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Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第4章 神の世界
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親善試合

「レディースアンドジェントルメン!! 今回皆様には、臨時に特別な試合をご覧にいれましょう!!!」


 司会者が会場の真ん中で発表をする。何事かと騒めく会場。


「今回、破壊神様とレイレード国王様による『親善試合』を執り行います!!!」


 一層会場は騒めく。こんな事、予定のプログラムにはなかったためである。


「会場の皆様! さぞや驚かれた事でしょう!! かく言う司会者の私めも驚いております!! ですが、これは破壊神様とレイレード国王様ご本人様達からのサプライズでございます!!!」


 赤コーナーからレフトが歩いて出てくる。その手には身の丈ほどの大鎌が握られている。青コーナーからクリスタルが歩いてくる。その右腰のベルトには剣を差している。

 そんな二人を見て、「アナウンスが本当だった」と観客が沸き立つ。双方への観客からの声援が飛んでくる。クリスタルが司会者からマイクを貰い、説明を始める。


「ルールは俺から説明しよう。まずこの試合は『相手に傷をつける』または『相手の急所に刃を当てる』、このどちらかを成した方の勝ちだ。あくまでも親善試合だから、血なまぐさいのはまた今度だ。」


 血なまぐさいのが好きな邪神達でも、今回の試合は見ものである。普段戦わない破壊神とレイレード国王の試合だ。何が起きても不思議ではない。クリスタルが続ける。


「それと今回レフトは『神力』を、俺は『空間操作』といった特殊な能力は使わない。物理と魔法だけでの戦闘だ。ま、それだけでも見ものになるんじゃないか? 俺にはそれだけの自信がある。」


 クリスタルは挑発的にレフトを見やる。紅い左目をギラギラとさせたレフトは大鎌を振り構えて叫ぶ。それは愉快そうに。


「キャハハハハハ!!! ソレでこソ、『オールメイト』のリーダーよ!! いいわぁ……!! その顔、本当に千切りにシてやリたいわぁ……!!!」


 クリスタルは司会者にマイクを放り投げ、下げさせる。そして自身も腰の剣の柄に手をかけ、挑発する。


「出来るモンなら、やってみな! 俺を一度は負かせてみせろ!」


 刹那、二人の武器がかち合う。その衝撃が会場の中央から衝撃波となって観客を襲う。最前席の観客が吹き飛ばされる中、金属音と共に衝撃波が止まらない。


「キャハハハハハハハハハ!!!!!! もっと、もっとよ!!!」

「なかなかやるな! だが、ワンパターンなんだよ!!」


 手合わせしているクリスタルが一瞬で消える。ガンッと地面に大鎌が刺さる。それと同時にクリスタルがレフトの真左から剣をかざす。


「ワンパターンなのは、貴方もよ!!」


 レフトが左手から爆破魔法を仕掛ける。詠唱なしで唱えられた魔法で、辺りは壊滅的な爆発が起きる。観客は観戦どころではない。しかし、避難する間もなく爆破魔法で吹き飛ばされる。


「キャハハハハハ!! こレで貴方も傷はつくでシょう!!?」


 爆破魔法の衝撃が収まりかけたその時、レフトは右手の違和感に気が付く。


「ッ!? 鎌が無い!?」

「魔法に集中し過ぎなんだよ、お前は。」


 後ろからの声に気が付いた時には遅かった。クリスタルが魔法で自身を防御をして、爆風の中レフトへ近づき、その鎌を奪い取ったのだ。しかしそこで諦めるレフトではない。身体強化の魔法で強化した足で蹴り技を喰らわせる。それを大鎌で受け止めたクリスタルの死角に入り込む。


「遅いおソいオソイオソイ!!」


 大鎌の取っ手を蹴られ、クリスタルが大鎌を手放す。その隙にレフトが拳を振り下ろす。それをかわしクリスタルが剣でレフトの足元を薙ぎ払う。すると地面に亀裂が入りその中にレフトが落ちる。レフトは落ちてくる瓦礫を踏み台にして地上へ飛び上がり、クリスタルに飛び蹴りをする。それすらも回避してクリスタルはレフトの首にかかと落としをする。首にかかとが当たりよろめくレフトに、クリスタルは剣を当てた。

 

「チェックメイト、だな。」


 傷一つ無いクリスタルが、いつものにやけ顔で宣言する。試合は、クリスタルに軍配が上がった。

 

 __________


「レフト、ちょっとは会場の耐久度の事考えようね?」


「クリスタル、地面に亀裂開けるな。手加減をしろ。」


 奇跡的に半壊で済んだ闘技場の真ん中で、クリスタルとレフトは正座をさせられていた。彼女らの短時間の手合わせだけで、闘技場の地面には穴が空き、防護魔法を張っていた観客席は崩壊している。スタッフは観客の誘導を行っている。そして正座されられている二人はというと。


「モノは何時か壊レルものよ、ライト。今日がたまたまソの日だっただけよ。」


「こんな壊れやすい闘技場が悪い。」


 この有様である。反省の色のない二人に、ライトとルーグは肩をすくめる。それでも効くか分からないルーグからの念押しが入る。


「お前ら、周りの事をもう少し考えてくんないか? クリスタルはレフトを煽るためにわざと衝撃波出していたし、レフトは会場の耐久度分かっていて、あの火力の魔法を発動させていたよな? お前達の楽しみのためだけに周りを巻き込むのは止めろよな。誰が後始末すると思ってんだよ。」


「まぁまぁ、幸い僕は『創造神』。そしてレフトは『破壊神』。僕達で闘技場は修復しようか!」


 ライトは正座していたレフトの手を取り、立ち上がらせる。そして手を取り合ったまま、二人は『神力』を使う。


「さぁ、レフト! 瓦礫を『壊して』!」


「ライト! 闘技場を『創って』!」


 互いへの『神頼み』を行えば、二人の取り合った手から淡い白と黒の光が溢れ出す。瞬く間に瓦礫が消え去るのと同時に、会場が見る間に元通りの美しい闘技場に再生される。その様はまるで、闘技場破壊の逆再生を見ているようだ。

 程なくして、闘技場は元どおり、否、元以上の闘技場に生まれ変わっていた。亀裂が空いていた形跡など、見る影もない。


「いやぁ、何時見ても面白いよな。ライトとレフトの『神力』の合体。」


 いつの間にか正座から立ちあがっていたクリスタルがぼやく。


「それは同感。こればかりは俺達には瞬時に出来ないものだよな。」


「誰にでも得意不得意はあるだろ。俺達には面倒な作業でも、この二柱なら簡単なだけだ。……あくまでも、『この二柱なら』だがな。」


 すっかり直されて綺麗になっても、二人は手を取り合い『神力』を使い、細部まで修復する。


「世界にはバランスが必要だ。あの二人も、お互いの存在があって初めて成り立つ。『生まれがそうだったように』。」


 暫くして、闘技場の修復が終わる。互いを無くして存在出来ない二柱が、クリスタルとルーグに声をかける。


「お待たせ! 一度ご飯にしない? 僕ちょっとお腹空いちゃった。」


「ソうね。アタシもお腹ペコペコよ。四人で何か食べまシょう!」


世界は、バランスで出来ている。

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