神の世界へ
国際首脳会議が終わった。謁見の間にて各国が別れの挨拶をクリスタルとルーグにする。それらに挨拶を返し、見送る。ライトとレフトも例に漏れず挨拶に来る。
「久方ぶりの訪問を受け入れて下さった事、感謝の言葉もございません。」
「お前達の訪問なら、いつでも歓迎する。また来る日を楽しみにしているぞ。」
「私達もお会いできル日を楽シみにシておリまス。……と言いたいとこロでスが、1つ提案がございまス。」
挨拶の途中、レフトがいきなり何かを言い出す。隣にいるライトも首を傾げている。
「国際首脳会議が終わった今、目下の問題は冷戦でス。ソレが起きてシまう前に、共に戦う私の領域を視察シてはいかがでシょうか?」
レフトの提案に、クリスタルは口元に手を当て考える。
「確かにな……。最後に視察してからずいぶん経つ。状況が変わっているだろうし、今の内に視察しておくのは手だな。」
「でしたら僕の領域も視察された方が良いかと。どのような善神がいて、戦争が起きてからどの神の力を借りるか、今からでも見て頂きたい所存でございます。」
ライトも自分の領域の視察を提案する。クリスタルは二柱に向けて頷く。
「神も昔と比べて随分変わっている可能性があるからな。双方良ければ視察させてくれ。」
「喜んでお受けします。」
「私も視察の件、お受けいたシまス。」
二人の反応を見て、クリスタルがルーグに言う。
「視察の日程調整をしろ。出来るだけ早く。」
「御意。二柱様、最短で視察をお受けできる日程はいかほどでございますか?」
ルーグはメモとペンを持ち出して日程を確認する。ライトは少し考えた後答える。
「お二方を迎え入れる準備がございますので、数日頂けたらと思います。」
「私も同様でございまス。」
「では一週間後、ライルート様の領域から視察させて頂きます。宜しいでしょうか?」
スケジュールを確認後、ルーグがライトとレフトに問う。二柱は頷く。
「是非とも。万全の準備をしてお待ちしております。」
「私も心よリお待ちシておリまス。」
二柱は「それでは」と頭を下げて退場する。来賓が誰も居なくなった謁見の間で、クリスタルがルーグに言う。
「早速お泊りの準備しろ! スナック菓子と炭酸を忘れるな!」
「視察にそんなもの持っていくんじゃない! ちなみに視察には俺以外は誰を連れて行く? 兵士団長?」
「いつも通り、お前だけでいい。」
「その心は?」
「ふざけられないから!」
「視察でふざけるんじゃない!」
いつものやり取りを聞き、謁見の間に居る近衛騎士達は「いつもの平和が戻ってきたな」と思うのであった。
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国際会議が終了して1週間後。クリスタルとルーグは自室で支度をしていた。クリスタルの悪癖である、当てのない旅の支度の時とは違う。今回は召使い達も支度に参加する程正式な視察用の支度である。ドレスや軽装、装飾品まで用意されている。
「ここまで準備しなくても良くないか?」
「正式な視察だからダメだ。適当な服で行ったら笑い者だぞ。」
「だが支度が遅いだろ。さっさと遊びに行きたい!」
「だから『視察』を『遊びに行く』って言うな。 子供かよ!」
「俺は立派な大人だぞ!」
「大人は正式な仕事を『遊びに行く』とは言わないからな?」
コントを繰り広げつつ、ルーグも自身の支度を進めて終わらせる。召使い達は忙しなく動くが、その耳は国のトップによるコントに集中している。支度が終わり、ルーグはクリスタルと自分の荷物を持つ。そしてクリスタルは何もない空間に『空間移動の門』を作り、神の世界へのゲートを作る。
「行ってくる。対処は任せた。」
「行ってきます。何かあれば俺に連絡を入れてくれ。」
「「「行ってらっしゃいませ。国王様、ルーグ閣下。」」」
二人は神の世界、まずはライトの治める領域『エアテール』へ向かう。




