第3話: 誤算
「皆んな、予定通り頼むぞ!」
隊長のジャックが手で合図を送る。
ここで自分たちの出番とばかりに素早く前方へ進み出た双子がいる。
「俺たちに任せろよ。」
得意げな表情を浮かべニヤニヤしているのは、ヒューイとドゥーイだ。
彼らは集落一の器用さを誇る連携プレーを得意とする。
双子は息を合わせて邸宅の2階の窓枠に手をかけると腕から放つレーザー銃を使って一気に焼き切る。
下方を覗くと夜間警護の警備員が忙しなく行き来をしている。
幸い彼らはまだこちらに気が付いていないようだ。
屋敷への侵入に成功すると、ここからは5人ずつ二手に分かれて行動する。
ジャック率いるAチームとライアン率いるBチームだ。
無線で随時互いに連絡を取り合う。
テイラーはAチーム、エリサはBチームへとそれぞれ加わった。
(頭痛が起きないでくれ!)
テイラーは心の中で祈り続けた。
流石、この一帯1番の富豪だけあって邸宅の中はまるで迷路のようだ。
──すると突然、警報が響き渡る。
「何故だ?!何故俺たちの侵入がバレた?!」
一同が戸惑いを隠せず立ちすくんでいる中、隊長の声が響く。
「散れ!一箇所に固まるな!俺が敵を引きつける!その間に逃げろ!」
隊長は1人逆方向へと走り出し銃を上方に撃ち鳴らした。
「おい、こっちだ!」
彼は皆の視界から消えていった。
テイラーたちは一心不乱に後ろを振り返らずに
走った。
後方ではけたたましい銃声が鳴り響いている。
「ギャアアアア!!!!」
方々から仲間たちの断末魔の悲鳴が聞こえるような気がした。
テイラーの頬に涙がつたう、と同時に左脚に激痛が走った。
「ヴッ!!」
彼は弾みで近くの溝に転がり込んだ。
──それから数時間が経過。
(うっ、頭を打ったようだ。一体、俺はどれくらいの時間気絶していたんだろう?)
彼は溝の隙間から気付かれないように辺りを見回す。
すると、後ろ手に拘束された人影がこちらに近づいてくるのが見えた。
(あっ!)
押し殺した声を危うくあげそうになってしまった。
(ライアンとエリサが捕まってる!)
彼は敵側の人物を目視しようと凝視した。
(人影が暗がりに2、3人程見える…。)
とその時、彼は目を見開いた。
目の前の光景が信じられなかった。
その中にヒューイとドゥーイの姿があったのだ。
(あの双子、俺たちを裏切りやがった!!!)
「ご苦労、良き仕事だったぞ。」
濃いブロンドの髭を蓄えた人物が双子に向かって語りかける。
双子は薄ら笑いを浮かべて深々と頭を下げた。
(あの男がこの邸宅の主、ルーカス・ブランフォードか?)
エリサとライアンの2人がブランフォード氏と思われる人物の前で立ち膝をさせられている。
「フッ!仲間を売って食う飯は美味いか?」
ライアンが嘲笑の笑みを浮かべながら双子に唾を吐きかける。
「ああ、美味いねぇ。」
双子の内の1人、ヒューイがそう言いながらライアンに膝蹴りを喰らわせる。
「こいつら、どうします?」
双子の片割れ、ドゥーイがそう言いながらせせら笑っている。
「フン、貧民の捕虜など保存価値が無い。ここで始末しろ。」
ブランフォード氏の冷酷な眼差しが光る。
「了解。」
ドゥーイはエリサの額に銃口を突きつけた。
「"敵に捕まった時は自死"だよなァ?」
「やめろォォォ!!!!!」
その時、テイラーの身体は反射的に溝から這い出してエリサたちの方へ駆け出していた。
「テイラー、来るな!!!」
ライアンが叫ぶと同時に敵が一斉に彼を見る。
──しかし、
(ア"ッ!!!)
ズキンという激しい頭痛ともに地面に向かって吐血してしまった。
「おやおや、義賊とやらには病人もいるのか?余程の人欠か?」
ブランフォード氏が彼に向かって軽蔑の眼差しを向ける。
「……お、俺は病人じゃねぇ……。テイラー・ドレイクだ!」




