episode,Ⅲ:それぞれの孤立
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「あーあ……何やら段々と……思い出してきた……」
ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブは玉座で酒をカッ喰らいながら、ふとそう言い洩らした。
「えっ、何をっスか⁉」
ピクシーがナムウドッグの肩の上で、ドキッと胸を高鳴らせて声を裏返す。
「我は……"厄災"だったのだ……」
ギクッ‼
「やややや、やくさい?? って、何でス、か⁉」
ピクシーが更にとぼける。
「貴様……我を愚弄しておるのか」
「そそそそ、そんなっ! 滅相もない‼」
「ならば、言葉の意味も我の立場も、把握出来ていような⁉」
「は、は、は、は……はい~……」
ピクシーは顔面蒼白である。
「そもそも我には、この様な玉座も、居場所も、存在しなかった筈だ。何せ我は、"厄災"ゆえにな」
「……ッ‼」
ピクシーは、こっそりとその肩から立ち去ろうとするが。
「誰の差し金だ」
「はいぃっ⁉」
「これは誰の差し金だと聞いておるのだ。貴様も何故この我の元にいる⁉」
「そそそそそそっっ、そ、れ、は……ぁ~……っっ」
ピクシーは後退りすると、一旦立ち止まってからピョイとナムウドッグの肩から飛び降りた。
「だからアタシは責任持てないって言ったのよぅっ‼」
だが。
ガシィッ‼
「はわぁあぁ~っ‼ つっ、捕まったあぁぁ~‼ 助けてくださぁい天使様ァァァ~ッ‼」
「──天使、だと……⁉」
ナムウドッグが眉宇を寄せる。
直後。
「シュワッチ‼」
突然ナムウドッグに向かって光線が飛来して来た。
「⁉」
咄嗟にナムウドッグは半身を捩じって、その光線から避ける。
と、その僅かに緩んだ手から、ピクシーが抜け出ると素早くナムウドッグから、逃走を図る。
「この虫けらがあぁあぁぁーっ‼」
ナムウドッグは怒鳴ったかと思うと、まだ自分の間合いにいるそのピクシーを、素手で叩き潰し殺害してしまった。
ピクシーは潰れたトマトの様になっている。
「ジョ……ジョワ……ッ‼」
ピクシーの救出に姿を現した天使が動揺を露わに、その潰れたピクシーへ震える手を差し出す。──が。
「それで救命でもする気か? 甘いわっ‼」
ナムウドッグはその天使へ向けて、片手の手刀を左から右へと払った。
瞬間。
「ジ……ジェアァ……ッッ‼」
天使の首が、ゆっくりと落下する。
そしてパァンとまるでシャボン玉が弾ける様に、天使は光の粒子になって消滅した。
ふと足元を見ると、血痕を残してピクシーの死体も、姿を消していた。
「フン……成る程そうか……更に思い出してきたぞ……我の戯言を、面白がって実行しおったか! 神めがっっ‼」
ナムウドッグは憤怒の形相で玉座を足蹴すると、壁へと迫って拳を叩き込んだ。
するとそこは、小さなヒビを作ったかと思うと、軈て大きな亀裂が走って砕け散り、暗黒の空間が姿を現した。
「舐めおって……我への贖罪のつもりか……⁉ 笑わせたいのか愚鈍めがっっ‼」
ナムウドッグは壁を掴むと、まるで紙の切れ端の如く、引き破った。
「我を見下すでないわっっ‼」
そうして暗黒の闇の空間に足を踏み出す。
そこはまるで、星のない宇宙空間の様だった。
音もなければ光も風も何もない。
「……我の面倒は、我が己でこなす……っ!」
ナムウドッグは唸る様にそう吐き捨てた。
その言葉は、闇の中に飲み込まれた。
響く事も、通る事もなく。
ただ、ポツポツと。
「釘鎹聖綴が、そうであったように──」
──そして月日は流れ、柊ヴェルハルトは否応なしに己の中の孤独感を、痛感していた。
いや、そういうよりも寧ろ、聖綴がいなくなった事に。
たった二年の付き合いではあったが、心臓を鷲掴みされたかの様に、孤独感が募った。
四人の姉弟はいたが、血の繋がりがあるそんな姉弟達よりも、聖綴の方がずっと解かり合えていた。
気も合ったし、本当の自分らしさも出せた。
その気持ちもあり自暴自棄になっていたヴェルハルトは、喧嘩に明け暮れていた。
よって気付けば、スラムで最強になっていたが、それがヴェルハルトにとっては気に食わなかった。
聖綴のいない所で、たった一人だけで最強になっても、虚しさしかなかった。
「柊さん、こんにちは」
「柊さん、お疲れっス」
「……」
スラム内では、みんながヴェルハルトを恐れ戦いた様子で接して来るが、ヴェルハルトは黙ったままそれらを無視した。
いつしかヴェルハルトの居心地の良い場所は聖綴の墓の前だった。
路地を挟んだ反対側のスラムスペースにいるJK三人が、そこから見える墓地のヴェルハルトを見つめながら言葉を交わしていた。
「あの人、超ビジュいいんだけど、ああしていつも墓地に一人でさぁ」
「うんうん、分かるぅ~!」
「不気味なんだよねぇ~!」
スラム暮らしの女子達がそう言い合っている事にも、ヴェルハルトは気付きもしない。
「カッコいいんだけど……」
「勿体ないんだよねぇ」
「ねぇ薬、持ってない?」
「ああ、あるよ。市販薬でいい?」
「うん。充分」
「いくら?」
「3」
「ぼったじゃね? まぁいいケド。分かった……はい、じゃあこれ、3で」
少女が三千円受け取ると、もう一人の少女がレスタミンコーワの箱から一シート取り出し、その子に渡す。
「サンキュ」
「別に」
ヴェルハルトはスラムから持ち込んだ座椅子に身を委ねて、聖綴の墓前で向き合っていた。
「なぁ聖綴ー。俺、このままだと大っ嫌いな大人になっちまうよ……今でこそ喧嘩のおかげでシャバ代くれる奴等出て来て、何とか金には困ってねぇけど……でもやっぱり虚しいってーか、その、つまんねぇよ……聖綴がいねぇと、全っ然つまんねぇ」
その時だった。
「ぅわエグッ、マジでここにいたんだけど」
「うわマジだエッグ! 草すぎる!」
「ねぇハルト兄ちゃん、家帰らないの?」
「何やってんのこいつこんな所でバカじゃね⁉」
ヴェルハルトの二人の姉と、二人の弟の四人だった。
これに舌打ちをして四人へ背を向けるヴェルハルト。
「早くこっち来いって! 私達がママに叱られんだよ⁉」
一人の姉がそう吐き捨てたのを、ヴェルハルトも吐き捨てた。
「知るかクソが‼」
するともう一人の姉が言った。
「ママがお前だけ施設に入れるとか言ってたし‼」
途端ヴェルハルトは、霊園に敷き詰められている砂利を掴むと四人の姉弟達に向かって、振り返り様に投げつけていた。
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