第12話 テイラーとの再会
「も、もしかして…ジェシカ、お前は死人だったのか…!」
そのデイヴの問いに対して、ジェシカは軽くほくそ笑んだ。
「うーん、それは《《半分正解で半分間違い》》ってとこかな。私は死人と生人の中間の存在、半屍人なの。通常の死人は肉体を持てず、現世と死後の世界の行き来は出来ないけど、私は可能なのよ。」
新たな情報の洪水にデイヴの頭の中はパンクしそうだった。
「今、僕はどういう状態なんだ?死んでるのか?」
彼は自分の手を見ながら動揺を隠せず言った。
「死んでるか、生きてるかで言えば生きてるわ。かろうじてね。全員、《《こっちの世界》》に引き込むつもりだったんだけど、あなたのそのネックレスが邪魔したのよ。引き剥がそうとしてもどうしても出来なかった。」
ジェシカは忌々しそうにデイヴの胸のミレクリスタルを指さした。
「カズたちはどこだ!彼らに何をした!」
強く詰め寄る彼に対し、彼女は後退りしながら呟いた。
「本当に知らないのよ。私の役目は定期的に現世の生人をここに連れてくること、それだけ。連れてきた後のことは末端の私には知らされない…。」
彼女はため息をつきながら続けた。
「狭間の空間にいつまでも閉じ込めておくわけにもいかないから、あなただけは特別に現世に返してあげるわ。」
その時、彼の胸のクリスタルが強く光を放った。
「兄ちゃんだ!兄ちゃんはまだ生きてる!」
彼はクリスタルの光が強くなる方へと駆け出した。
暗闇の中を彼は手探りで進む。
すると、何やらドアのような物を見つけた。
「デイヴ!それは絶対に開けないで!開けたら最後、もう二度と帰って来られないわ!」
ジェシカの声が暗闇の中をこだまして響いてくる。
彼は少しも躊躇わず思い切ってドアを開けた。
すると、ドアの先にはデイヴが元いた世界のような見渡す限りの草原が広がっていた。
クリスタルの光が一段と強くなった。
(ここに、兄ちゃんがいる!)
そう思った彼は勢いよくドアの先の世界へと飛び出した。
心地よい風が吹き抜けてゆく。
現世と何ら変わりない草原だった。
ドアを閉じると、ドアは跡形もなく消えていった。
それは、彼がもう後戻りが出来ないことを示唆していた。
彼はクリスタルの光を方位磁針代わりにして道を進んで行った。
すると、鉄筋コンクリートの巨大な建物に行き着いた。
クリスタルの光はここが一番強い。
建物内からは大勢の男性の声、特に罵声が大きく聞こえる。
しかも、足には重機を動かしているような鈍く、そして激しい地響きが伝わってきた。
(鉄格子の窓から中を覗ける!)
そう思った彼は鉄筋の壁をよじ登り、格子の隙間から中を除いた。
すると、建物内では大勢のボロ布を羽織った男性が力を合わせて一つの重機を動かしていた。
とても重い機械らしく、倒れ込む男性もいたが、その度に監督官らしい男性に鞭で打たれていた。
その中に──。
(あっ!兄ちゃんだ!)
テイラーの姿もあった。
デイヴは頑張って兄に合図を送る。
テイラーはデイヴの存在に気づいたが、首を傾げただけで作業を続けてしまった。
死後の世界において、テイラーの記憶障害は末期を迎えていた。
「昼食休憩だ!」
監督官の男はベルを鳴らした。
作業をしていた男性たちは手を止めて昼食配給間の前に列を作り始めた。
テイラーもその列に並ぶのかと思いきや、彼は反対方向に歩き出した。
「そっちは壁だ!何もないぞ!」
周りの男たちは一斉に彼を指さして笑い出す。
「この薄らバカ、とうとう配給列の場所も分からなくなったか?」
テイラーに足をかけて転ばそうとする男もいる。
(やめろ!兄ちゃんに何をするんだ!)
デイヴはよっぽど叫びたかったが、今ことを荒らげればテイラーにより迷惑がかかる。
彼は憤る気持ちを頑張って沈めようと努めた。
(兄ちゃん、絶対に助けるから待ってて!)
彼は心に強く念じた。




