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妹の彩花をまつ間に、ヘルプをざっとみる。
このヘルプは辞書に近い形態をしており、項目の中のリンクの貼られた単語を選択すれば、その単語に飛べるのだ。
だいたいの事は合同チュートリアルで教えてもらったことだが、このヘルプにはさらに一歩踏み込んだ事が書かれている。
例えば、左手を横に振るとアイテムのショートカットが表示されるのだ。
あらかじめここにセットしておけば、戦闘中でも一々メニューを開かなくても直ぐに使えるというわけだ。
ただし、登録できるアイテムは10種類までとなっている。
とりあえず、今持っている初心者のポーション×5をセットしておく。
初心者のポーションにリンクが貼られていたので項目に飛ぶと、このアイテムはレベルが10までの間はポーションが無くなった時にギルドに行けば無料で5個貰うことが出来るらしい。
「これ、結構大事なことだよな。覚えておこう」
ギルドもリンクされていたので開こうとしたとき、キョウに影がさした。
顔を上げれば、彩花によく似た顔をしたアバターがそこに立っていた。
「おまたせ」
プレイヤーネームはアヤだ。
どうやら、兄妹して似たような感性をしているらしい。
「とりあえず、フレンド登録しておくか」
メニューを操作してアヤにフレンド申請を送るが、変な音と共にキャンセルされてしまった。
「あれ?」
「あ、さっきから申請がすごく多くて、拒否設定してたんだった。こっちから送るね」
アヤがメニューを操作すると、今日の目の前にウィンドウが表示される。
『アヤがフレンド申請を送りました』
YESのアイコンをタッチして、フレンド登録を終える。
「兄ちゃんはスカウトにしたんだ」
「お前はファイターなんだな」
「ゴリゴリの前衛にするつもり」
ひとまず情報を交換したあと、二人は早速狩りに行くことにする。
町のNPCに聞けば、西の草原が初心者向けのエリアらしく、そこに向かうことにする。
やはり、といったところではあるが、他にも狩りをしようとしているプレイヤーは多くいた。
二人は町から少し離れた所に行き、獲物をさがす。
「お、あれかな?」
少し離れた位置に草を食べている兎がいた。
毛は白く、思わず顔をうずめたくなるが、それは難しそうだ。
二人の気配に気がついたのか、兎が顔を上げる。
『ホーンラビットとエンカウントしました』
その名の通り、兎の頭には10センチほどの角が生えており、体に刺さればとてもいたそうだ。
「じゃあ、まずは俺から行くか」
腰からショートソードを抜いたキョウは、その俊敏性を生かして角兎の背後をとる。
横一文字に振るわれる短剣。
しかしその攻撃はヒットしたものの、大したダメージを与えていないようで、角兎の頭上にあるHPバーはほんのわずかしか減っていなかった。
角兎は、振り向きざまに角を振り上げてくるが、それをバックステップで回避し、すぐに短剣を振り下ろす。
やはり、与えたダメージはわずかだ。
「こうなりゃ、手数で勝負だ」
10分ほど先頭を行い、やっとのことで角兎を倒すことに成功した。
「ふぃー、なんとか倒したわ」
額の汗を拭う行動をしながら、アヤの元にもどる。
俊敏な動きを利用して戦っていたためダメージは受けていないが、かなりの時間を有した。
アヤは腕を組みながらつま先で地面をトントンと叩いていた。
「時間かかりすぎ。筋力の数値どんだけ低いの?」
「まぁ、0だしなぁ」
「……ごめん、もう一回」
「Strは0」
「……」
どや顔を決めてくる兄に、その背中の大剣をぶちこんでやりたくなるが、PKになってしまうためグッとこらえる。
「どういう割り振りにしたの?」
「素早さ特化」
「えっと……、つまり……?」
「Agi極振り」
主人公、ついに喋るの巻
3話はスマホで執筆。
4話はタブレットで執筆。
素直にPCで書いた方が良いということがわかった。