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Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第4章 神の世界
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『神』という存在

 歓迎会が終わり、二人と二柱はライトの自室へ集まる。夜が更け始め、涼しい風がカーテンを揺らす。空には星の瞬きのみが見え、窓の外から他の神殿の明かりは見えない。二人と二柱は飲み物やつまみのチーズを取り揃え、今回の出席者のレフトへの冷遇の話を始める。


「あんな露骨な態度はないだろう。何が『善神』だ。」


「公式の場で、意図的に聞こえるよう話していたな。」


「うん……。どうしてなんだろう……。」


 苛立っていたり落ち込んだりの様子の三人に、強がりなのか、レフトは気にも留めていない調子で言葉をかける。


「別にアタシは気にシてないかラいいのに、ソんな事考えなくても。実際アタシは必要上、色んなモノを壊シてルもの。」


「それでもレフトが冷遇されているの、僕は嫌だよ! 『善神』も『邪神』も、他者からの認知の差でしかないのに……。」


「……いつも気にシてくレて、あリがとうね。ライト。」


 ライトは立ち上がって寂しげに話す。その表情は悲しそうだ。そんな様子のライトを見て、レフトも内心感じていた思いを乗せて礼を言う。


 実際、ライトは『善神』達がレフトへ行う冷遇に、相当心を痛めている。その冷遇を無くすために共に活動し、レフトの良い面を引き出し、皆に見て貰うように努力している。『土地を広げるために岩を壊す事』も、『害となる生き物の細胞を壊して死なせる事』も、『戦を終わらせる為にその種族を絶滅させる事』も、レフトは行ってきた。それは皆が求めていた事だったから。

 それでも皆は『破壊神は完全悪である』と認知している。そしてレフトの功績を、ライトの功績と勘違いしている。『土地を創り』、『害ある生物から守り』、『争いを鎮める』。ライトはそんな存在であると思われている。ライトはそれが何より悲しかった。


 二人の様子を横目に、クリスタルが脚と腕を組みつつ吐き捨てる様に話す。


「一言に『戦神』と言っても『戦に勝利をもたらす神』なら『善神』、『争いを巻き起こす神』なら『邪神』となる。そして認知が変わればその分類は逆転する事もある。それ故にこの冷遇は馬鹿馬鹿しい。何時いかなる時も、自身の立場が変わる可能性を分かっていない。」


「自分も邪神になるかもしれないのにな。それなのに『自分達の方が優れている』と思い込んでいるし、一方の邪神も同様にそう思っている。厄介極まりないな。」


 この神々による『自分達の方が優れている』という考えは、昔神々で戦争を起こした原因である。戦争は終結したものの、実情冷戦状態である。

 ルーグも苛立ちをあまり隠せておらず、ため息をついている。そしてふと立ったかと思うと、ルーグは『モノを発酵させる事が出来る善神』から貰ったワインを開ける。芳醇なブドウとアルコールの香りがする。それをその場にいる全員のグラスに注ぐ。


「気晴らししようぜ。ほら、レフトも飲めよ。」


 レフトは差し出されたグラスに少し驚く。このワインは、あくまでも『クリスタルとルーグ宛』のワインだったためだ。


「あラ? 貴方達宛のワインじゃなくて? アタシにも分けていいのかシラ?」


「俺が『友人』を仲間外れするかよ。ほら、いいから受け取れ。」


 そんなルーグの言葉に、少し戸惑うレフト。暫くして、少し遠慮がちにグラスを受け取る。そして少しほほ笑んで礼を言う。


「……あリがと。」


「気にするな。お前を『悪い神だと思っていない』メンバーしか、ここには居ないんだから。」


「そういう事だ。遠慮は要らん。いいからワイン飲もうぜ!」


「そうだね! ほら、レフトも飲もうよ! ね?」


 三人の言葉に、レフトは内心下がっていた気分が良くなっていったようだ。いつものレフトらしく、テンションを上げてグラスを掲げる。


「……じゃあ、皆で一緒に飲むわよ! 頂きまース!」


「頂きます!」


「ん、なかなかに旨いな。」


「ちょっと、クリスタル! フライングするなよ!」


「キャハハハ! お酒は良い物ね!」


「フフッ、そうだね!」


 先ほどの雰囲気は何処へやら、四人はワインを飲み談笑を始める。今、この場だけは、『創造神』も『破壊神』も、ただただクリスタルとルーグの『仲の良い友人』である。それだけでも、ライトとレフトは救われている。

 酒も進みボトルが空になった頃、ライトがこう提案してきた。


「そうそう、今日貰った貰った蜂蜜、もう少し分けて貰いに行かない? クリスタルとルーグにとっては視察にもなるし、蜂蜜分けて貰ったらレフトも食べられるし、どうかな?」


 ライトの提案に、クリスタルは頷く。


「そうだな。確か『虫の神』の領域だったよな。向こうが視察してもいい、って言うなら視察したいところだな。」


「視察程度ならいいだろう。蜂蜜分けて貰えるかは分からないけど。」


「アタシの蜂蜜はオマケ程度でいいわよ。ソレよリ養蜂を見てみたいわ! うちの養蜂とどう違うか、興味あルのよね~!」


 3人の希望を聞き、ライトがにこやかに言う。


「わかったよ! じゃあ向こうの準備が出来次第『虫の神』の領域の視察に行こうか! 養蜂も一緒に見よう!」

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