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11話『過ち』

ここは、どこだろう・・・。

埃っぽく、ジメジメして暗い。

辺りを見回すために立ち上がろうとしたら、ジャラリという音と、腕と足にいつも以上の重さ、鉄の冷たさを感じた。

見るとそこには鎖が付いていた。

何でこんなモノが?

うまく頭が回らない、なんだかボーッとする。

体がだるいし、不快感が全身を巡る。

ふと、ステータスを確認すると、《睡魔1》《虚脱》となっていた。

私は、状態回復魔法を使う。


「ッ・・・れ、・・・《レストア》ッ!!」


すると体のだるさもなくなり、鈍っていた思考も戻ってきた。

ここで私は、もう一度、自身の状態を確認する。

場所は地下の牢屋っぽいところ、手足には鎖、装備や道具、お金は全てなく、最低限の服だけだ。

これらから推測して可能性のあるのは、私が罠にはめられ誘拐されたということ。

思う返して記憶を遡るとあの小汚いマント男に連れられて歩いていると後ろから布が押し付けられ、一気に眠くなった。


「そして、気づけばここにいた・・・・・・というわけか」


思い返せば私は油断していたのだ。街中にいるという意味のない安心、私自身が苦労せず、普通より遥かに強い力を持っている事。

思うところはたくさんあるが、今それを気にしていても仕方ない。

反省は後でもできるのだから、とにかくこの場所から脱出しなくては。

もちろん、取られたものも取り返し、こんなことをした犯人にお仕置きをしてからだ!

それにしても、状態異常ってあんな感じなんだな、ゲームではアイコンに出るだけで分からなかったが、実際に体験するとこれまた不思議な感じだ。

これがもし、麻痺なら私には体に電気が流れ続けるような感じだろうか?

ではもし、毒ならどんなものなのだろう。

・・・・・・考えたら不安になってきたので、ここは脱出に再び意識を戻す。

さっそく私は鎖を破壊する。


「《ウィンドスラッシャー》、でサクッと鎖を切ってと」


手足をが軽くなり、自由になった私は、牢屋の錆びた格子を横に力いっぱい引っ張る。

すると、あっけなく形が変わり、私が出るには余裕のある隙間ができた。

私はそこから抜け出し、周囲に見張りがいないか確認する。


「よし、今なら行けそうだな」


私は明かりのある階段に向かって静かに進む。

すると、そのすぐそばで微かな声が聞こえた。


「・・・いよぉ。・・・ぱ・・・、・・・まぁ」


「・・・・・・ぶ。・・・て・・・から」


誰のものなのだろうと、近づいてみるとそこには私達の世界でいうと高校生くらいの赤い髪の少女と青い髪の小さな女の子が身を寄せて牢屋の中にいた。

そして逃げられないようにしているのか、先ほどの私のように手と足に鎖がついているのが見えた。


「ふぇ、こんなとこにいたくないよう」


「安心して、きっと神様が私たちを助けてくれるわ。そしてあなたをパパとママに会わせてくれるから」


少女は必死に小さな女の子を励ましている。

よく見るとほかの幾つもの牢屋に年齢のバラつきは見られるが、そのどこにも同じような少女たちが閉じ込められている。

どうやら私のいたのは、L字の地下で一番端の隅の牢屋だったようだ。

牢屋の数はおよそ7つ、そして人の数は11といったところだろうか。

さて、この子たち全員を連れて脱出はかなり危険だ。今いるこの場所がどこで、敵がどれだけの強さで、どのくらいいるのかもわからない。

だがこの光景を見て、放って逃げるのは選択肢として考えられない。それをしたら後悔が私の心を埋め尽くすだろう。

私はもう、何もできない人間じゃない。レベルの高プレイヤーなのだ。

いまの私なら、できるはずだ!考えろ、考えるんだ!皆を助けてここを脱出する方法を!!

力で蹂躙するのでは室内では私の力は危険すぎる。

下手をすれば建物が壊れて皆が生き埋めになるかもしれない。

ここは一度敵のすべてを先に倒して、後から皆を出口に誘導すれば・・・・・・、いやだめだ。もしかしたら私が戦っている間にここに誰かが来て人質にするかも。

ならば全員連れて戦うか。いや、いくら私でも後ろに11人の人を守りながら戦うのは私が強くても難しい。

そこでもう一度考える。

敵を倒すのは当然だ、しかしそれはもうこんなこと(ひとさらい)をさせないためと私の個人的な怒りの解消であって、それは彼女たちの安全を確保してからでもいい。

ならば、先に逃がしてさえしてあげればもう気にする必要はない、思う存分戦えるのだ

問題はその出口まで連れて行くのにほぼ百パーセントの確率で敵に遭遇するだろう。

そこで再び先ほどの考えに行くのだ。

ん?出口に行く?

・・・・・・そうだ!出口まで行くのが難しいなら傍に新しい出口を作ればいいんだ!

私はそこで思い付いた。

何も今ある道しか通ってはいけないというルールがあるわけではない、相手の用意した迷路を馬鹿正直に進むだけが正解ではないのだ。

そうと決まったらここがどんな場所か調べるとしよう。

マップと《ディティクト》を使い、建物と周囲の環境と敵の数、強さを調べる。(最初からこれをすればよかった)

作戦はこうだ。

1,防御魔法で彼女たちを保護。2,高威力の貫通魔法で外まで穴をあける。3,そこから風魔法で皆を運ぶ。4,安全を確認後、私の私による私のためのお仕置きタイム♪

まったくもって簡単だ、シンプルイズベストというものだ。

さぁ、プランは決まった。次は実行に移るとしよう。

私は、すべての牢屋をブチ壊し、彼女たちについた鎖を断ち切った。

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