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Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第4章 神の世界
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邪神の領域へ

 『虫の領域』での騒動の後、そのまま二人と二柱は視察予定の『レフトの領域』へ向かう事にした。騒動で視察が出来なくなったのもあるが、変貌した『蠅の神』を『邪神の領域』へ運ぶためでもある。


 青い空に白い雲。青々とした草原に、遠くに白い大理石で出来た神殿に、果樹園や畑も見える。道は白い石でしっかりと舗装され、光る石が安置された街灯も等間隔で設置されている。何処を見ても、この辺りは喉かな風景だ。二人と二柱は『善神の領域』の風景を眺めつつ、話をする。


「相変わらず、この辺りの土地は豊かだな。」


「でしょ? 善神の領域全体に僕の神力が伝わっているからね。土地も肥沃だよ。」


「アタシの領域とはまルで雰囲気が違うかラ、見ていて楽シいわ。飼育されているような動物はいないけレども。」


「お前の領域とライトの領域の境目が、俺個人としては面白いな。ごったまぜ感があるから。」


 少しの飲み物とお茶菓子を口にしながら、二人と二柱を乗せた馬車は長い道を進んでいく。


「ねぇ皆、さっきはごめんね。僕、頭に血が上って……。」

 

 先ほどの『邪神墜ち』騒動での出来事の話題を出し、ライトは二人とレフトに頭を下げた。それに対してレフトは首を振る。


「いいのよ。途中でも止めてくレたシ。ソレにアタシの為に怒ってくレたんでシょ?」


「お前の仲間に対しての思いやりは有難いが、怒りっぽくなりやすいのは直した方が良いだろうな。」


 クリスタルが腕を組んでライトに苦言を呈する。ライトはそれに苦笑いで答える。


「とはいえ、周りのあの態度には俺も腹は立ったぞ。あんな対応しなくてもいいだろう?」


「対応を邪神のレフトに任せるのはいいけれど、言い方や助けた礼が感じられないのはなぁ……。」


 ルーグの言葉にライトが善神に対し文句を言う。頬を掻き苦い顔をしている。その時クリスタルが荷物から何かを取り出す。中には缶入りのクッキーがある。


「蜂蜜くれた礼に渡そうかと思ったんだが、渡せなかったからな。気分変えるのに食おうぜ?」


 クッキーを見たレフトは目を輝かせる。そんな様子のレフトを見て、ライトは何処か安心したかのように微笑む。


「アイシングクッキーじゃない! 凄い! 可愛いわね!」


「……フフッ、そうだね! このピンクで丸いキャラクターは何?」


「以前旅した時に居た、何でも食べる生き物だな。可愛かったから、クッキーのモデルにしてみたんだ。」


「ルーグお手製なの?」


「そうだ。ちょっと作ってみたんだ。」


 二人と二柱はクッキーを食べながら移動をする。次第に外の風景は変わっていく。目立つ特徴として、空の雰囲気が変わっている。善神の領域では青が眩しい空であったものの、邪神の領域に近づくにつれ次第に空の色は紫に変わり、最後には紅に染まっている。雲の色もどす黒い色で、今にも雨が降りそうな雰囲気である。大地の色も緑から紫に変わり、何者かの怨嗟の声が風と共に止めどなく聞こえてくる。農作物は多少あるものの、手足の本数が違う牛や羊の様な生き物を飼育している。

 道をさらに続き、森に入る。森の中は先ほどよりも酷く怨念の様な声が聞こえる。果実も生っているが、生き物の顔が描かれているような模様をしている。ここから怨念の声がより一層聞こえてくるようだ。


「この辺りの植物、面白いよな。変な声も聞こえるし。」


「アタシの領域は、邪神を恨んでいルモノの念が込めラレていルわ。ソレラが風に揺ラレて声みたいに聞こえル仕組みなのよ。」


「確か、皮の薄さが均等ではないし、中身は振動が伝わりやすい構造だったよな。それで風が吹けば声のように聞こえるんだったか。」


「風が吹いてこの声なんだから、雨の日なんてきっと凄まじいよね。」


 道を進み、森を抜けていく。次第に黒い大理石で出来た神殿が散見され、遠くに大きな城の様な神殿が見えてくる。の周辺には石造りの街並みも広がり、賑わいが感じられる。ガス灯があちらこちらでつき始め、その雰囲気は独特の禍々しさを感じさせつつも、不思議な温かみを醸し出している。馬車が近づいていく神殿は、ライトの神殿程の大きさをしており、黒と赤を基調とした禍々しさの中に目を惹いてしまう不思議なデザインだ。


「見えて来たわよ、アタシの神殿!」


「久しぶりに来たなぁ! 僕、ここでもまた冷遇されるだろうけども……。」


「俺達がいるし、目立った行動は出来ないんじゃないか? 俺達から『そんな邪神は存在しない』って出来る範囲に通達を出せば、一気に力は弱まるし寿命も縮むからな。」


「最悪俺も『記録管理』で存在自体を消せるしな。」


 クリスタルとルーグの提案に、ライトは苦笑いを浮かべ、レフトは膝で頬杖をつく。


「……貴方達の方がアタシよリも邪神じゃなくて?」


「僕の不安を払拭するための慰めだろうから、嬉しいんだけれどもね? でもクリスタルとルーグの脅しは怖いよ……。」



 邪神と善神と、邪神よりも恐ろしい二人を乗せた馬車は、間もなくレフトの神殿に到着する。

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