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13話『なぜこうなるんだ・・・』

さて、現在の状況を伝えよう。

今の私の目の前は、土下座をして必死に命乞いをしている汚い男たちが並んでいた。

その中の一番身なりのマシな男が、私に顔をボコボコにされて腫れ上がっている。

さっきまでは腕は反対に曲がり、裂傷や足が炭化して死にかけている奴もいた。

が、さすがに人を殺すのはアレなので治癒魔法をかけた。


「ホンットーにスンマセンでした!もうこんな事しませんからどうか命だけは見逃して下さい」


「あぁ、そうか。だがそれを守るという保証がどこにある?私の目の届かぬ場所では何をするかなんて、わからないだろ?」


もちろん許すつもりだが、ちょっと意地悪したくなった。

別にドSに目覚めたとかじゃない。


「いえ、ホントです!!なんならあなた様の下について犬のように働きますからどうか―――」


「いや、おっさんに興味ないから」


必死の懇願を即拒否。

だってゴリラみたいなおっさんに、犬になりたいとか言われるのは気持ち悪いでしょうよ?

結局数分後に現れた騎士団さんに身柄を預けて、私は少女たちの送りを担当。

どの親御さんにも泣いて感謝されたのは助けて良かったと心が温まる。

謝礼にとお金を渡されそうになったが、それはお返しその対応がさらに謙虚さと受けられて


「何かあれば微力ながら手伝わせていただきます」


そんな言葉を手を握られ語られた。

この国の人はいい人はとことんいい人なんだ。

これも、ゲームでは分からなかった一面だ。

そうこうしているうちに最後の一人を送ることになった。

その少女は目をキラキラ輝かせ、話す度にコロコロと表情を変える愉快な子だ。

名前はイリナ・リジル。赤い髪をサイドで一括りし、髪と同じ赤い瞳が少女の純真さと優しさを感じる女の子で、本当に私得です。

ありがとうございます。


「ところでイリナの家はどこなにあるんだ?」


「中級街の大通りを少し離れた場所で、宿屋を経営しています」


「へぇ、宿屋か」


「ええ、お父さんの料理食べたさに遠くから泊まりにくる人がいるくらいなんですよ!」


「へぇ、それはぜひ食べてみたいな」


そこで私はまだ止まる場所を決めていないのを思い出した。


「実は私はまだここに来たばかりで宿も決めていないんだ。もし部屋が空いていて、長期滞在が可能ならリジルの家に泊まろうかな」


「はい、是非そうして下さい。私も精一杯おもてなしをしますから!」


その笑顔につられてつい言ってしまったが、まだ部屋や値段も知らないんだ。

でも、ご飯が美味しいならそれだけでいいし、金がないなら稼げばいいだけの話だ。

深く考えるな。楽しもうじゃないか。











「お父さん、お母さん!!」


そういって宿の中にいた大人二人に抱きついて行った。


「イリナ!どこいっていたんだ!心配したんだぞ」


「全く心配させてこの子は・・・けど、無事に帰って来てくれて良かったわ」


「ごめんなさい、お父さん、お母さん」


イリナは今までの経緯を話し、私を二人に紹介した。

大事な娘が危険な目にあっていたのだ。顔色を変えて話を聞いていた彼らは、私に何度もお礼を言ってきた。

私は先ほどと同じように答え、それより長期宿泊は可能かと聞いた。


「あぁ、部屋は空いているよ。そうだ!娘を助けてくれた礼だ。いくらでも泊まってくれ」


「いやいや、流石にそれは申し訳ないよ。私だってそんなつもりで助けたんじゃないんだ」


「いいんですよ。貴女が助けてくれなければ娘に二度と会えなくなるところだったんです。安い物ですわ」


イリナの家族は作戦ガンガン行こうぜの優しさを見せてくれるが、元日本人の私には流石に申し訳なくなる。

そこで私は妥協案で半額という形で手を打ってもらうことにした。


