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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅲ:悪の溜まり場編
15/24

episode,Ⅱ:肉欲地獄

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 第二圏谷の入り口であるミノスの裁判所を抜けて、本格的に第二圏谷の中へと入った。

 そこは、欲望に負け理性を捨て肉欲の罪を犯した者達が、堕落する地獄であるのだが。

 ここでは全く光がなく、轟風の如き絶叫が一切静まる事もなく響き渡っている。

 その地獄にはありとあらゆる暴風が休まず吹き荒れ、亡霊の群れに叩き付けていた。

 亡霊の群れは、荒虚の前へ進むと絶叫し泣き喚き、神を呪い罵った。

 亡霊達は衣服など与えられず、全裸姿の為にこの地獄が与える轟風は、とてつもない苦痛と言えた。

 それが欲望に溺れ理性を失った肉欲の罪を犯した者に与えられし、運命だった。

 その嵐の中には、有名なエジプトの女王クレオパトラ、戦争の原因を作ったヘレナ、その彼女を略奪したパリス、マルク王の妃になる筈だったイゾルデと恋に落ちたトリスタン等々だった。

 しかし中には他にも、果たしてその者達が"肉欲の罪"でこの第二圏谷に堕とされたとは、(はなは)だ理解に苦しむカップル(・・・・)もいて、それらはこの地獄の辛苦に負ける事無く嵐に吹き飛ばされその渦に巻かれながらも、決して離れず強く手を繋ぎ合っている男女の姿もあった。

 自分の身に起きている苦痛に負ける事無く、互いの為ならと固く手を握り合い、抱き締め合う男女達。

 相手もいずに一人で嵐に飛ばされている亡霊達は、確かに自分本位でこの苦痛から一刻も逃れるべく楽になるべくと、(かつ)ての相手など気にも留めずに助けを求めている亡霊も、確かにいたが。

 そうした互いに手を取り抱き締め合っている男女の場合は、己よりも相手をせめて少しでもこの苦痛から守ろうと、必死になっている様だった。


「……この地獄を取り仕切っている奴はどいつだよ⁉」


 (ひいらぎ)ヴェルハルトが嵐に目を凝らしながら、そう述べた。


「うん。ヴェルの言いたい事は分かるよ俺も」


 ナムウドッグから釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)に入れ替わった当人が、そう同意する。


「子供でしかない俺達ですら見て明らかなんだ。手を握り合い、一緒にいる人達とは(よこしま)な気持ちはないよ。助けよぅ!」


 聖綴は言うと嵐に向かって手を掴み、引っ張り出す仕草を取った。

 すると聖綴の手の動きに合わせて、一組のカップルが嵐の中から引き摺り出てきた。

 そのカップルに、聖綴が尋ねた。


「あなた達はどうしてこの地獄に?」


 これにそのカップルは涙ながらに答えた。


「互いの愛情を激しく求め合ったばかりに、抑えきれなくなったのが罪だと、認定されてしまったらしいのです……‼」


「……ふーん?」


 これに聖綴とヴェルハルトはキョトンとした。

 それもそうだ。

 彼等はまだ十二歳と十四歳の子供だ。

 性行為に関してはまだ、無知であった。

 つまりはこうだ。

 この地獄の世界では、性行為は"正常位"でだけしか行ってはいけないらしく、それ以外の体位を行った者はこの肉欲地獄に堕とされるのだ。


「よく分からないけど、君達の愛欲は間違いないんだよね?」


「はい。嘘偽りなく、互いを純粋に愛し合っています‼」


 これにヴェルハルトが口を開いた。


「神ってぇのは確か、愛を唱えているよな? それなのに、この人等の愛情は罪だとするのは、矛盾してねぇか?」


「そこだよヴェル」


 聖綴は首肯する。


「俺はこの人達の愛情は悪ではなく、善だと思う。よって彼等を俺は、天へ送ろうと思う」


「……──え? お前そんな事出来んの⁉」


「俺を誰だと思ってるの? 本体はナムウドッグだよ? だから、不可能はないよ」


 聖綴は不敵な笑みを浮かべると、そのカップルのそれぞれの手を握った。


「君達に天のご加護があらん事を」


 聖綴がそう唱えると、何とカップルは浮かび上がり、天へと昇って行った。


「スゲー! お前、神じゃん‼ でもよ、天の神から受け入れられ認められなかったらどうすんだ?」


「大丈夫。神は天に来た魂を無下に扱う事が出来ないから。強制的に天の住人になっちゃうんだよ」


 言うと聖綴は、他にもいる嵐の中のカップルを引っ張り出しては、同様の事を行い繰り返した。




「よし。以上だね。じゃ、先に進もうヴェル」


「おう。でもよ、それなら辺獄でも出来たんじゃね?」


「うん。そうなんだけどね。この力を使えるのに、今知ったんだ。それにここまで来て、また辺獄には戻れないっしょ」


「それもそうだな」


 ヴェルハルトは短く答えて、聖綴と一緒に歩を進めた。

 天に招かれ行く事が出来る亡霊はほんの稀で少なく、一方で地獄に堕ちる亡霊の方が圧倒的に多いのであった。

 よって、ナムウドッグの力にて今しがた何組かのカップルを天に送ったので、恐らく天界では珍しく大忙しくなっているに違いないと思われた。




 それを他人事にナムウドッグ(いわ)く聖綴は、ヴェルハルトと一緒に次の第三圏谷へとやって来た。

 しかしここで、ヴェルハルトがウッと鼻を抑えた。


「臭ぇ! 一体何だここ‼」


「ここは第三圏谷の入り口だよ」


 聖綴も鼻を抑えながら答える。

 まだ入り口でしかないのに、第三圏谷の中の悪臭が入り口にまで臭ってきていた。

 悪臭の原因は、第三圏谷の中にあり、それは冷たく呪われた重々しい永劫に降り続けている雨で、大粒の(ひょう)や濁った水、そして時に雪が暗黒の空間に容赦なく絶え間なく降るそれらに濡れた大地が、悪臭を放っているのだ。

 だがそんな悪臭の中にて、平然と呑気に寝ている者がいた。

 貧食刑の執行人ケルべロスだ。

 そう、あの有名な頭が三つある獣だ。

 一般的には犬とされているが、この場合、果たして犬と呼べるのか疑問を抱かずにはいられない、酷い姿であったが鋭い牙と爪を持っているのは確かだ。

 第三圏谷の総領はプルートだが、その"飼い主"よりもこの地獄の看守であり刑の執行人であるケルベロスが最早、主と呼んでも良かった。

 体も2m程と巨体だ。

 首の周りに生えている毛は、蛇の姿をしてウネっていて、大食漢にしてどうも怪奇な獣だった。

 寝ているのを幸いに、聖綴とヴェルハルトが入ろうとした時、亡霊がこっそり脱出を試みたせいでその気配にケルベロスが目を覚ましてしまった。



ここまで読んでくださったあなたは素晴らしい!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです☆

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