シャロンの帰郷
シャロンは魔王討伐を終え、みんなと別れた後、実家に帰った。
「ただいま!」
元気良く帰宅の挨拶をすると、母も父も飛び出してきた。
「シャロン!!」
「一体、今までどこにいたんだ?長期休暇に入ったってのに全然寮から帰って来ないで・・・」
それには元気良く「魔王討伐してきた!!」なんて言いたかったが、ディンブラたちに釘を刺されているので一旦思い止まる。
「うーん・・・旅してた!」
「旅?」と両親の声が揃う。
「誰と?」「1人で?」など矢継ぎ早に質問が来るのを、指を顎に当てて斜め上を見、それから答える。
「うーんとね・・・アスタと・・・」
「アスタ?」
「男?」
「キャメリアと・・・」
「キャメリア?」
「女?」
こんな調子で続ける。
「チョコと・・・」
「チョコ?」
「・・・お菓子?」
もう親的にはわからなくなってきた。
「あ!リトルも!」
「リトル?」
「・・・小動物か魔獣的な何か?」
理解が追いつかない親を置いてけぼりにして話しは先に進む。
「それとね、白雪姫!!」
「・・・どうやら絵本を読みすぎたみたいだな」
「そんなこと・・・。ねぇ、リトルはどんな感じなの?」
日頃勉強など全く無縁の娘が、魔導書などではなく絵本の読み過ぎでファンタジーに脳を焼かれたと思いたくない母は再度尋ねた。
シャロンの母はとても優しい口調だった。
「リトルはチキン・リトルだよ!」
「ほら!やっぱり絵本じゃないか!!空が降ってきたぞってやつだろ?毎晩毎晩読んであげてた本に載ってただろ!!」
「うぅ・・・」と母も頭を押さえる。
それから父はシャロンを怒った表情で見た。
「シャロン!そんなんじゃ、また試験に落ちるぞ!!何度も何度も再試してやっと合格・・・こんなんじゃ、卒業できないぞ!!」
それにはシャロンにも反撃要素があったので余裕の表情で返す。
人差し指だけ伸ばして、「チッチッチッ」と言いながら左右に振る。
「シャロンを舐めてもらっちゃあ、困るね!これを見な!!」
そう言うと、何でも収納できる魔法がかかった帽子から、旅の中で新調したプリムトンの神樹から作った杖を取り出した。
元からシャロンが持っていた杖は手を開いた指先から肘くらいまでの初心者用のものだったが、今持っているものはシャロンの背丈より少し低いくらいの大きさだ。
変わり果てた杖の姿に目も口も開いたまま閉じられない。
「プリムトンの神樹から作った杖!白雪姫の魔力を混ぜて!!」
「プリムトン!?」
「白雪姫!?」
これでやっと白雪姫やらチキン・リトルやらが童話の話ではなく、魔女のことだと理解した両親。
しかし、大魔導師くらいしか持ってないと言われるプリムトンの神樹から作った杖なんて、万年学年最下位の娘には不釣り合いどころか、住む星が違うレベルの代物。
さらにそこに白雪姫の魔力が混ざってる?
たしかに最近魔王軍の魔女狩りで核と心臓が集められていると聞くが、だとしても娘の手には渡らないで魔王軍に行くのが普通であろう。
『やっぱり娘はファンタジーに脳を焼かれたんだ・・・』
父も母も同じことを思った。
「というか、それはどうしたんだ?どこで手に入れた?」
「前の杖は?入学祝いにお父さんとお母さんが買ってあげたやつ!!」
それには少し気まずそうにする。
「あー・・・あれは折れちゃって・・・ごめんなさい」
素直に謝り、頭を下げた。
「折れた!?」
「何で?」
まだまだ父母からの納得は得られそうにない。
「シャロンが友達の弟や妹みたいな幼い子に貸してる間に折れたみたいで・・・。その代わり、エディブルの花園で作ってきたの!!」
「え?エディブル?・・・それって西の大陸の、しかも端っこだぞ?」
「大陸渡ったって言うの?」
理解しきれない2人に「そうだよ!葵さんとね!」なんてまた魔王軍幹部四天王の名前を出すもんだから余計に混乱を招く。
「いやいやいや!おかしなことを・・・。たぶんこの子は夢でも見たんだよ」
父は頭を押さえて母に言った。
「でも、エディブルの花園にプリムトンの神樹があるってのは合ってるわよ?」
「教科書で見たんだろ?」
「でも、シャロンが教科書なんて見るかしら?」
酷い言われようである。
「よく帰ってくる度に大魔導師になるとか言って、プリムトン、プリムトンと言ってただろ」
「じゃあ、あの杖は?」
「きっと友達に杖職人科の子がいるんだろ。その子にそれっぽいものを作らせたんだろ」
あまりにも信じない父と母に頬を膨らませる。
「いいもん!絶対結果で見せるもん!!」
「ま、何はともあれ無事に帰ってきて、成績アップして合格できるのなら何でもいいよ」
「そうね、やる気出してくれたのは嬉しいわ!見守ってあげましょう!!」