「ようこそ《リジルの妖精亭》へ。これからよろしくお願いしますね、フィー」


「あぁ、世話になるよ」


こうして、私は王都での拠点を手にいれ、せいかつをはじまるのだった。










次の日の朝。

宿を出てギルドに向かう途中に市場を通った。朝食をとったのだが育ち盛りなのか、並べてある美味しそうな果実や香ばしい香りを放つ肉の匂いに私は既に負けていた。

瑞々しい梨をシャリシャリと齧り、《カウシープ》の串焼きでお腹を膨らませる。こんな生活してたら、デブになるかも。・・・財布も減るし、少し気をつけよう。

街に立ててある地図や看板を頼りに進み、昼になる少し前の時間だった。迷子になったのだ。仕方ない、仕方ない。

中に入ると、飲み屋のような雰囲気でゴツイ中年や細マッチョの青年、ごつごつの女性が武器や鎧を装備して自由に存在していた。

私は用事を済ませるために、さっそく受付へと向かう。


「あら、小さなお客さんね。ギルド総合連合へようこそ。御用はなあに?」


灰色の髪の獣人族の女性だった。狼型だろうか。スラッとした美人だった。


「ああ、ギルドに入りたい。登録を頼む」


驚いた顔をする受付さん、てっきり仕事の依頼かお使いに来たと思ったのだろう。


「えっとね、ギルドに入るってことは仕事中に死ぬ事もある危険なことなのよ」


「ああ、理解している」


「お嬢ちゃんはまだ小さいから危ないとお姉さん思うなぁ」


「魔物を何度も戦っているから問題ないさ。それに私は魔導士だ」


ますます疑わしそうな顔をされた、嘘じゃないのに・・・。


「とりあえず試験だけでもさせてくれ、それで分かるはずだ!」


小さい体で必死にアピールすると、少し待っててと受付さんが奥に引っ込んだ。

待っている間暇な私はもう一度辺りを見回す。

-----そう言えば、アイツにあったのもこの場所だったなと思い出を掘り起こす。

ゲーム時代、好感度やある特定のイベントをクリアすればNPCを二体連れて行くことができるのだが、私はエルフの男の娘を色々あったのちにこの場所で仲間にしたのだ。

超絶可愛いお姫様のようないでたちにボクッ娘というコンボは私の心を鷲掴みし、気づけば共に旅をしていた。


「姉さま!」


と呼ばれていた私はこの出来事から男の娘もアリだと新しい扉を開いてしまったのだ。うん懐かしいな。


「姉さま!!」


誰か野太い声に呼ばれている姉がいるのか、叫びすぎだろう。


「ネフィリム姉さま、こちらです!」


「ん?」


声の方を振り向くとそこには少し皺はあるが堀の深く、芸術のように整った顔立ち。緑のゆったりとした長いローブを着こみ、その隙間から見える鍛え上げられた筋肉。そして金の川のような髪からのぞき出る長い耳。

街やギルドで目にした他のエルフより美しい男がそこにいた。

えっ!?今私を呼んだのはこの男か?


「ああ、やっぱり姉さまなのですね!まさかまたお会いできる日がとは・・・森の神に感謝です!!」


「誰だお前?気安く私を姉と呼ぶな。お前みたいな大きい弟なんていない」


騎士のように膝立をし私に礼をする男。私がそう言ったら一瞬ででこの世の終わりみたいな顔をした。本当に誰なんだ?

周りの人(?)も驚きの顔を見せているので、それを見てさらに私も困惑が増す。


「あのー、ギルド長。周りの目もありますし・・・彼女も困惑しています」


「ああそうだねベル君、失礼した。少し話があるのでこの方を私の部屋にお通ししてくれ。・・・くれぐれも丁重にな」


声をかけられて立て直したエルフはさっきの受付さんに声をかけた。そうして次にエルフは見ていた全員に拡張の魔法を使って話しかける。

私は困惑する受付さんに連れられて奥の部屋に向かった。なんで登録するだけでこんなことになっているんだ・・・。

私はそっとため息をついた。

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