22.帝都入り
「ご協力ありがとうございました。こちらは入街許可証になります」
「ありがとうございまーす」
機兵たちの大規模攻勢を凌いで暫くしたところ、やっと私達は帝都に入る事が出来ていた。
帝都を襲っていたのはあの中隊長機兵が率いていた部隊だけじゃなかったし、色んな戦闘に遊撃隊みたいに参加しては転戦しまくって、それでそろそろ集中力が切れそうだなって思った時にはなんかいつの間にか終わってた。
どうやらトッププレイヤー達が頑張ったらしいけど、戦場の隅で雑兵相手にチマチマと戦っていた私達にはあずかり知らぬこと。
それでやっと戦闘が終わったから帝都に入れるかと思えばそうはいかず、私達は正規の軍人じゃなかったせいでややこしい立場になった。
この時代のこの世界に国と呼べる場所は帝国しか存在しないので、私達が他国の間者だと疑われる事はない。でも素直に難民だと信用される訳ではないのだ。
なんと機兵側に寝返った人間も中には居るらしい。ポッと現れた戦力を諸手を挙げて歓迎できるかと言えば、そうではない。
ここで私達が機兵の味方ではないだろうと信じて貰えるくらい、今回の大攻勢で機兵に大損害を与える活躍をしていれば違っただろう。
けど私達は戦場の隅でチマチマとヤバそうな人達を助けて回っていただけで、全体で見た活躍というか、貢献はそこまでじゃないし、確認作業もすぐには終わらない。
そして目の前で『未来から来ました!』と言って追い出された他プレイヤーを目にしてしまったので、素直に自分達の身の上を語る訳にもいかなくなった。
なので非常に時間が掛かった。どうにかこうにか貴方達の敵じゃありませんよー、と主張してみても簡単にはいかず、頭が良くて口が回るナナが頑張ってみても旗色は悪く……明日も学校があるし、そろそろ諦めようかなってところで『物資が枯渇気味だ』という会話を耳にした。
そこで『機兵の残骸ならありますよー』とログアウト前に半分くらい処分しようかなって、そんな気楽な気持ちで溜め込んでいた機兵の残骸を放出したら『これだけの数を倒してるなら信用しても良いだろう』って事でやっと帝都に入れる事になったのだ。
「長かったぁ……」
「ここまで警戒されるなんて思わなかったわね」
「なんか中途半端に戦う力があったのが原因っぽいよなぁ」
「そうね、なんの力も持たない弱者なら普通に難民として受け入れられたかも知れないわね」
私達がここまで帝都に入るのに手こずった理由はたった一つ……強くもなく、弱くもなかった、これだけだ。
彼らの目の前で文句なしの活躍を出来るほど強くなく、彼らが警戒心を抱く程度には弱くはなかった。
「これ他のプレイヤーはどうしてるんだろ?」
「……集団で活躍するか、何もしないか?」
私がポツリと漏らした疑問にナナが推測を口にした。
「力を持った国家に属さない組織というのも警戒に値するけれど、組織として多大な貢献をすれば一先ずは味方として見られるでしょう。逆に何もしなければ、力を見せなければただの難民として潜り込めるのではないかしら」
「なるほど〜」
「つまりはあれか? ウチらは初心者特有の失敗をしたのか?」
「確定ではないけれど、まぁ概ねそうでしょうね」
じゃあ私達の目の前で追い出されたあの人も初心者だったのかな〜?
「一先ず今日はもう難民キャンプに寄ってログアウトしましょ」
「そうだなぁ、気が付けばもう二十時だもんな」
「えっ、まじ?」
慌ててリアル世界の時刻を確認してみれば『20:21』と出ていた。
「あちゃー、思ってたよりも熱中してたね」
「想像以上に面白かったからな」
まぁ、全然夜更かし出来るけど、ゲームの為に生活リズムを崩すのも変な話だ。
寝不足はあらゆるパフォーマンスを下げるというし、これからも楽しくゲームを遊ぶ為にもちゃんと寝よう。
「ログアウトしてる間の私達ってどうなってんのかな? ゲーム内時間は進むんでしょ?」
「普通にログインするまで寝ている扱いよ」
「無防備じゃない?」
「そうね、普通に盗難や殺害に遭ったりするらしいわ」
「うぇっ、マジかよ……」
ログアウトしている間に他のプレイヤーやNPCに物を盗まれたり、殺されたりといった事があるらしい。
そのため、ログアウトする時はきちんとした場所でするのが推奨されているとか。
「難民キャンプでログアウトして大丈夫?」
「それしか選択肢が無いのよ……まぁ、巡回は多そうだから祈るしかないわね」
難民キャンプへと向かう道すがら、何度も兵士と思われる集団とすれ違っていた。
だいたい二人から四人くらいの組み合わせで、周囲を隙なく見渡しながら巡回している様子だった。
そんな彼らの抑止力がきちんと通用している事を祈りながらログアウトするしかないらしい。
「宿に泊まれないかなぁ」
「お金と信用がある人しか泊まれないし、既に何処もいっぱいだって許可証をくれた人が言っていたじゃない」
「ま、地道に信用を稼ぐしかないってこったな」
「そっか〜……何をすれば良いんだろ?」
「……さぁ? ウチもわかんね」
「そういった事は明日考えましょ」
「へ〜い」
ナナの提案にハルカと一緒に同意を示す。
「どうか盗まれませんように――盗んだらコロス」
「物騒だなおい」
「犯人が見付かる訳ないでしょ」
装備とか盗まれない様にと祈り、二人からツッコミを受け、それもそうだと自分で自分に苦笑する。
「……で? 私達は今どこに向かってるのかしら?」
「あっ……」
「あー、またやっちまったなぁ……なんでヒナミに付いて行っちまうかなぁ……」
ナナの指摘にふと足を止める。気が付けばめちゃくちゃ入り組んでる路地に入ってしまっていた。
周囲の建物も高く、それらが遮って遠くが見渡せない上にまるで森の中の様に薄暗い。
後ろを振り返っても複数の分かれ道が伸びていて、自分がどれからここまで来たのかも最早分からない有様だ。
「あ、あー、いや……ハッハッハッ!」
「笑って誤魔化しやがったぞコイツ」
「もうこの脳筋魔法使いを先頭にして歩くのやめにしない?」
いやー、でもね、なんかこう……集団の先頭を歩くのが癖になっちまってんだ……
「うぅ、大通りを歩いていた筈なのに、何故いつの間にかこんな入り組んだ裏道に……」
「想像以上に帝都は雑多なようね。大量の難民を受け入れてその度に拡張していったのかしら?」
「とりあえず誰か人探そうぜ」
「そうね、巡回している兵士にでも道を訊ねましょう」
あれだけ多くの兵士とすれ違ったのだから、すぐに迷子は解消されるだろう。そうであって欲しい。
「あれだったら、跳躍してみる?」
「……そうね、もしかしたら咎められるかも知れないけど、建物の上に登って現在地を確認するのはアリね」
「りょー」
じゃあ早速ジャンプしますかなと。
「いやっ、やめて下さい!」
「おん?」
立ち止まり、建物の上まで跳躍しようと屈んだ直後――誰かの揉める声が聞こえた。
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