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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
勇往邁進
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校庭に咲く

それからシャロンは地元が同じだが成績の良い学友の家を訪ねた。

「シャロン!久しぶり!・・・て、その杖どうしたの?」

シャロンの以前のシンプルで小ぢんまりとした杖から打って変わって大きくなり立派な飾りの付いた杖になっていて驚く。

「杖はいいから!シャロンに魔法を教えて!!」

「魔法って・・・学校で習ってるじゃない!」

当然のツッコミが返ってくるが頬を膨らませてまた返す。

「シャロンのだけ違うの習ってたみたい!全然わかんないもん!!」

「そんなことないよ・・・あー、でもいいよ。私も勉強になるし、教えてあげる!」

メガネにしっかりと編まれた三つ編みおさげ。

いかにも優等生な学友は成績だけでなく性格まで良かった。

「本当!?ありがとう!!」

2人で広場へと行き、魔法を使う。

以前のシャロンに比べて威力が桁違いなことに驚くが、魔力消費がコントロールできていないことを察知した。

「シャロン!わかったわ!あなたの課題は魔力コントロールね!」

「マリョクコントロール?」

同じ学校に通ってるが初耳らしい。

「そう!魔法を使った時の魔力の消費量を制限するの!」

「すごい!シャロン、そんなの学校で習わなかった!!教えて!!」

鼻息を荒げて聞くのに苦笑いをする。

「習ったよ・・・。実習もしたし・・・。まあ、いいや。とりあえず、やってみよっか!」

そして友達に見てもらいながら訓練をしていく。

意外と上達は早かったが、夕方までに習得とまではいかなかった。

「今日はこの辺にしておきましょ!」

「まだ・・・体得してない・・・」

肩で息をしながら言う姿から察するに、もう魔力はすっからかんだ。

「焦っちゃダメだよ!そうだ、帰りにウチに寄ってこ!魔力コントロールのわかりやすく説明した本あるから、それ読んでまた明日やってみよ!」

「わかった!!」

友達から借りた本を読み、翌日の昼には魔導師養成学校の合格基準くらいには習得できた。

「すごいよ、シャロン!やればできる子!!」

「へへん!」と鼻を高くする。

それからと言うもの、友達との特訓を積み重ね、さらには友達からのおすすめ本を読み、また実践・・・と日々を重ねていった。

シャロンはいつの間にか本を読むのが苦痛ではなくなっていた。

それはきっと、旅の最中にいつでもどこでも本を読んでいたアスタの影響もあるのかもしれない。

シャロンはこの休暇に今までにやらなかった勉強を知らず知らずのうちに、楽しみながら詰め込んでいたのだった。


卒業試験のために学校へと向かう。

試験日よりも1週間早く寮へと戻り、向かったのは学校の図書館。

「ここすごい!たくさんの本がある!!知らなかった!!」

図書館とはそういう場所である。

鼻息荒く色んな魔導書を読み漁った。

時には校庭や訓練場に行って本を片手に魔法を使って練習もしてみた。

「シャロン、珍しいわね!あなたが自主的に本を読んだり、魔法の練習をして!感心だわ!」

クラス担任の先生がやって来た。

「先生!何で今まで教えてくれなかったの!?」

「え?何が?」

まさかのお叱りに先生が面食らった顔をする。

「何がじゃないよ!図書館!どうしてあんなにわかりやすい本がたくさんあるのに教えてくれなかったの!!」

「一年生の時に学校案内で説明したし、何なら図書館くらい地元の町にも当然のようにあるわよ」

先生の声のトーンが低くなり、呆れたように言い返された。

「まあいいわ。そんなことより、シャロンがやる気を出してくれたことの方が嬉しいわ!これなら一発合格できそうね!」

「うん!シャロン、がんばる!!」

先生が出ていった後も1人で特訓を重ねた。

しかし、いくらやっても飽きないし、疲れない。

以前のシャロンであればこんなことをする間にぐうたらしていたが、仲間の顔を思い出すと自然とやる気を出せた。

あの旅ではみんなによく守られたし、あまり活躍らしい活躍もなかったと自分では思っている。

その悔しさも、向上する自分の技術も全て含めて自分のかてとなった。

約束なんかはしていないが、いつか再会して、再びみんなで旅ができるように。

シャロンは真っ青な空を見上げた。

雲はちらほらとはあるが、力強く輝く太陽と、その辺りに広がる空を見て、それからプリムトンの神樹の杖を見た。

「白雪姫、またみんなに会えるよね?また、みんなで旅、できるよね?」

風が吹き、シャロンの髪や服をなびかせて過ぎてゆく。

それから力を込めて杖を握り直した。

「ロジェーヴル!」

シャロンが校庭に咲かせた大輪の氷花は温度こそまだまだ足りてはいないが、白雪姫が咲かせていたバラに限りなく似ていた。

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