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その知らせは世界中のオンラインゲームをする者を、歓喜の渦に巻き込んだ。
『Avalon Online』は人々が待ち望んだ世界初のVRMMOとして脚光を浴び、そのリリースを誰もが待 ち望んだ。 そしてついに今日、オープンβテスターの募集が開始し、サーバーはすぐに落ちた。楠木恭祐もそれ に応募したひとりである。一応言っておくと、募集は抽選であり他の人より速く応募したからといって 受かるわけではない。
応募するのにはいくつか条件があり、例を上げるなら
・18歳以上である
・1年以上の断続的なプレイをする事ができる環境にいるもの
・スポーツを本格的にしていないもの といった、普通なら首を捻りそうな内容が多くあった。 事実、何人ものひとが不思議に思ったが、『世界初のVRMMOだし仕方ないのだろう』と納得し、泣 きながら諦める人や引きこもりには関係ないとばかりに嬉々として登録した人など多岐に渡った。ちな みに、恭祐は後者である。
そして一ヶ月後、テスターとして受かった者は全世界で10万人で、受かった者には健康診断書ととも に仮契約書にサインをして郵送する旨が書かれた書類が届き、ここで残った者は約9万5千人となった。
幸運にもテスターとして選ばれた恭祐は数ヶ月ぶりに外に出てシャバの空気を吸った。向かう先は保 健所だ。 余談ではあるが、数ヶ月ぶりに外出どころか、部屋を出た恭祐を見て両親は抱き合いながら泣いて喜 び、妹の彩花は『あ、出てきたんだ』ぐらいの目で恭祐を見ていた。
後日テスターの元には、テストプレイは指定の場所で行い期日は無期限であることが書かれた書類と 最後の契約書が入っていた。 何度も書類を確認したうえで契約書にサインをし郵送。これで恭祐ははれてβテスターに選ばれたの である。 なお、最終的に残った人数は約8万人であった。
契約書を出して数日後、恭祐の元には集合場所が書かれた地図が届けられた。 そして出発の日、何故か隣には大きな荷物を持った彩花がいた。聞けば妹もテストプレイヤーとして 受かっていたらしい。たしかに彩花は兄である恭祐とは違い出来がよく、中学校 を卒業すると同時に外国へと留学し、去年18歳の時に『大学卒業してきた』とまるでコンビニでアイス 買ってきたぐらいの軽い発言とともに帰ってきたのである。 恭祐が引きこもり始めたのもその頃からだが、綾花に引け目を感じての引きこもりではないとだけ、 恭祐のためにいっておこう。
両親も、彩花がいるなら恭祐も大丈夫だろうと、二人の出発を手を振って見送った。
某県の港から数時間船に揺られて行ったところにある小さな島が、目的地である。 船の中には日本人だけでなくあらゆる国からの人たちが集まっており、彩花は何度か国内外問わず話 しかけらていた。まぁ確かに、贔屓目にみても彩花は『守って上げたい系』の美少女だ。どことなく小 動物を彷彿させる。
島に到着すると大きなゲートがテストプレイヤーを出迎え、その奥にはいったい何階まであるのか 数えるのも面倒になるほど高いビルがドンと待ちかまえていた。 到着したプレイヤーは国別でエリアごとに分けられ、小さな個室へと案内された。
個室にはあらかじめアンケートで答えたとおり布団が用意されており、小さな冷蔵庫もある。 あけてみれば、各種ジュースやお茶が置かれていた。酒類はVRへのダイブ時の安全性のために置かれ てはいないが、係りの者に言えば持ってきてもらえる。ただしその場合は半日の間ダイブはできなくな る。 風呂、トイレは衛生管理上別の所に用意されている。
全員がそろい説明が始まるまでの間、恭祐はそれぞれの個室に用意されている冊子を手に取り読むこ とにした。
ゲームの世界は剣があれば魔法もあるし、銃といった近代武器もあるらしい。 世界中の人々がプレイするため、神話類に登場する神の名前を持つ敵は存在しないらしいが、ゲーム 内であらゆる物事を決めるAIは、日本神話の国産みからイザナギと名付けられてはいるらしい。昔のゲ ームには神だろうと悪魔だろうとすべてを『悪魔』と呼ぶものもあったらしいし、それに比べたらぜん ぜんマシだろう。
自分の操作するキャラクターは、基本的には本人の姿がトレースされるらしが、身長や体重、髪型や 色、瞳の色などは変えることができるとのことである。ただし、身長、体重現実との違和感を小さくす るために±10以内と決められている。
冊子も粗方読み終わったところで、アナウンスが流れた。
『それでは全員が揃いましたので、合同チュートリアルを行います。各テーブルにおいてあるヘッドギ アをおかぶりください』
読んでくださりありがとうございます。
物語が始まるのはもう少ししてからかもです(笑)
それでは、
コンゴトモヨロシク