キャメリアの実家で
パーティは魔王を討伐してから一度解散した。
それぞれの帰る場所に行き、家族に会いにいった。
その中でもキャメリアは神出鬼没で雲隠れの名人、さらには柊という誰の目から見ても超優良物件に甘んじることなく、己が手で稼ごうとする野心家である実姉の山茶花を連れて帰郷することに成功した。
これはかなり褒め称えられることであり、家族からはとても喜ばれたものだ。
いつも厳格で感情表現をあまり行わない父が思わず拍手をし、柊は泣いて山茶花に抱きついた。
柊のはいつも通りである。
なんやかんやと言って、柊と山茶花は仲良しで、山茶花の方も婚約者との再会をこれでもかというくらいに喜んでいた。
帰ってすぐにキャメリアが家を留守にしていたことに関しては全く問われず、山茶花の家出理由の方が注目を浴びていた。
後で聞いたところ、父はキャメリアが山茶花を探しに出たことを柊から聞いたという。(運命の人とキッスしたいことはキャメリアの名誉のため隠してくれたようだ)
そして問い詰められる姉の山茶花。
自業自得である。
「あの、山茶花さん。どうして家を出られたのでしょうか?私に何か不満でもありましたか?」
「そんなんじゃないのよ・・・。柊さんのことは私大好きよ。今回だって帰ってきたのは柊さんに会いたかったからだし・・・」
目線を下げて指で畳を撫でいじいじする。
「そ、それじゃあ何故?」
柊の質問に顔をあげて少し見上げるように見た。
「私っていわゆる箱入り娘でしょ?お父様は厳しい感じだけど、とても私たちを大切にしてくれたの」
そう言って父と妹をチラリと見る。
「お父様は私たちに召喚士としての訓練を自分でつけてくれたわ。だけど、どうも私にその才能どころか素質がそもそも無かったの。椿ちゃんは就学前に同じく幼いハスノハカズラちゃん(ステファニアの本当の名前)をもらえて、召喚士として実力もつけていったわ」
姉を少し同情の目で見ようかと思ったが、そこはしっかり者のキャメリア。
なんとか持ち堪えた。
そして斜に構えてこの油断できない姉を観察し始める。
「そんな椿ちゃんに比べて私は才能が無かった。ハスノハカズラちゃんが懐いたのだって椿ちゃんだし、そんな椿ちゃんをお父様は可愛がっていたわ」
山茶花はまた俯き伏目がちになった。
「才能といえば、椿ちゃんの方が家事だって得意よね。こんな取り柄の無い私が、何もかも完璧な柊さんなんかに釣り合うわけないと思って、何か得たくて外へ出たの」
見ると柊が感動のあまり目に涙を浮かべているではないか。
そして嗚咽を堪えるために手で口元を押さえる。
その姿に仰天してキャメリアは目を見開いて見ていた。
父も何となく申し訳無さそうにしている。
キャメリアだけは強い意志を持って姉を呼びかけた。
「お姉ちゃん!ちょっといいかしら?」
「何?」と振り向く姉はキョトンとしている。
「今のを聞いていたらまるで私がすっごく優秀で才能あるから何もできないお姉ちゃんに孤独感を与えてしまってたみたいじゃない!!」
「え?」とこれまたとぼけた顔をする。
それには顔を赤くして怒る。
「え?じゃないわよ!別に私は普通よ!普通!特別才能ある召喚士でもないし、お姉ちゃんも別に召喚士の素質が無かったなんてこともないでしょ!!姉らしく私が幼い時には先に妖精を召喚できてたじゃない!」
それには指を顎に当てて傾げる。
「そうだったかしら?でも、ハスノハカズラちゃんは昔から椿ちゃんに懐いてたでしょ?」
「それだってお姉ちゃんが嫌がったんでしょ!?」
そう、幼い日のこの姉妹はとてつもなく因縁深い関係であった。
と言うかは姉が酷く、妹が一方的に被害を被っていただけである。