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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅱ:自分探しの同行者編
9/23

episode,Ⅲ:再会

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブが改めて、いざ暗黒の森へ足を踏み出した時だった。

 彼の耳に、他には決して聞こえない音──コールが聞こえた。

 そのコールで彼を呼び出せる存在は、ただ一人。

 (ひいらぎ)ヴェルハルトだ。

 ナムウドッグは動きを止め、その場でコールを意識で繋いだ。

 これに早速、相手が先に言葉を放つ。


『俺だ。ヴェルだ。聖綴(さとと)──だった奴?』


「ああ、ヴェル。我はナム──いや、器であった聖綴であった者だ」


 ナムウドッグは暗黒の森の前で、誰にともなく口を開いて返答する。


『このケータイが実在すると言う事は、あの夢でのやり取りも実在したんだよな?』


然様(さよう)だ」


『じゃあ言わせてもらっていいか』


「ああ。何なりと」


『お前に会いたい』


「……‼」


 ヴェルハルトの言葉に、息を呑むナムウドッグ。


『お前と面と向かって、話がしたい。お前が来るか、俺がそっちに行くか。その場合どうやって、どこに行けばいいのか──』


「待て待て待て。落ち着け。我がヴェルの元へ行く。今我がいる所には、ヴェルには過酷であろうからな」


『じゃあ今来てくれ。すぐに来い』


「了解だヴェル。(しば)し待っていろ」


 ナムウドッグは言うと、彼との通話──念話を切断した。


「急用が出来た。ここにはまた改めて出直す」


 ナムウドッグは言うと、大きく翼を広げる。


「それを聞いて安堵した。さらばだ厄災」


「……フン」


 暗黒の森に見送られ、ナムウドッグは飛び立つと目にも留まらぬスピードで現世──この世と繋がる出入口であるエルサレムから出て、大洋(オケアノス)を光の速さで飛空し日本の第五都市の内の一つにある、スラム街へと到着する。

 時間帯は明け頃で、空は紺碧色に染まっていた。

 いつもは深夜まで騒々しいスラムだが、さすがに夜明け前となると眠りに落ちるのか、静まり返っている。


「来たぞ、ヴェル」


「……ああ」


 ヴェルハルトは短く返事する。

 暫しの沈黙。


「それで、用件は何だ」


 先に口を開いたのはナムウドッグだった。


「俺をお前の行き来に同行させろ」


「……それは──」


「無理とか言うなよ。お前には不可能はねぇんだろ?」


「ぐ……っ」


「同行させろ」


 言葉に詰まるナムウドッグに、更にヴェルハルトは口調は静かだが気迫を込めて喰らい付く。


「……我は構わんが、そなたの精神が持たぬやも知れんぞ」


「構わない。ただし一つ条件がある」


「何だ」


「聖綴として同行させろ」


「……それは無理だ」


「どうしてだ」


「それは、もう聖綴の器……肉体を焼失されている。体の一部があれば何とか聖綴になれんでもないが──」


 するとヴェルハルトがロケットペンダントを投げて寄こした。


「その中に、聖綴の咽喉仏の骨が入っている。それじゃあダメか」


「……いや……問題ない……」


 偶然にしては、用意が出来ていた事にナムウドッグは少し、驚愕した。


「聖綴の形見だ。断じて失くすなよ」


「……了解した」


 ナムウドッグは返答すると、そのロケットペンダントを己の心臓の中にドスッと突っ込んだ。


 ──ドクン‼


 ナムウドッグの心臓が大きく高鳴る。

 ナムウドッグは心臓から手を引き抜くと、両翼で我が身を包み込む。

 すると、(しばら)くしてからその両翼の形が崩れて大量の羽毛が、風によって飛ばされる。

 その翼の中から、先程のナムウドッグから釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)になった姿が、現れた。


「これで構わないか、ヴェルよ……──⁉」


 気付くとナムウドッグは、ヴェルハルトに強く抱き締められていた。


「聖綴……会いたかったぜ……‼」


「ヴェル……‼」


「さぁ、一緒に行こうぜ‼ 俺はどこまでもお前の後を、付いて行く‼」


「ヴェル……」


 ナムウドッグは、ヴェルハルトの情熱に感極まるものがあった。

 本来のナムウドッグにはなかった感情だ。

 おそらくは、聖綴の遺骨を心臓に埋め込んだ事による、変化だろう。


「──うん! 一緒に行こうヴェル‼」


 そう口走ったナムウドッグの人格は、もう十二歳の聖綴のものとなっていた……。


「まぁ待て聖綴。そう急ぐなって。ひとまずゆっくり酒でも呑んでから行こうぜ。聖綴復活の祝杯だ‼」


 ヴェルハルトは言うと脇に置いていた(ぬる)い缶ビールを取り出し、一本を聖綴に差し出した。


「煙草は? いるか?」


「いる」


「良し! 絶好調だな聖綴‼」


「うん‼」


 そうして煙草とビールを暫く堪能してから、気付くとヴェルハルトはすっかり眠ってしまっていた。


「……何も急ぐ事でもないか」


 聖綴はそう小声で口走る。

 ナムウドッグのおかげもあり聖綴は全く眠らずとも平気だった。

 よって眠ると言う行為は聖綴もしくはナムウドッグの概念にはなかった。

 聖綴は、自分の名が刻まれている墓石を、ぼんやりと眺める。

 そして線香立ての中に山積みになっている、煙草の吸殻を見て己の人生を短絡的に振り返ると少年は、クスリと小さく笑った。




 八時間は眠っただろうか。

 聖綴は特別何をするでもなく、その八時間の中のんびりビールを呑みながら自然に、ヴェルハルトが目覚めるのを待った。

 時間は十三時になろうとしていた。

 その頃には周囲も当然ながら目覚め活動している中で、聖綴の姿を確認した者達が驚愕を露わにしていた。

 自分達の目の前で確かに死んだ筈の聖綴が、よもや目の前にいてビールと煙草をかっ喰らっているとは夢にも思わなかったからだ。

 だが聖綴は平然としたまま自分の墓前で、リラックスしていた。


「ん、うーん……」


「……起きた? ヴェル」


「……あ、聖綴……聖綴か。夢じゃなかったんだな。本物の聖綴だよな」


「まぁ……本物と言うキーワードが当てはまるかは謎だけど、そうなんだろうね」


「草。エモ。マジエモ」


 座椅子の上でヴェルハルトは嬉しそうに言うと、跳ね起きた。


「よし! 飯食ったら出発するか!」


「うん!」


 聖綴は満面の笑みを浮かべた。

 



 墓地を出て、スラム化しているアーケードの前を通過して、暫く歩いたらどんぶり専門店〇乃屋があった。

 そこでヴェルハルトと聖綴は食事をする。

 聖綴は別段、何も食べなくても本来ならば平気なのだが、ヴェルハルトに合わせて食事を摂取した。

 空腹感満腹感はともかく、食した時に覚えるその食事の味覚、もしくは"味わい"を楽しむ事は面白く、好きだった。

 こうして食事を終えてから、ヴェルハルトは言った。


「さぁ、じゃあ行こうか聖綴。お前の目的に向かって」


「うん!」


 聖綴は首肯すると、背中から翼を出す。

 そして人の目を気にする事なく、聖綴はヴェルハルトを横抱っこすると、上空へと飛び立った。



ここまで読んでくださったあなたに愛を込めて!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです☆

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