第2話: 古びたUSB
部隊長ジャックが若者たちを集める。次の《《ヤマ》》について話し合うためだ。
「えー、次の仕事についてだが、テイラーには外れてもらう。」
唐突の厳しい一言に一同は静まり返った。
「ど、どうしてですか!テイラーが一体何をしたってんですか!」
「そうだ、そうだ」
口火を切ったのはエリサだった。
他の仲間も口々に叫ぶ。
ライアンだけは少し俯き沈黙している。
「…参加させて下さい。お願いします。」
テイラーがゆっくりと口を開き、深々と頭を下げた。
「しかし、彼には──」
隊長が言い終わらないうちにライアンの拳が先に出ていた。
「テメェ、何を言おうとした!!!」
彼の震える拳は隊長の顔面スレスレで止まっている。
「彼の経験と力は私たちには不可欠です。どうか考え直して下さい。」
エリサが仲裁しつつ、述べる。
「俺はどうしても家族のために稼がなくちゃいけないんです。どうかお願いします。」
彼は頭をつけて土下座をした。
隊長は俯き暫く熟考した後、口を開いた。
「今回だけは様子を見てやる。」
面々の瞳に希望の光が宿る。
「だが、もしもお前が原因で我々が窮地に陥る様な事態に遭遇すれば、その時は容赦無く置いていく。良いな?」
隊長が付け加えた。
「はい。勿論です。」
テイラーが涙ぐみながら応える。
「辛気臭ぇなあ。お前の腕を持ってすればそんなことは絶対にない。お前一人で全部抱え込もうとすんな。俺たちはどんな時も一蓮托生だ。」
ライアンが彼の肩を叩きながら言った。
「み、皆んな……。」
テイラーの目頭が再び熱くなる。
その時、
「おい、ライアン。どう言う事情であれ、歳上に楯突いた罰だ。お前が今晩の見張りをやれ。」
隊長が鋭く釘を刺す。
肩をすくめるライアンを見て、一同は互いに微笑み合った。
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決行日の前日。
テイラーは幼い弟と共に森林を散歩していた。
幼い弟デイヴは久しぶりに兄と一緒にいられて、とても上機嫌だ。
最近のテイラーは仲間たちとの格闘技の練習に日夜明け暮れていたため、母や弟と過ごす時間を殆ど確保できていなかった。
「おい、デイヴ、あんまり先へ行くなよ!」
にこやかに手を振るテイラーをよそに、デイヴはどんどん森の奥深くに進む。
小川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、そして木々の間をすり抜けるそよ風全てが心地よい。
デイヴはこの時間が永遠に続けば良いのに、と思いながら目を瞑った。
が、しかし突然兄のつんざくような呻き声が脳裏を貫く。
「ウガァァァァァ!!!!!」
「どうしたの?兄ちゃん」
「痛い、痛い痛い痛い!!!!」
テイラーが頭を抱えてその場にうずくまっている。
デイヴが急いで兄の元に駆け寄ると、兄は弟の手に何かを握らせた。
「……約束だ……。これは必ず母さんやお前を守ってくれる……。」
見ると、それは古びたUSBメモリだった。
──そして決行当日。
今回狙うヤマは大富豪の邸宅だ。
今までに侵入したものよりも遥かに警備が厳重なことで有名だ。
テイラーは地図を前日まで何回も見直し、腕や掌にこれでもか、というくらいに詳細な地図を描き込んだ。
ヴァーチャルヴィジョンを使った地図もテイラーの時代には開発されていたのだが、これはまだ一部の富裕層の間にしか流通していない。
ジャック率いる一同、十数名が邸宅脇の木陰に身を潜め、隊長の合図を待つ。
「いいか、捕まったら即アウトだ。俺たちの集落は未だ公には知られていないが、俺たちの中から捕虜が出ると芋蔓式に集落の位置まで敵に知られてしまう。絶対に捕まるな。もし捕まったら自死を選べ。」
一同は静かに頷く。
テイラーは掌に滲む昨日の吐血の痕に目線を送ると再び前を向き直す。
「行くぞ!」




