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元ヤン脳筋ギャルの鬼パリピオンライン/鷹司雛美の終末やり直しプレイ日記  作者: たけのこ
終末人類圏ミーティア

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24.聲

ポケモンZAしたくて震えてる()

「こ、ここです!」


 雑多に入り組んだ帝都の路地を歩くこと暫く――街壁に見下ろされる帝都の隅っこに、他の大きな集合住宅に囲まれながら小さくポツンと佇む一軒家があった。

 外観はボロく、板での継ぎ接ぎや、穴の空いた屋根に布を被せるなど、本当に家として機能しているのか疑問に思えるほど酷い。

 ただまぁ、それでもどんな人が居るのか分からない場所でテント張って寝るよりも遥かにマシだろう。

 雨風凌げる屋内で、それも周囲に変な人の気配もなくて、初心者にしては贅沢な宿を見付けられたのではないだろうか。


「狭くて汚いですがどうぞ」


「お邪魔しま〜す」


「しま〜す」


「失礼するわ」


 内装は……外観ほど酷くはないね。

 玄関から入ってすぐにテーブルとソファがあって、その奥にキッチンと地下室への階段が見える。

 布張りの天井の穴から月明かりが薄らと漏れてるけど、雨漏りはしてなさそうだ。


「好きな場所……って言ってもボロいソファしか無いんですけど、それでも良かったらそこで寝て下さい」


「分かった! ありがとう!」


 口々にお礼を言いつつ、玄関に一番近い場所にハルカ、逆に遠い場所はナナが寝る事になった。

 これはもし仮に強盗とかが入って来た時に、一番最初に攻撃を受ける可能性のある場所に耐久力のある戦士を配置しておこうとナナが言ったからだ。

 まぁ、と言っても襲撃時にログイン中じゃないと意識ないからあんまり意味無いんだけどね。念の為にね。


「奥の地下室が工房なので、そこには入らないで下さい」


「りょ!」


「人様の家を勝手に彷徨かないわ」


 アスタはいつも工房に居るので、もしも何かあれば階段の上から声を掛けて欲しいと言って去って行った。

 改めて彼女にお礼を言いつつ、そろそろ本気で時間がヤバいという事で挨拶もそこそこに三人同時にログアウトした――


「――ん〜! つっかれた〜!」


 VR機器を外し、ベッドの上で伸びをしながら声を漏らす。

 身体は動かしてない筈なのに、なんだか激しい運動をしたのかってくらい疲れてる。心地よい疲労感だから問題ないけど。


「人気だと言うだけあってめっちゃ面白かったな」


 プレイヤーとNPCの区別が難しいし、NPCが本物の人間みたいで、彼らと接するうちに『あれ、こっちも現実だっけ?』と錯覚を覚えてしまう。ゲームの世界を『第二の人生』なんて呼ぶのは言い得て妙だなと。

 ワールドクエストのシナリオ自体はまだまだ全然序盤だし、これから更に面白くなっていくのかなぁ。


「さぁ、夕飯とお風呂を済まして早く寝よ」


 明日も学校があるしね〜、早く寝ないと寝坊で遅刻しちゃうぜ。






「すいません、改めて先ほどはありがとうございま――」


 地下の工房に大事な物を起き、貴重な配給の砂糖と小麦粉を使った焼き菓子を持って行くも、最後までお礼を言い終える前に彼女達の様子に気付く。


「も、もう寝てる……大変だったんだろうな」


 こんなに寝付きが良いって事は、本当に疲れ果てていたんだろう。

 ついさっきまで機獣達の大規模な侵攻があったし、それを潜り抜けて来たんだから尚更だろう。


「何時までこんな生活が続くのかな……」


 三人に一番清潔な毛布を掛け、勿体ないからと用意した焼き菓子を齧る。


 ――壊せ


 前触れなく脳内に響いた声に肩が跳ね上がる。


 ――全てを壊し、殲滅せよ


「だめッ!!」


 大きな声での拒絶。直後にハッと我に返って三人の様子を確認する。


「……起きてない」


 ――壊せ、壊せ、壊せ、全てを破壊しろ


「……っ、くそ……」


 いつもこの声はこうだ。自分を解放しろと、そして全てを破壊しろと要求してくる。

 頭の中でずっと声が響くのも参るけれど、この声自体に力があるのが厄介だ。

 声が一つ囁く度に、私の中で破壊衝動が湧き上がる。ジワジワと布に水が染み込む様に、頭の中を侵食して、視界が真っ赤に染まってしまう。


 ――それらは其の敵、破壊せよ


「ぁ、ぐっ……」


 フラフラと身体を揺らしながら、震える手がヒナミさんの首へと伸びる。


 ――誰も其を愛さない、其の味方は居ない


「やめっ、て……」


 怒りが、悲しみが、負の感情が溢れて止まらない。


 ――殺せ、壊せ、命を砕き、墜とせ


「違う! 違う違う違う! 僕は壊すんじゃなくて、創りたいんだ!」


 ――無意味、無駄、無価値、壊せ


 両手を胸に抱き、その場に膝を着く。


 ――壊せ、其はここだ、其だけが其の味方だ


 ダメだ。コイツだけは解放しちゃいけないんだ。

 こんな危ないヤツの言葉に惑わされたら、本当にみんな死んでしまう。

 僕が、僕らが抑え込まないといけないんだ。僕らにしか出来ない事なんだ。


 ――壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ


「助け、て……アスタリア……」


 怖い、怖いんだ……この声を聞いていると僕が僕じゃなくなっていくようで、僕の自我が激流に呑まれて消えていくような気がしてならないんだ。


 ――壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ、壊せ


「……アス、タリア……」


 頭の中で響き渡る声に耐え切れず、この日も私はあの子に助けを求めながら意識を落とした。

なんやこの毒電波ァ!

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― 新着の感想 ―
少しは安全になったと思いきや、これかぁ……
この子、中に機兵がいるのか、何かのパーツでも埋まってるのかなあ? それともこの子自体が機兵?
さすたけ、不遇を積み重ねていく
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