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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅱ:自分探しの同行者編
11/24

episode,Ⅴ:黙する地獄門

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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「片手を使って両目を塞いだら、俺の核なる本体の名を呼んでから手を離して」


「本体の……名前?」


「うん。そう。今から教えるから」


「おう」


「俺の核なる本体の名前は、"ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ"って言うんだ」


「……ん?」


「だから、俺の核の名前だよ」


「うん。それは判るけど、思いの外随分長ったらしくてややこしい名前だなぁ、と……」


「それは確かに」


 釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)は言うと、ケラケラと笑った。


「それで、本体の名前、覚えた?」


「えっと……ナム……ナムウダック=キリピス・タナステグアとさとえ」


「似てる様で全然違うねぇ。もう一回言うよ? "ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ"」


 これに耳を傾け、口の中で反芻(はんすう)していた(ひいらぎ)ヴェルハルトは大きく頷いた。


「OK分かった! 言うぞ? ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ‼ こいつでどうだ⁉」


「うん! 正解! それが俺の核なる本体のフルネーム。だから忘れないでね。その名前を唱えてから、手を離すんだよ? 解かった?」


「解かった!」


「うんうん♪」


 ヴェルハルトのリピートアフタミーに、聖綴は満足そうに首肯した。


「しっかし、マジここ陽の光が一筋も射し込めねぇ程、暗いな」


「それは言えてる。でもまぁ、ここは"暗黒の森"と呼ばれてるからさ。やっぱ建前上暗くしとかなきゃ、立場ないんじゃない?」


 聖綴の言葉に、ヴェルハルトは愉快がって笑った。


「確かに! それは言えてる‼」


 しかし未だ(かつ)て、この森をこうも楽しそうに通過する者が果たして、存在したであろうか。

 恐らく、否である。

 この暗黒の森は、迷い込んだり入り込んだりした者を絶望や混乱に(おとしい)れ、そして深く恐ろしく誰も無事で出られない場所とされている。

 しかしこの二人の少年は、そんな事などお構いなくワイワイキャッキャとはしゃぎながら闇に慣らした目で、森の中を通過した。

 聖綴がナムウドッグの時でさえ、軽い混乱を起こして森に攻撃を与えたにも関わらず。

 何も判らない分、子供は最強だった。

 無知である事はある意味最強なのである……。

 そういうわけで、こうして無事に暗黒の森を通過出来てしまった二人の少年は、超巨大な扉を前にした。


「……この門……何か書いてある」


「ああ。本当だな」


 そこには、赤く光る三行連句と最後に一行があった。

 こう書かれている。


『我を潜れば憂いの都あり、我を潜れば永遠の苦患あり、我を潜れば滅亡の民あり。義は尊き我が造り主を動かし、聖なる威力、比類なき智慧、第一の愛、我を造れり。永遠の物のほか物として我より先に造られ死はなし、憂いの国に行かんとする者は門を潜れ。永劫なる呵責にあわんとする者はこの門を潜れ。迷惑の人と伍せんとする者はこの門を潜れ』


 それら銘文の最後には、こう記されていた。


『しかして我永遠に立つ、汝等ここに入る者一切の望みを棄てよ。我を入る者』


「……」


 その銘文をジィッと腕を組んで見つめる二人。


「何て書いてあんのヴェル?」


「いや、俺も長らく学校行ってねぇからなぁ……」


 ……この馬鹿二人を主役にして本当に良かったのか、作者としても(いささ)か疑問ではあるが、ひとまず先へ進もう。


「とりあえず中に入ろうぜ」


「うん。そうだね」


「いっせーのーで、で一緒に入ろうぜ聖綴!」


「OK! いいよ!」


「んじゃ……」


 二人は顔を見合わせると、まるで悪戯っ子の様な笑みを浮かべ声を揃えて言った。


「いっせーのーでっ‼」


 二人は門の敷居をピョンと飛び越えて、門を潜った。


「ィエッヘ~イィ‼ 中に入ったぜ聖綴~‼」


「そうだなヴェル~♪」


 そう、それぞれ口にした少年二人はハイタッチすると全身をくねらせ、希望に満ち溢れていた……地獄の門には、一切の希望を棄てよと書かれているにも関わらず……。

 やはり無知は、最強なのかも知れない。

 だがここで、何やらギャイのギャイのと騒ぎ声が二人の耳に届いた。


「え、何々??」


「はしゃぎ声と言うよりも悲鳴に近いか……?」


 聖綴とヴェルハルトがそちらへ顔を向ける。

 そこは地獄門と三途の川アケロンの間に、闇に眼を慣らした二人の視界ですらも視えない、勿論星の明るささえもない暗黒の空間がある事に気付く。

 これに聖綴は空間からランプを、ヴェルハルトは携帯電話のライトでその闇を照らしてみた。

 中からは、泣き喚く悲鳴や甲高い絶叫が響いている。

 それだけじゃなく、何より羽音も聞こえる。

 その中から照らし出したのは、無数の亡者達が全力疾走で一瞬でも立ち止まる事もスピードを緩める事も叶わずそのスペースで、円を描く様に走り回っていてその理由が、無数の(あぶ)(はち)に刺されまくり血塗れ、また全身腫れ上がった全裸の姿でそれらから逃げ回っている、光景だった。


「何だアレ……」


「地獄の前庭──Vestibolo(ヴェスティーボロ)って看板ある……」


 そこには人間だけでなく、天使も混ざっていた。

 羽毛も(むし)り取られて、ボロボロな姿だ。

 すると突如、野太い声が背後から聞こえた。


「あ奴等は、善悪どちらをもせず無気力に生きた事なかれ主義の連中で、そのせいで地獄にも天国からも受け入れてもらえない魂達だ」


 その声は地獄の門からだった。

 その門の表面には、至る所に人が絡み合った細工が施されている。


「この地獄の前庭は、神からも悪魔からも嫌われて天地両方どちらからも受け入れられないが為に、ここで永遠にこの罰を受け続けている」


「へぇ~。何もせずどっち付かずに生きると死後、こんな罰が待ち受けているってぇのか」


 ヴェルハルトが述べる。


「しかしお前! お前は言葉が利けるんだね?」


「ああ、そうとも」


 聖綴からの問いかけに、地獄門が答えた。


「だったらお前に尋ねたい事がある」


「何なりと申してみよ」


「お前はナムウドッグの事を知ってる?」


「な……っっ!」


 これにグッと言葉を詰まらせる地獄門。


「へぇ、知っているのか。じゃあ教えて欲しい。ナムウドッグが一体何者なのかを」


「しっ、知らん!」


「いやいや、今のは知ってる反応だったよ」


「私の様なただ変わらず同じ場所から動けぬゲートが、知る筈がなかろう‼」


「ふーん……メチャクチャ焦っている理由さえ教えてくれたらここまでで見逃してあげるよ……さぁほら、白状してご覧……?」


「グググ……ぜ、全天地界から"厄災"に断じて関わるなと、お達しが来てそれで知っただけだ‼」


「……誰から?」


「……」


 聖綴は問い詰めたが門はすっかり、黙り込んでしまった。



ここまで読んでくださったあなたに喜びがあらん事を!

大変ありがとうございます‼

良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。

「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです☆

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