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ひとしきり妹に笑われたところで、狩りを再開させる。
この死亡時レベルダウンと言うのはアバターレベルだけのようで、1つだけ上がっていた職業レベルはそのままになっていた。
一時間が無駄になったとため息をつきながら、今度は足元に注意をしながら角兎を狩り続ける。
それから20分ほどすると、やっとのことでレベルが上がる。
どうやらプレイヤーと同じようにモンスターも頭は弱点なようで、そこを攻撃すると通常よりも大きなエフェクトが発生する。
それに気がついてから狩りのスピードが格段に上がった。
アヤは、そんなことは知らないと、豪快に斬り伏せているが。
「よしよし、Agiに振って狩りの再開っと」
メニューを開き、ステータス画面を開いてポイントを割り振る。
さっきのレベルアップ分と合わせて、Agiの数値がかなり高くなっている。
「……さっきの分と合わせて?」
計算してみるが、やはりポイントは3レベル上昇した分と同じ数値になっている。
どうやら、死亡した時の文のポイントが下がっていない。
「バグ……かな?」
一応もう一度試してみようと、角兎を探す。
その際どこかに行ってしまったアヤにはメールで一度街に戻るとメールを送っておく。
「またレベルが下がるのは悔しいけど、ペナルティーは喰らいたくないしなぁ」
そう呟きながら、遭遇した角兎の攻撃をわざとくらう。
Defの数値が0のせいで、あっさりとHPバーは無くなり一瞬の暗闇の後噴水広場に戻る。
今度は誰にも見られていないようだ。
ステータスを確認する。
やはりポイントは減っておらず、上がったままになっていた。
それを確認したあと、メール作成画面に行き運営へと今回の件についてメールを送る。
「わざわざレベル下げて検証したんだから、少しは補填がほしいなぁ」
そう呟きながら、街の出口へと向かうために歩き出す。
その直後、鈴の音のような音が響く。メールだ。
開けば運営からの返事で、補填の件を期待しながら開くとそこには予想外の答えが書いてあった。
『仕様です』
四文字である。
コピペのような前置きもなにもなく、その四文字だけが書かれていた。
いや、突っ込むところはそこではない。
仕様ということは、バグではないということだ。
つまりこれは、運営が最初から設定していることとなる。
「マジか……。これ利用したら、小説みたいに俺TUEEEEEが出来るってことか……?」
掲示板に情報をのせるか?
いや、だが独占すれば、トッププレイヤーにだってなれるのだ。
少し悩んだ後、キョウはニヤリと笑い外のフィールドへと向かう。
「まずはStrを上げよう。角兎を一撃で倒せる程度まで上げたら効率はよくなる。後は、3レベルになる度に頭に攻撃を喰らって2つ下げるを繰り返すのが一番よさそうだ」
他のプレイヤーに聞こえないように小声で呟きながら歩く。
ふと、視界の右上に『!』のマークが出ていることに気がつく。
このマークは何かしらのお知らせがあるときに出るものだ。
確認すると、称号を手に入れたらしい。
『最初に死する者』
全プレイヤーの中で、最初に死んだ者に送られる称号。
設定したステータスに+10%。
途中で対象のステータスを変更することはできない。
説明文の下には、対象となるステータスを選ぶ画面が出ている。
当然Agiに設定し、メニューを閉じる。
街の門を抜けたキョウは、さっきまでいた辺りまで戻ると角兎狩を始めた。
2時間ほど狩を続けて、Strを角兎が一撃で倒せるまで上げたキョウは、当初の予定通りわざと頭に攻撃をくらい街へともどる。
あれからどれだけ死んだかわからない。
だが、仕様と言われた通りステータスが下がることは無かった。
アバターレベルは当然だが、職業レベルもいくつか上がっており新しいスキルも入手した。
『ハンティングアイ』
ハンターの持つ優れた動体視力を、さらに底上げする。
発動後、クリティカル発生確率が上昇する。
常に頭を狙って攻撃していたが、これを発動した後に攻撃すると、胴体に攻撃が当たったときに大きなエフェクトが発生するすることが何度かあった。
角兎は動きがそこまで早くないため、今はそれほど恩恵を受けることはなさそうだが、スキルレベルを上げるためにも切れる度に発動させていた。
まぁ、今となっては角兎も一撃で倒せるため、さらに影が薄くなっていきそうだ。
街に戻り、次の狩りの準備をしていると、ポーンという音が響く。
お知らせが来たらしい。
『連続ログイン限界時間が近づいています。強制ログアウトの場合データが保存されないのでご注意ください』
連続ログイン限界時間とは、体への負担を考慮して運営側が設定しているものである。
最長で4時間までログインでき、一度ログアウトすると休憩時間として1時間はログインが出来なくなる。
4時間を過ぎると、10分間の猶予時間があり、さらにそれを過ぎると強制的にログアウトさせられることとなる。
お知らせの内容の通り、強制ログアウトの場合は最後のセーブからそれまでの内容が保存されないため、注意しなければいけない。
セーブは、街中の場合は各セーブポイント(この街は噴水だ)、フィールドにいる時はセーフティーエリアがありそこでセーブができる。
ちょうどそのセーブポイントにいるキョウは、そこでセーブをした後にロガアウトを選択した。
今後の更新について、活動報告に書いておきました。