プロローグ
新作投下!
――私、鷹司雛美は元ヤンである。
家はそこそこ裕福だったが価値観が旧く、伝統や格式といったものを重んじる両親とはとことん反りが合わなかった。
私に婿を取らせて家を継がせたかったらしい両親は、私が幼い頃から過剰とも言える様々な事を学ばせた。
男の子が欲しかったらしい両親から与えられる物はそれしかなく、愛情なんて物は貰った記憶がない。
高学歴の彼ら彼女らが出来の悪い私を見る目はいつも失望と諦観に彩られていた。
――だからグレた。
中学に上がると同時に髪を染め、ピアスを開けた。
両親が怒鳴りつける度に家の物を壊し、唯一の味方であった亡き祖父から教わった拳でチンピラを殴り倒す日々。
私に鼻や前歯を折られた人間は数知れず、若くして差し歯になった者が多い事から『鷹司が歩けば歯医者が儲かる』などと揶揄された事もある。
もちろんそんな事を言った奴も歯医者送りにしてやった。
何時しか舎弟も出来、放課後は真っ直ぐに帰らず彼ら彼女らと街のゲーセンを占拠してはたむろする。
舎弟の誰かが他校の生徒にボコられたと聞けば仲間を引き連れお礼参りに。
そうして段々と規模が大きくなり、気が付けば地元で私を知らない人なんて居ないレベルになっていた。
街を歩けば誰もが私から目を逸らし、避ける様に足早に通り過ぎていく。
同級生は怯えて話し掛けては来ず、学校の先生すらも私には関わろとはしない。
唯一警察だけは私の事をずっとマークしていたけれど。
そんな日々にも飽きて来た頃――歳の離れた弟が産まれた。
それは私が両親から愛情を貰う事が絶対に出来なくなった瞬間でもあった。
私の絶望をよそに両親は心底安堵した表情でこう言った――
「――出て行ってくれ」
無償の愛が欲しかったんだと、親子の情を交わしたかったんだと……それが欲しくて必死にアピールしてたんだと今更ながらに気付いてももう遅い。
私から必死に弟を守ろうと背に庇う両親に何かを言う気力は最早なく、私は進学を機に地元から離れた高校を受験する事にした。
「――よろたんウェーイ!」
――そして私は高校デビューでパリピギャルに成った。
よろたんウェーイ!




