episode,Ⅱ:天と地の境界線
【登場人物】
*釘鎹聖綴(12歳)……身長142cm。自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。
*柊ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。
*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。
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「シュワッチ‼」
「ジェアッチ‼」
天使達が山積みになる。
だがしかし、青白い光がその天使達の山積みの隙間から漏れ出たかと思うと、天使の山は大きく膨れ上がり軈て光と共に天使達は弾き飛ばされ、空中で消滅した。
「ううむ解せぬ……何故に我はこうも攻撃され拒絶されねばならぬのか。まぁ天使の方はピクシーの一件がある故解からぬでもないが、地獄に至っては何故か。我が"厄災"だからか? しかしそれは、地獄も近しく大差ないだろうに」
言いながらナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブは空を仰ぎ見る。
そこには無数の天使が壁や行列になり、ナムウドッグを注視している。
「フ……この孤立している我に対してこの群衆か。余程我を排除したいと見える。厄災だからか……然様。ならば自分探しをするまで‼」
ナムウドッグは言うと、天使の行列に突っ込んで行った。
「よぉ坊主。一人か」
柊ヴェルハルトが、釘鎹聖綴の墓前に置いてある座椅子で寛ぎながら、お菓子を食べている所だった。
突然声をかけられ、ヴェルハルトは頭上を見上げた。
するとそこには、ツーブロに長く伸ばした髪を後ろで縛り顎髭、鼻にリングピアス、耳にも無数のピアスをした男が、立っていた。
年齢的には成人に見える。
「……」
ヴェルハルトは無言を返すと、そのまま無視して再びお菓子を食べ始めた。
「ふぅ~ん。ガン無視? てめぇイキってんじゃねぇぞクソガキがぁっ‼ 日本語解かりますかキーック‼」
男はヴェルハルトへキックを放った。
これをヴェルハルトがクロスさせた腕でガードするとそのまま相手の踵を引っ掛け、クルリと腕を回転する様に払った。
それによりバランスを崩した男は、盛大に墓地で背中から引っ繰り返る。
「知ってっかオッサン。墓地で転ぶとさぁ……地縛霊から呪われるんだぜ……」
「やっ、やめろバカてめぇっ! 俺は怖い話とか心霊が苦手なんだよーっ‼ うわあぁぁぁぁー‼」
男はヴェルハルトの脅しに、顔面蒼白になって逃げて行った。
「だったら墓地にも入って来んなってんだ。バーカ」
ヴェルハルトは吐き捨てると、清涼炭酸飲料のペットボトルを仰ぎ飲んだ。
そして丁度太陽が視界に入って、ヴェルハルトは少し顔を逸らす。
「……まぶっ」
軈て大きな溜息を吐く。
「生きがいって、何だろ」
とても十四歳の少年が零す独り言ではない気がするが。
この墓地は、段になっていて六段ある階段を上る必要がある。
よってヴェルハルトは少し高台から、路地の向こうにあるスラムエリアを眺められる。
いくつかのグループとかリーダーとかいる中で、ヴェルハルトだけは一匹狼だった。
聖綴が生きていた頃はスラム内も闊歩していたが、聖綴が死んでからはこの墓地に居つく様になっていた。
今はただ、喧嘩に明け暮れていてそこから金を徴収している生活を、送っていた。
聖綴と一緒の頃は、彼の掏りで生計を立てていたが……。
「情けねぇな俺。昔の俺は金をいつも、聖綴に見繕ってもらててさ……まぁでも、掏りの手口を教えたのは俺なんだけどさ。もう十四になったから俺がやると捕まるのを避ける為に、任せる様になった。けど……」
ヴェルハルトは独り言ちると、ポケットに手を突っ込むと中身を取り出した。
そこには、ナムウドッグが彼に夢の中で渡した携帯電話が、握られていた。
「ジェアッ‼」
「ジョワッ‼」
天使達が光線をナムウドッグへ放射してくる。
「厄災だと⁉ 一体この我が何をやったと言うのだ‼」
ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブは言いながらその光線を避けては、手刀で天使達に反撃する。
手刀を受けた天使は、シャボン玉の様に弾けて消滅していく。
「それとも何か⁉ この外見に理由があるとでも言うのか⁉」
「ジョワ‼」
「ジェアァァーッ‼」
「駄目だ。やはりそなた等天使共とは言葉が通じぬ。そういう意味では、まだ闇の方が言葉が通ずる。相手を変更する」
ナムウドッグは述べると、暗黒の森の方へと引き返した。
するとそれを確認した天使達が攻撃をやめ、こちらに向いたままその場から後退して行った。
これにナムウドッグは眉宇を寄せる。
「あやつ等……こっち側までには来れぬのか……?」
『その通り』
野太い濁声がナムウドッグの独り言に答える。
その声の主は、暗黒の森であった。
『あやつ等は、こちら闇には触れられんのだ。その逆もまた然り』
「何故に?」
『それは互いにとって毒であるからだ』
「毒……?」
『うむ。それぞれのエリアの大気や水そのものが、互いにとって毒となる。故に、互いのエリアに乗り込めぬし近付けぬ』
「ふむ。相反する存在ゆえに、と?」
『その通り』
「己のエリアで万が一の戦となり、破壊を招く事もないな」
『まさに』
「ならば、我には効かぬのは何故だ」
『……天界人ではないのか、はたまたこの地界人に等しい存在なのか、だな。しかして我等にとってもやはり詳しくは、判らぬ』
「ならば我を改めて、中に入れよ」
『……随分と傲慢な輩よ』
「うむ?」
『主、先程中で何をしたのか、よもや忘れたとは言わせぬぞ?』
「?? 我が何かしたか?」
『うぬ……なかなかめでたい頭をしておるな』
「それは褒められておるのか、貶されておるのか?」
『それはうぬの判断に任す。それよりもだ。上空からうぬは我等暗黒の森へ侵入したのだぞ。ならば一応通す。しかしながら、もう断じて我々を攻撃するでない』
「そっちが手を出さなければな」
『愚かな。先程はうぬが先に手を出したのだぞ⁉』
「で、あったか?」
『やはり、うぬ……相当頭の中めでたいぞ。まぁともかく、それを約束出来るのであらば中へ通そう』
「良かろう。約束致す」
『うぬ、本当に自分本位よの……ならば改めて、通るが良い』
言うと暗黒の森は、ゆっくり重々しく荊の蔦を解いた。
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