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M-01(モデル-ゼロワン)──時を超えた約束  作者: とろろ
第1章

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第5話 兄との約束

酒場を意気揚々と走り出ていくデイヴの後ろ姿を目で追いながら、一人ポツンと酒場に残ったエリサは懐かしむように微笑む。


「ほんと、あの子ったら小さい頃のアンタそっくりね。」


酒棚の隅の写真には幼い少女と少年が写っている。


彼女は目線を横に移しながら軽く微笑み、酒瓶を一つ手に取る。


"アイリッシュウイスキー"


「アンタはよくこれを飲んでたっけな….。」


──────────────────


ライアンの作業場まで向かう最中、デイヴはふと、《《ある場所》》に寄り道していた。


それは、とても見晴らしの良い丘の上だった。


(兄ちゃんはよく、丘の上から遥か前方を指差し、下に臨む家々を見渡しながら僕に色々説明してくれたっけ。)


目を瞑ると、今でも当時の光景を昨日のことのように思い出せた。


──────────────────


「ここは見晴らしが丘って言うんだよ。俺が名付けた。いい景色だろう?あれが俺たちの家で、それから…」


そうしている時の兄の横顔は、どんな時よりも楽しそうだった。


デイヴもまた、そういう兄を見ている時が一番幸せだった。


ここは、彼の物心がつく前から兄に連れてきてもらっていた場所だった。


兄、テイラーはここが"世界一好きな場所"だとよく言っていた。


弟のデイヴもここが世界一好きな場所だった。


「毎週、必ずここに二人で来ような。俺たちだけの約束だ。」


「うん!」


これ以上に満ち足りた気持ちは無かった。


──────────────────


デイヴはそっと微笑み、中央の巨木に目をやる。


大木の根元には《《何か》》が埋められていた。


彼はもう一度それを掘り返す。


出てきた物は古びた靴だった。


それは、兄の物だった。


彼はこれを両手で抱え込み、大粒の涙をこぼした。


彼はただ、ただ繰り返し呟いた。


「ごめんなさい…」


彼は本当は直接兄に謝りたかった──。


──────────────────


兄はいつしか、どういうわけかこの丘に行こう、ともこの丘のことすら何も言わなくなっていた。


そのため、デイヴは一人で丘に行くことが多くなっていた。


しかし、彼は本当は兄と一緒に丘に行きたかった。


ある時、彼は兄に言った。


「あの丘、また兄ちゃんと行きたいな。」


すると、兄からは思っても見ない返事が返ってきたのだ。


「あの丘?何のことを言ってるんだ?」


デイヴはみるみるうちに青ざめた。


母は嘆くように俯いたまま、黙り込んだ。


彼は兄の言葉が信じられなかった。


彼と兄だけの特別な場所。


それを兄が忘れるはずがない、と。


デイヴは悩んだ挙句、あることを思いついた。


兄の靴を黙って持ち出し、例の丘に隠したのだ。


兄は必死に探すだろう、考えるだろう、そうすれば思い出してくれるに違いない。


きっと思い出してくれるはずだ、と。


しかし、兄はとても慌てたが、最後まで例の丘の所を探すことは思いつかなかった。


そのまま天に昇ってしまった。


兄の死の知らせをライアンたちから聞いた途端、彼の心はぐちゃぐちゃになった。


暫くは兄の死を受け入れられなかった。


葬式にも出席することが出来なかった。


一人で部屋で泣き崩れていた。


しかし、いつからか彼はその気持ちを克服できていた。


エリサが足繁く彼の家に通い、兄の英雄譚を彼に語って聞かせたのだ。


最期まで弟たち、守るべき人々全てを忘れずに散っていった兄。


いつしか、彼も兄のような義賊になりたい、と思うようになっていた。


彼は涙を拭い、靴を再び元の位置に戻すと元気な足取りで丘を下り、ライアンの作業場目指して一直線に駆け出す。


胸に輝くネックレスの先に付いているUSBをチラリと見て、彼は呟いた。


「見ててね、兄ちゃん。」


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