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Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第2章 異世界での冒険 
22/59

歴史改変の後で

 メツマの護衛から2か月後、クリスタルとルーグにとっては本来の時間軸に戻って来る。降り立った場所はオンシー集落付近の森の中だ。二人が集落に向かえば何事もなかったかのように、否、『何事も無く』オーガ達が生活を営んでいる。オンシー集落の入り口まで来ると、門番のオーガが出てくる。


「旅の方、ようこそオンシー集落へ。ごゆっくりどうぞ。」


「ああ、ありがとう。ところで最近、何か変わったことはあったか?」


「そうですね……、2ヶ月くらい前に我々が採掘に使っているヤマイワ坑道が、何者かに荒らされそうになった形跡があったくらいですかね。形跡しかなかったので犯人は見つからなかったものの、警備が厳重になりましたね。」


「それは物騒ですね。何事も無くて良かったです。」


「本当に何も無くて良かったです。ヤマイワ坑道は我々の大きな収入源の1つ。危うく我々の生活基盤が崩れるところでした。」


「だな。さて、ちょっと立ち寄らせてもらおうか。オーガの集落に興味があってな。」

 

「それは有難いです。是非色々見ていって下さい!」


 集落は街程ではないが賑やかだ。動物の肉やまじないの道具を売る者。食料を買う者。街を駆け巡る子供たち。石で出来た民家からは笑い声も聞こえる。オーガ達は何事も無く生活をしている。クリスタルとルーグは喫茶店に入り、席に着く。メニューを選びながら小声で会話をする。


「何事もなく平和な様子だな。対価は後でボスオーガから貰おう。」


「そうだな。まだ見切れていない場所を見る前にボスへ挨拶でもしよう。とりあえず一仕事終えたし何か頼むか。」


「だな。店員、注文を頼む。」


「只今お伺いします。」


 二人が注文をしていると、突然店の入り口が音を立てて開かれた。見ればボスオーガだ。二人に気づくと急いで駆け寄って来た。


「お二人さん! もしかして以前ブヤマキ領主の娘さんを助けた護衛の二人でしょうか!?」


「いきなりなんだ? 確かにそうだけど。」


「実はギルドの依頼の伝令で『ブヤマキ領主の娘を護衛した冒険者を見かけたら、急いでブヤマキ領主のもとに向かわせてくれ』とありまして。我が集落に旅人が二人来たと皆から聞いて、もしかしたらと思った次第。すみませんが、ブヤマキ領主のもとに向かってくれないでしょうか?」


「それ、俺達にメリットなくないか? せっかくここでゆっくりしようとしてたのに。」


「それについては、ブヤマキ領主の件が片付いたら私からサービスさせて頂きます。」


「ちなみに何故そこまでギルドからの伝令に、貴方が従おうとしているのですか?」


 ルーグの問いに、ボスオーガが頭を掻いて答える。


「ギルドは鉱石の貴重な買い取りの窓口なので、なるべく従いたいのです。お願いできますでしょうか?」


 ボスオーガの言葉に、クリスタルとルーグは目配せする。暫くしてクリスタルはため息をつきながら答える。


「仕方ないな……。サービスは大いにしてもらうからな?」


「ありがとうございます! すでに馬車を集落入り口に用意させております。どうかお急ぎを!」


「飯食う時間もないのか……。仕方ないな。店員さん、注文をキャンセルして下さい。」


「今度立ち寄る時は、ボスのおごりだからな?」


「それで構いません。お願いします!」


 ボスオーガが頭を下げる。クリスタルとルーグは急いで店を出て、集落入り口で止まっている馬車に乗り込む。


「従者さん、馬車出してくれ。」


「分かりました。少々急いでブヤマキ領に向かいます。揺れますのでお気を付けを。」


 従者の人間は馬車を急いで走らせる。向かう先はブヤマキ領主邸だ。半日程度で着く距離を、6時間で走らせるつもりだ。それだけ急いでいるようだ。クリスタルが従者に問う。


「そこまで急がないといけないのか? 何か要件でもあるのか?」


 従者は答える。その声は焦りを感じさせる。

 

「ブヤマキ領主のお嬢様が、バチク領のご友人の邸宅からの帰りに誘拐されたのです。お嬢様の救出を護衛であったお二人に頼みたいと。」


 それを聞き、クリスタルが従者に言う。


「誘拐なら時間の問題だ。俺達二人でバチク領に向かう。お前は急ぎブヤマキ領主に依頼受諾の伝令を。」


「それなら猶更馬車で向かわれた方が良いかと。バチク領は馬車でも数日かかります。人の足では1週間かかります!」


「俺達なら1日足らずの距離だ。任せろ。」


「伝令、よろしくお願いします。報酬は救出後にでも決めてください。」


 クリスタルはルーグと馬車を飛び降りる。『身体強化』の魔法をかけてバチク領まで走り始めた。突風が吹いたかと思うと、あっという間に見えなくなった二人を見て従者が「何だったんだ……。」と呟いた。


 ______


「前はこんな事なかったよな?」

 

「出来事を変えたから起きた可能性があるな。」


 二人はバチク領を目指しながら『ディスプレイ』を出す。ルーグがそれを操作するとバチク領の様子を『逆再生』し様子を見る。


「確かに前の時間軸では無かった事だが、もともと計画されていたことらしい。バチク領主がメツマ嬢を人質にして、ヤマイワ坑道を襲わせて自分達に譲らせる魂胆でいるな。」


「またヤマイワ坑道かよ。余程あの坑道は狙われるな。なら俺達が何とかしないとな。」


「まだ契約は完了していない、って訳か。早く終わらそう。」


 『ディスプレイ』を片づけ、クリスタルとルーグはそのまま駆けていく。バチク領が遠くに見え始めていた。

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