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ばっかじゃないの!?」
妹に馬鹿って言われた。
「つか、馬鹿じゃないの!?」
それも2度も。
兄の威厳なんてあったもんじゃない。最初から無いが。
「なら、そういうアヤはどういう風にしたんだ?」
「言ったでしょ、ゴリゴリの前衛にするって」
「ってことは、StrとDefか?」
「Str全振り」
「……」
名前のセンスといいステータスの振り方といい、どこまでも似た兄妹である。
人のこといえなじゃん、そう小さく呟きながらため息をつく。
「いい、兄ちゃん?そこにホーンラビットがいるでしょ?」
「いるな」
「こう近づいて……」
Agiにステータスが振られていないせいで、その動きはキョウとは比べ物にならない。
ある程度近づいたところで、角兎がアヤに気がつき向かってくる。
アヤの武器は、その小さな背中に背負われている大剣だ。初期装備だと言うのに、アヤの身長よりも大きいものとなっている。
武器が短剣であるキョウとはリーチがまるで違う。
「こう!」
大剣のリーチギリギリの所で、抜きざまに大剣を振り下ろす。
Agiの低さ(というか、0だが)を補うために、抜刀攻撃をメインで使っていくのだろう。
しかし、その振り下ろされる大剣の速度はStrの高さを利用しているのか、Agiが0とは思えない速度である。
大剣が角兎に触れた瞬間、角兎は光の粒子となって消えていった。
「これが、大剣の力!」
「いや、お前の力だろ」
もうひとつため息をついてから、今度はそれぞれで狩を始める。
パーティ登録はせず一緒に行動しているだけだから、倒した獲物の経験地は一人だけに入る。
それから1時間。
2人は一度合流して状況を確認し合っていた。
「どう、兄ちゃん?私はレベル6になったけど」
「3になった」
「おっそ!」
仕方が無いことである。
最初から一撃で角兎を倒すことのできるアヤとは違い、キョウは何度も攻撃をしなければならないのだから。
さすがに慣れてきたのか、時間は短くなってきたがそれでも5分はかかるのである。
「あと1体でちょうどレベル上がるから、もう一匹だけ狩ってくるわ」
そういって、ちょうど近くに沸いた角兎へと向かう。
すぐにキョウに気がついた角兎が戦闘体制に入り、肉薄してきたキョウへとその角を振り上げる。
何度もやったように、それをバックステップでかわ……そうとして、足を滑らせる。
「あ」
と言った時には、キョウは地面へとうつ伏せで倒れて行き、トスという軽い音とは違い結構な衝撃を頭に受けた。
目の前が真っ暗になり、次に視界が戻った時には噴水広場にいた。
「え?」
「え?」
たまたま通りかかった他のプレイヤーと目が合う。
βテスト開始数時間で死に戻りしたキョウとそれを目撃してしまったプレイヤーの、長いようでようで一瞬だった視線の交わりはどちらからともなくフイッとそらす。
(うっわー! 恥ずかしい! むしろ恥ずか死!)
自分のステータスを見れば、レベルが1になっていた。
頭部、すなわち急所に攻撃を受けて死んでしまったせいである。
幸いまだ序盤ではあるし、また1時間ほど狩をすれば取り返すことが出来る。
そそくさとその場を去ったキョウは、未だ草原にいるであろう妹の所へと向かうのであった。
ちなみに。
草原でボーッとしていたアヤは、キョウの姿を見るなり指を刺しながら爆笑していた。
~その後の掲示板~
【雑談】なんでも適当に その1
1・名無しの片手剣使いさん
なんでも自由にどうぞ。
誹謗中傷は禁止です。
256・名無しの弓使いさん
ちょwww
開始数時間でいきなり死に戻りしたやつがいるんだがwww
257・名無しの大剣使いさん
いや、まだサービス始まって2時間経ってないぞ?
258・名無しの弓使いさん
噴水前で知り合いと個チャで話してたら、目の前に転送されきたんだよ。
まだ転移用アイテムなんかあるわけないし、考えられるのは死に戻りぐらいだろ。
しかも、お互い目が合って、なんかすげぇ気まずくなった。
259・名無しの大剣使いさん
その光景を妄想するだけで面白いなwww
260・名無しの双剣使いさん
で、そのプレイヤーの職業は?
261・名無しの短剣使いさん
俺だよ。
もしかしてと思ったら、やっぱり話題になっていたorz
262・名無しの大剣使いさん
本人キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
263・名無しの双剣使いさん
本人キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
264・名無しの水魔法使いさん
本人キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
265・名無しの短剣使いさん
とりあえず、弓使い、おぼえておけよ。
266・名無しの弓使いさん
ぴ、ぴーけーは禁止されてるんだぞ!