしてプレイヤーがいなくなったから今のスタイルになったようだ。説明してもらって助かる。


「姉さまは帰ってきた。もしかすると他の方も返ってくるのかもしれないな」


・・・そうか。

確かに私は死んでこの世界に来た。だが同じようにほかのプレイヤーが来る可能性がないわけではないのか。

そう思うと私は何か空しいものを感じた。


「そう、だな。可能性はあるよな」


力なく笑う私。

それからのことはあまり覚えていない。気が付けば宿の自分の部屋のベットにいた。

何もない天井をただボーっと見つめる。


「バカは私だな・・・」


自分は特別だと格好つけて、いざ現実を見えた途端こんなことになる。「お前は主人公になれないよ」と誰かに言われているようで、また昔のように穴が開いたような気持ちだった。


「はっ、なんて情けない話だ」


手で目を覆うとゴツリと何かが当たった。見るとギルド証である指輪がついてあったので、今日の目的は果たしたのだろうと推測する。

だが、もう私に以前のように進むために戦う意志が湧かなくなっていた。

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